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霧の影響で飛行機が着陸を見送ったという話は聞くが、深刻な大気汚染問題を抱える中国ではPM2.5が原因と見られるスモッグで、着陸不可という事態が発生しているようだ。

仕方がないと言えば仕方がないのだが、今回、空港や航空会社側の対応がマズかったのではないかと問題になっている。北海道の旭川空港から北京空港に向かった飛行機がスモッグの影響で着陸を断念、別の空港に受け入れを求めたところ相次いで拒否されたというのである。

・スモッグの影響で着陸できず

中国メディア『長江商報』によると、2014年10月25日19時47分、乗客200人を乗せた北海道の旭川空港発、北京首都空港行きの中国東方航空便(以下MU750)が1時間遅れで離陸したそうだ。

しかし、北京空域に入った23:30頃、現地の天気は最悪だった。スモッグの影響がすさまじく滑走路の着陸目標地点の視界は150メートルもなかったという。一度は北京に着陸しようとしたMU750だったが、あまりの視界の悪さに断念。目的地を代替空港である山東省の済南(さいなん)空港へ切り替えた。

・別の空港に受け入れを求める → 相次いで拒否

ところが! 済南空港側が受け入れを拒否したのだ。最低燃油量か燃料残量が緊急状態にならないと受け入れないとしてきたというのである。

上空で最低燃油量になるまで待つのは避けたい。そう考えたMU750側は同省の青島空港に向かおうとした。しかし、青島空港の回答も済南空港と同様であったそうだ。

・残りの燃料は30分あまり

MU750は結局、管制官の指示に従い、北京空域で旋回し燃料を消費させた上で0時16分に青島空港に着陸した。着陸後、確認したところ燃料の残量はたった1520キログラム、飛行時間にして30分ほどだったそうだ。この量では、着陸をやりなおす着陸復行(ゴーアラウンド)もできないという指摘する声もあったとのことである。

・受け入れ拒否した空港の事情

だが、両空港の受け入れ拒否は何もイジワルで言っていたわけではない。当日、北京の視界は最悪。多くの飛行機がすでに北京に着陸できず両空港に行き先を変更していたのである。

そのため、両空港の駐機場は飽和状態で滑走路しか空いておらず、緊急事態以外は受け入れないという決定が出ていたというのだ。さらに青島空港は、元々MU750の代替空港ではないので受け入れ優先度が低かったという事情もあったようだ。

・業界人「それにしても無責任」

……という理由はあったものの、このような対応を天行諮詢有限公司会長の陳建国氏は潜在的リスクをはらむ無責任な行為と批判している。さらにMU750を怪我人にたとえて、

「北京の病院に行ったら受け入れを拒否され、指定の急診に行ったら満床だから別の病院に行けと言われる。

遠方の救急病院では “あなたの傷は浅いし、そもそも指定病院ではないので受け入れられない。出血多量の緊急状態なら受け入れますよ。どうやったら血が出るか教えるので、あとで来てください” と言われたようなものです」

とのことである。

・学者は東方航空の対応に疑問

一方で、台湾民航学者の許耿睿(きょ・えんえい)氏は、旭川を出発する前に北京の状況は確認できたはずではないかなどと東方航空側にも落ち度があったのではないかと疑問を呈している。

また管制の対応は間違いではないとしながらも、乗客の命を預かるというプレッシャーのなか孤立無援状態に陥ったMU750の機長の心情は想像するに余りあるとコメントしている。

・ロシア機も内モンゴル上空で待機

スモッグの影響で、当日は300機以上が北京に着陸できなかったという情報もある。同日のほぼ同時刻に北京に向かっていたアエロフロート・ロシア航空SU200便も着陸できず、内モンゴルで90分にわたり8周も旋回してしていたそうだ。

大気汚染がここまで進んでしまった以上、残念ながらスモッグを今すぐコントロールすることはできないだろう。飛行機の天候による遅延や欠航は確かに困るが、何においてもまずは人命第一、乗客や乗務員が不安を感じないような対策をしてほしいものである。 

参照元:長江商報環球網(中国語)
執筆:沢井メグ
Photo:Rocketnews24

▼こちらはアエロフロート・ロシア航空SU200が旋回している記録だそうだ
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