外国人にも人気の観光地・浅草。浅草寺や仲見世通りなど、かつての日本の面影を色濃く残すスポットが有名だが、この街にはもう一つ、芸人の街という顔がある。ビートたけしさん、萩本欽一さん、ナイツをはじめ、多数の売れっ子芸人が浅草から誕生した。今でも、通りを歩けば若手芸人たちがビラをまいている。
今回ご紹介するのは、そんな浅草を知り尽くす芸人たちがこぞってオススメする隠れた名店。浅草六区の裏通りにひっそりと居を構えるその店の名は『水口食堂』という。それほどまでに愛される理由は何なのか? 実際に行ってみたら、100種類以上の豊富なメニューと古き良き昭和の浅草が同居する、なんとも渋く飽きない店だった。まさにディープ浅草!
・ポップって何?
この店は、浅草演芸ホールからほど近い裏通りにある。青い軒先に白抜きの明朝体で書かれた「水口」の文字には、一片のキャッチーさも見受けられない。むしろ、「ポップって何?」と聞かれているようですらある。しかも、私が行った日の日替わり定食は肉豆腐定食だった。渋い……渋すぎる……だが、それがいい。
店内に入ると、旅館にあるような鍵付きの傘立てがお出迎え。タイル張りの床に、カウンターの上にかけられた木の板のメニュー、4又に別れた電灯、壁にかかる黒板など、すべてに年季が入っており香ばしい。
・素朴なメニューで店の雰囲気を味わいたい
席に座るとまず、お通しとしてワカメの酢の物が出される。メニューには、洋食~和食まで基本的な料理がそろっているが、どうせなら「食堂……」という感じの素朴な和食の方がこの雰囲気を味わえるような気がした。ということで、塩鮭定食(750円)とこの店のオリジナルメニューである “いり豚(580円)” を注文。
席を埋めているお客さんの中には、数人で豪快に笑っている人もいれば、昼間から1人で熱燗を静かに呑んでいる人もいる。楽しみ方はそれぞれだが、みんなこの店を愛していることが伝わってくる。そうこうしてるうちに入り豚と塩鮭定食が運ばれてきた。
・心に染みる鮭の味
塩鮭定食は鮭をメインに、あさりの味噌汁、ごはん、漬物というシンプルさだが、ごはんは普通盛りでどんぶり並みのサイズがある。ほどよく脂の乗った鮭を1口食べてみると、口の中に広がる塩辛さが心地いい。心に染み入るようだ……。
・昭和の浅草に想いを馳せる “いり豚”
次に、オリジナルメニューのいり豚。この料理は玉ねぎと豚肉をカレー味で炒めたものとのこと。食べてみると、カレー味の中にほのかにケチャップの風味を感じる。そのソースと豚肉と玉ねぎが奏でるハーモニーは、甘酸っぱくも懐かしい。昭和の浅草に想いを馳せずにはいられない。
飽食の現代、ウマい店はたくさんあるがここまで染みる店には久しぶりに出会った。店の佇まいから料理まですべてに、日本がいつの間にか忘れてしまった素朴だけど懐かしい味わいがある。若かりし頃のビートたけしさんや萩本欽一さんたち、芸人たちが見た浅草の原風景を感じたい方はぜひ行ってみてくれ。
・今回紹介した店舗の情報
店名 水口食堂
住所 東京都台東区浅草2-4-9
営業時間 平日10:00~21:30 / 土・日・祝9:00~21:30
定休日 水曜日
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼メニューはなんと100種類以上!
▼オリジナルメニュー “いり豚(580円)”
▼その味は甘酸っぱくも懐かしい
▼これが浅草芸人たちが愛する味!
▼塩鮭定食(750円)
▼口の中に広がる塩辛さが心地いい
▼心に染み入るようだ
▼芸人たちが見た浅草の原風景