禁煙志向に拍車がかかる昨今、都内でも随分喫煙できる場所は限られてきている。以前は吸えたはずの場所から、灰皿が撤去されることも少なくなく、今後喫煙者の肩身はさらに狭くなることだろう。
そんな状況下で、私(記者)は最近奇妙な喫煙所を発見した。その場所は、都内のある駅のすぐそば。自動販売機を設置しているタバコやの一角であった。駅を出てすぐの場所にあり、私は「助かるな~」という思いで設置された灰皿の前で一服。しかし良く見てみると、他の喫煙所では見かけない注意書きがされている。「殿方様吸殻入れ」とあるではないか。これ男性専用なの?
・看板の下へ
その日は休日であった。季節はすっかり冬に傾きかけており、日中でも日陰にはヒヤリとするような風が吹き抜けている。抜けるような青空の片隅には、まるで吹き忘れた窓ガラスの汚れのように漂っていた。駅前で口論しているカップルの姿を横目に、私は「タバコ」と掲げられた看板の下へと歩いていったのである。
・一度思い出してしまえば
最近は街中でタバコを吸うことも難しくなった。以前なら堂々とクシャクシャになったタバコを取り出して、100円ライターで火を点したものなのだが、近頃は取り出そうとしたタバコを再びポケットに押し込むことが良くある。まるで思い出そうとした記憶を、再び頭の奥へと押し戻すみたいだ。しかし一度思い出してしまえば、その考えを打ち消すのは随分難しい。タバコを吸いたいという衝動と一緒だ。わずらわしい習慣を身に付けたものだと、自嘲してみる。
・灰皿の注意書き
さて、ここは許可された場所らしい。私は遠慮なくポケットから取り出して火をつけた。まずは深く一息に吸い込み、そして静かに吐き出す。寒さで澄んだ空気が、煙の輪郭を浮き彫りにしている。なんとも心地の良い瞬間である。モヤモヤとした心のわだかまりがスッと晴れていくような気さえしてくる。この一呼吸で大いに満足したところで、灰皿の注意書きに気がついた。ナンだコレ?
・女性エリアが……
「殿方様吸殻入れ」、「殿方様は大きな方の灰皿を!」、ナニ? この灰皿は男性専用ということなのだろうか? さらに周りを見ると、どうやら女性専用エリアというものを設けているらしい。しかし確信が持てない、というのも女性エリアとされる場所は、良く訳のわからない状態になっているからだ。
柱から赤いチェーンが吊るされており、辛うじて中に入ることのできるわずかな隙間があり、そこに赤い灰皿が据えてある。女性はここで吸えということなのか?
・コーヒー缶回収
さらに壁の方を見ると「コーヒー缶トレー」というのがあり、そのトレーというのが針金で作られたような代物なのだ。たしかに喫煙しながら缶コーヒーを飲むとき、置き場が欲しくなる。そのための配慮なのか。
・タバコの空き箱専用袋
そしてもっとも不可解だったのは、タバコの空き箱専用の収集袋である。そこには「タバコの空箱以外は入れないで!!」と書かれている。ただの燃えるゴミを回収する袋ではないようだ。袋の中身は当然タバコの空き箱。分別する意味はあるのだろうか? それとも、不要なゴミを入れられないための対策なのか。
ちなみに壁面には複数の鏡が貼られていた。あれにも何か意味があるのか? とにかく、一服する間に異世界に紛れたような気分を味わえた。またあそこで一服つきたい。
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
▼ナンだかいろいろ張り巡らされた、タバコ屋の喫煙所
▼男女の喫煙スペースを分ける注意書き
▼こちらが男性用らしい
▼そしてこちらが女性用。どうもこのチェーンの中に入るということのようだが、狭すぎないか?
▼コーヒー缶トレーが見当たらない
▼壁には鏡。しゃがまないと見られない……
▼コーヒー缶トレー
▼飲み終えたら、次の人に譲るようにと促している
▼そして、タバコの空き箱だけを回収する袋