「中国におけるiPadの商標は我々が所有している。アップルは無断で商標を利用している!」としてアップルを訴えた中国企業・唯冠深セン。これまでの経緯はロケットニュース24でもお伝えした。
唯冠は約1200億円の賠償金を求めていたが、2012年6月にアップルが唯冠に約48億円の和解金を支払うことで決着した。唯冠は当初求めていた金額の25分の1で和解に応じたこともあり、経営が相当苦しいのではとささやかれていたが、その噂は本当だったようだ。
先日、債権者により唯冠深センの破産申立が行われ、これが受理されたのである。
実は、唯冠深センへの破産申立は今回が初めてではない。2012年3月に台湾の保険会社が破産申立を行っている。しかし、当時はちょうどアップルと中国国内におけるiPadの商標権でもめていた時期だ。唯冠深センが有するiPad商標権の価値がわからないということで、この請求は一旦棄却された。
しかし、6月に6000万ドル(約48億円)で和解したことを受け、司法は唯冠深センは債務超過であると判断、一旦棄却された申立が受理されたのだ。現在、同社の負債は2億8000万ドル(約217億円)だと言われている。アップルから得た和解金は債権者に分配される予定だが、債権者の数は100以上。順位の低い債権者は1円も手にできないのではないかと見られている。
経営不振に陥った唯冠深センは、アップルへの商標権侵害における賠償金請求が起死回生のための最大の手だった。しかし、48億円という金額ではそれも叶わなかったようだ。ちなみに、iPad商標権訴訟の弁護士費用も未納であるという。弁護団も債権者の1人として見なされるだろう。
この事態を受け、唯冠グループの創始者で会長の楊栄山氏は「これで破産が決まった訳ではない。申し立てが受理されたにすぎない」と話している。「唯冠深センはグループの中の1企業にすぎない」とし、今回の破産申立はグループ企業には影響がないことを強調。グループとしては今後、LED分野への参入を検討しているそうだ。
(文=沢井メグ)
参照元: NEN 財経(中国語)
photo:Rocketnews24.