2014年6月に通算18枚目のアルバムをリリースした、ロックバンド「人間椅子」。同年8月から全国10カ所のリリースツアーを敢行し、この年の活動を終えるのかと思いきや、12月に新曲4曲を含むベスト盤『現世は夢』をリリースし、2015年早々に再び東名阪のリリースツアーを行った。
活動25周年を向かえ、メンバー全員が50代に差しかかろうとしているというのに、デビューしたばかりのバンドにも負けないアグレッシブな活動が続いている。その彼らが1月24日渋谷公会堂でのライブを行った。この会場に出演するのは20数年ぶりとのこと。ほぼ四半世紀を経たというのに、パフォーマンスは当時を彷彿とさせる。いや、当時を完全に凌駕する勢いだったのだ。
・ダフ屋がいた!?
この日の公演は、昨年の恵比寿リキッドルームに続いてチケット完売。しかも! 来場者がTwitter に投稿した内容によると、会場外にはダフ屋がいたというから驚きである! 本来であれば、チケットを転売するダフ屋は嫌われる存在である。しかし長年人間椅子を応援してきた私(佐藤)としては、ダフ屋が登場するほどの人気を獲得できたのか、と感慨深い思いがする。だが、ダフ屋はダメだ。
・和装でライブ参戦
2009年のアルバム『未来浪漫派』をリリースして以降、若年層のファンが増え始めている。そのことをライブ会場に足を運ぶ度に実感していたのだが、今回のライブではついに従来のファンと若年層のファンが半々になった感がしている。しかも和装の若い女性ファンが大変多い。会場に着物で足を運ぶ、そんなバンドのライブはなかなかないのではないだろうか。
・一瞬で夏のような熱気に
約5分遅れでいよいよ開演。最近のライブではすっかり定番となった、登場SE『此岸御詠歌』が流れると、一瞬にして1800人のファンは総立ちとなった。暦のうえでは「大寒」を過ぎたばかりで、春にはまだまだ遠いにもかかわらず、ここだけは夏のような熱気と興奮が湧き起こり、会場は蒸し返すような暑さを感じる。
・ロック地獄への誘い
そして冒頭いきなり、ベスト盤収録の2曲『宇宙からの色』、『地獄への招待状』が炸裂。まさか最初から新曲を披露するとは思っていなかったファンは、瞬時に心をつかまれ、この先2時間半続く彼らの世界に連れ去られてしまう。まさしく人間椅子のロック地獄へと誘われた格好である。
・往年の名曲を披露
ライブは新旧の楽曲を織り交ぜ、アンコール3曲を含む18曲が披露された。なかでも、ファンにとって嬉しかったのは、通称ゼロ枚目と呼ばれるインディーズ盤の収録曲『神経症I LOVE YOU』と『桜の森の満開の下』の演奏ではないだろうか。数々のライブ定番曲があるなかで、この2曲を聞ける機会は、そう多くない。曲の魅力はいまだに損なわれることなく、むしろ演奏を繰り返すうちに磨き上げられ、研ぎ澄まされている気さえする。
・今の時勢にしっくりくる曲
ギターボーカルの和嶋慎治氏は、『神経症I LOVE YOU』を演奏する前のMCで、この曲は腐女子とオタクの曲であることを語った。25年前、オタクという言葉はあったが腐女子という言葉は存在していなかった。しかしながら、この曲の内容は腐女子の存在にピッタリと当てはまるものがある。四半世紀を経てしっくりくる内容に驚かされるばかりだ。
・ネズミ男とウンモ星人
そしてこの日、一番のサプライズはなんといっても、ネズミ男とウンモ星人の登場である! ネズミ男とは、デビュー前にベースボーカルの鈴木研一氏が灰色の布切れをまとっていた格好を指す。実際のところネズミ男ではなかったのだが、アンコールのタイミングでこの格好に扮してステージに登場したのである。そして、ウンモ星人とは和嶋氏が過去の作品で扮していた、架空の宇宙生命体のことを指す。いずれも彼らのたどった重要な足跡。まさか渋公で披露されることになるとは……。
年明けにして、すでに疾風怒涛の勢いで活動を続ける人間椅子。2015年も一切衰えを感じさせない活動が繰り広げられそうである。はたして今年はどんなサプライズを用意しているのだろうか? 気になるところである。
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
▼サウンドチェックの様子
▼そしてライブスタート
▼アンコールで、ネズミ男姿に扮した鈴木研一氏。この衣装はデビュー当時のものなのだとか
▼そして和嶋慎治氏によるウンモ星人。ナゾの動きでファンの笑いを誘っていた