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以前の記事で、熱中症を患い閉店を余儀なくされた中華料理店の貼り紙についてお伝えした。そのお店、東京・新宿御苑の「来々軒」は苦渋の選択を迫られ暑さの盛りを迎える前に、47年の歴史に幕を閉じたのである。

あれからお店はどうなってしまったのか。1カ月ぶりにお店の前に行ってみると、驚いたことに新しい貼り紙が貼りだされていたのである。そこには店主の半生を振り返る内容がつづられていた。私(佐藤)はその当時のことを思うと、泣きたい気持ちになったのである。本当にお疲れ様でした、そう言いたい。

・来々軒の新しい貼り紙

「貧乏少年Aは田舎から片道切符を握りしめ上野ステーションへ。すぐにこの道に入り修業 ようやくこのメッカ新宿御苑の地に開店することが出来ました。その間 高度成長、バブル、そしてその崩壊を目の当たりに 中でも新宿駅騒乱事件はこの辺りも警察と学生のにらみ合いで大変緊張致しました。今後も新宿御苑周辺は大発展を遂げることでしょう。では皆様にハッピーな未来を グッドラックを再び 店主」(来々軒貼り紙より引用)

・少年Aが見てきた時代

片道切符を手にした少年Aは、きっと夢と希望に満ち溢れた気持ちで、上野駅のホームに降り立ったに違いない。そして不退転の決意で、東京で生きて行くことを決めたことだろう。今から47年前のその日に新宿御苑に店を構え、以来つぶさに時代の激動を見続けていたはずである。

・希望と優しさ

自分は退かなければならなくなっても、「大発展を遂げることでしょう」と希望を託す言葉に、店主のあたたかい心遣いを感じる。そして誰が読むともしれない貼り紙にさえ、優しさをもって「ハッピーな未来を グッドラックを再び」と伝えているのだ。

ああ、本当にお疲れ様でした。随分暑さは和らぎました。日々過ごし易くなっていますが、季節の変わり目でもあります。お風邪など召されませんようにご自愛くださいませ。

執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24