
2013年4月末、英ロンドンで「世界のベストレストラン50」が発表されました。そのうち日本から選出されたレストランは二軒。ひとつが東京・六本木の日本料理『龍吟』(22位)。そしてもうひとつが東京・南青山の『NARISAWA』(20位)です。
『NARISAWA』は2013年2月に、「アジアのベストレストラン50」で一位に輝いたお店です。いったいどんな料理を提供してくれるのでしょうか? 実際にお店を訪ねたところ、提供される品々に驚嘆させられました。
・ランキングは世界の飲食有識者900名によって作成
ベストレストランランキングの作成は、世界の飲食有識者900名で組織される「The Diners Club World’s 50 Best Restaurants Academy」が作成します。そのうち料理評論家、シェフ、料理店主、美食家など飲食のスペシャリスト36名が投票権を持ち、毎年4月に50のお店を選びます。
・2009年から毎年選出
『NARISAWA』は2009年から毎年ベスト50に選出され、そのうち三回はベストオブアジアにも選ばれているのです。まさに世界が認めるレストランといっても過言ではいでしょう。
・「森とともに生きる」がテーマ
記者(私)がお店を訪れた日は、「Spring Collection,2013」のメニュー構成でした。テーマは「森とともに生きる」。そのテーマにふさわしい料理が提供されたのです。
・店内は無音、絵画や花・観葉植物もない
店内は来客の会話と厨房から漏れ聞こえてくる調理の音以外、無音です。さらに花器もなければ花もなく、観葉植物も絵画の類も一切ありません。名だたるレストランであれば、抽象画の一枚にクラシック音楽が聴こえても良さそうなのですが、それらがまったくない。
・純粋に食事を楽しんで頂きたい
なぜですか? とスタッフに尋ねると「純粋に食事を楽しんで頂きたいためです」と答えてくれました。飾り気が食事の妨げにならないように、それらを排しているそうです。
・パンの最終発酵はテーブルの上で
テーブルにつくと、最初にティーキャンドルで湯煎された何かが運ばれてきました。これはナニ? と思っていると、スタッフは「こちらはパンです」と説明したのです。え!? このモッコリした感じの白いものがパンなの? もしかしてこれから最終発酵に入るパンをテーブルで温めてるんですか! と驚かざるを得ませんでした。これがどうなるのかは、後ほどお伝えします。
・最初に口にする「水」
ドリンクをオーダーすると、しばらくして前菜が運ばれてきました。その器に何やら木の筒のようなものが。なかには無色透明の液体が入っています。「森のエッセンスです。最初にお召し上がりください」と、スタッフは説明しました。
・森に漂う霧の匂い
飲んでみると、木の香りが存分に含まれた水だったのです。一口飲むと、まるで森に漂う霧の匂いをかいでいる気分になります。なるほどこれが「森とともに生きる」の始まりか!
・前菜には「苔」と「炭」
前菜にはなんと、「苔」と「炭」と名付けられた料理が含まれています。実はこれ、いずれもきちんとした食材で再現されたものなのです。苔はオカラを使用し、その上に木の枝に見立てたごぼうの皮やタラの芽などの山菜をあしらっています。そして炭は、玉ねぎを炭素化してフリットの生地に練りこんだものでした。しかしどう見ても苔は苔に、炭は炭のようにしか見えません。
・発酵が終わったパンを鉄の器で放置
先ほどのパンですが、前菜が終わるころに次の工程へと進みました。約120度に熱せられた鉄の器が用意され、パン種を半分に切り分けてそのなかに放り込まれました。そのまま20~30分放置して焼き上がりを待つことなったのです。
・またしても苔の登場
そうして焼き上がったパンは、形はややイビツながら、ホクホクでモチモチ。木の芽と柑橘類の皮が練りこまれていて、食べるとさわやかな香気が漂います。ここで再び苔が登場することに。今度はバターとブラックオリーブを使って苔玉が再現されています。
・食べるのが惜しいとさえ思う
しかもこの苔はパセリから色素を抽出して、緑色を再現しているのだとか。その手間暇を考えると、食べるのが惜しいとさえ感じてしまいました。パンにオリーブバターを塗ると、柑橘系のさわやかさが際立ち、さらにおいしさが倍増。これはもう食べるアートですよ。
・液体窒素で瞬間冷凍したパプリカのソース
次に驚かされたのが、「灰2009 海岸の風景」です。料理の名前だけ見ても、何のことだかさっぱりわからないと思いますが、この一品はスペイン北部バスクの霧深い海岸からインスピレーションを受けたものなのだとか。
・パプリカを液体窒素に漬けて瞬間冷凍
こちらも調理法が特殊で、パプリカを液体窒素に漬けて瞬間冷凍し、それを粉砕。網焼きにしたイカの上にかけて召し上がるというもの。粉々になったパプリカの姿は、真っ白の灰のようです。それが時間とともに溶けて液状になっていくのです。料理はアートを超えて科学のようにさえ思われます。
・メインは意外と控えめ
ここまでさまざまな演出で料理が提供されました。メインはどうかな? と思っていたら、意外と控えめ。北海道産の蝦夷豚に焼き目をつけて、はちみつでローストしたものでした。そこまでの演出があまりにもインパクトがあったため、正直「普通だな」と感じてしまいました。
・はちみつの甘さがアクセント
ちなみに蝦夷豚は、柔らかで肉質はたんぱく。優しい肉の味わいに対して、はちみつの甘さがアクセントとなっていました。とはいえ甘すぎるということはなく、あっさりと食べることができました。
・森の「水」がお見送り
料理を食べ終え、最後にデザートワゴンが運ばれてきました。「森とともに生きる」というテーマは幕を閉じた、そう思っていたところ、最後の最後に意外な形でコース料理にお見送りをしてもらうことになったのです。
・アルギニン酸で包んだ森のエッセンス
デザートワゴンには、メイプルシロップのプリンがありました。一口サイズの小さなプリンのなかには、何やら透明のボール状の物体が入っています。食べてみると、特に味がしません。これはなんだ? と思ってスタッフに尋ねると、「これはアルギニン酸(人工イクラの外皮に使われるもの)で包んだ森のエッセンスです」。最初の出てきた水が、最後にこっそりと隠されていたのでした。
・感動に値する美味しさの連続
最終的に食べ終えるまでに、3時間半かかりました。コース料理としては、比較的長い方ではないでしょうか。しかしその間、テーマに沿った料理はいくつもの驚きに満ち溢れ、また感動に値する美味しさの連続でした。
・これからも驚きと感動を
ベストレストラン50に5年連続で選出されるのも納得しました。これからも驚きと感動にあふれた料理を、提供し続けてもらいたいものです。
Report:フードクイーン佐藤
▼ 席に着くとテーブルセッティング(ナイフ、フォークなど)は一切なく、分厚いガラス板が一枚
▼ メニューとともに運ばれてきた、最終発酵前のパン種。このままテーブルで湯煎して発酵させる
▼ ティーキャンドルで湯煎し、パン種を温めます
▼ この日のメニュー。テーマは「森とともに生きる」
▼ 前菜。下に敷き詰められているのは、「苔」に見立てたオカラ
▼ 最初に飲むようにすすめられる「森のエッセンス」。これは木の香を含んだ水です
▼ 木の枝に見えるのはゴボウの皮。タラの芽などの山菜があしらわれている
▼ こちらは玉ねぎを炭素化して、フリットの生地に練りこんだ「炭」
▼ 「炭」の中には、新玉ねぎが一切れ入っている
▼ 皿の上で泳いでいる姿を表現した稚アユ
▼ パン種は半分に切り分けられ、約120度の鉄の器で蒸し焼きに
▼ 続いては「春の菜園」。華やかな葉野菜の下には、グリーンアスパラと
▼ ボイルして軽く焼き目をつけたカキ
▼ 焼き上がったパン。形はイビツだが、モッチリとして柔らか
▼ パンには木の芽と柑橘類の皮が練りこまれている
▼ 「苔」再登場。今度はバターとオリーブ、パセリの色素で再現
▼ どう見ても本物の苔のようにしか見えない
▼ 削ってみると、たしかにバター
▼ 液体窒素で凍らせたパプリカを粉砕し、ソースにした「灰2009 海岸の風景」
▼ 網焼きにしたイカは、刺身のように柔らかい食感
▼ 山口県萩のフグは、和紙の上に乗せて供される
▼ これを和紙で包んで手づかみで頂く
▼ 試験管のような入れ物で出てきたのは、伊勢エビにかける肉のスープ
▼ 「ラグジュアリーエッセンス2007 伊勢エビ」
▼ 肉のスープと伊勢エビの相性が絶妙
▼ 山口県萩のハタ、付け合せはウドとフキ。フキのソースは泡仕立てになっている
▼ メインの北海道 蝦夷豚
▼ 焼き目をつけて、はちみつをつけてローストしてあります
▼ 口直しのノンアルコールカクテル、ソルティードッグ
▼ 中にはグレープフルーツのゼリー
▼ デザートの「葛餅・酒粕・イチゴ」
▼ 最後に登場したデザートワゴン
▼ サイズはかなり小さく、すべて一口サイズ
▼ メイプルシロップのプリン。なかに浮いているのは、アルギニン酸で包んだ「森のエッセンス」
佐藤英典






































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