連日報道されている中国全土の反日デモ。地域によっては、もはや反日を通り越した暴動となりつつあるが、注目されたのが9月18日の北京である。「18日に北京で未曾有の大暴動も」という噂も飛び交っていたが、果たして暴動は起きたのであろうか。

結論から書くと、暴動は起きなかった。日系のお店や、日本語が入った看板などがが目立たないように隠されていたことはあったが、それ以外はいつもの北京。暴徒が街を練り歩いているわけでもなく、いたって平常運行の北京であった。

しかしながら、デモは起きた。反日運動が始まってから、北京の日本大使館前では連日デモが繰り返されていたが、この日のデモは数万人といっても過言ではないほどの参加者が集まっていた。その時の様子は動画『9月18日北京の反日デモの様子』にまとめたので、是非ともご覧いただきたい。

日本大使館前の道路はデモのために封鎖
場所は日本大使館がある道「亮馬橋路」。デモのために道路の一部が封鎖されているため、車両が入ることはできない。タクシーの運転手も「今デモがやってるから、そのあたりは入れないヨ」と言っていた。

よってデモ参加者たちは、付近までタクシーやバスなどで来るか、地下鉄「亮馬橋」駅から会場へ向かうことになる。地下鉄内はいたって普通だが、亮馬橋のホームに降りると状況は一変する。

まず、ホームに中国国旗を持った人が大勢いる。警察の姿も多い。改札口で警察から呼び止められ、名簿のようなものに氏名などの記入を求められる人などなど、普通の駅とはガラリと違う異様なムードが漂っている。

駅を降りたら自動的にデモ参加することになる
地上にあがると、人、人、人。中国国旗やプラカードを掲げた人が大勢いる。そして、ほぼ一方通行で “デモ現場” へ向かうことに。しばし歩くと人垣が。そして、ある程度の人数が集まったところで動き始めた。自動的にデモ行進開始となった。

あまりにも人数が多いためか、この日のデモは100人ていどの参加者を「1ブロック」と扱い、ブロック単位で行進していく。先頭にはスローガンやプラカードを持った人が陣取り、うしろの人たちは中国国旗を持っている人が多い。

ブロックの動きは、警察や機動隊に完全に制御。前ブロックとの距離が縮まると、鉄柵などを用いてストップをかける。距離が確保できたらGOサイン。ブロックはぞろぞろと動き始める。その間、参加者たちは思い思いに反日シュプレヒコールをあげている。最低限のルールは守られており、統制は完全にとれている。

ちなみに立ち止まったり、ブロックを移動したりすると注意される。鉄柵で仕切られているので、歩道に逃げることも不可能。一度デモに参加したら、必然的に最後まで参加することになるのだ。

日本大使館にペットボトルが次々と投げ込まれる
デモ行進中の盛り上がりのピークは、日本大使館前である。日本大使館に近づくと、警察や軍隊や機動隊、ガタイのよい私服警官などの人数も増えてゆき警備が強化される。しかし、日本大使館前に向けて次々とペットボトルが投げ込まれる。ペットボトルを投げる行為に関し、警察などが制止する姿は見られなかった。

また、よく見ると日本大使館前の鉄柵の下には、誰かしらが用意した「投げる用のペットボトル」が多数転がっており、それを拾って投げる人もいた。日本大使館を過ぎ、しばし歩くとデモ行進のUターン場所がある。まるでマラソンのように。復路のデモは、わりとノンビリとしたムードになる。炎天下のなか約1時間ほど練り歩いているため、参加者も疲れ始めているからだろう。

これから日本大使館に向かうであろう往路のデモ隊とすれ違うと、エールの交換のような反日シュプレヒコールが巻き起こる。みな汗だくになりながら行進は続き、やがてスタート地点に戻ってくると、多くの参加者は「やりとげました感」のある表情をしていた。まるで、「無事、参拝おわりました」というような雰囲気であった。そして皆、地下鉄などで帰路につく。

デモで使用した中国国旗を持ち歩いている人もいたが、地下鉄内はいつもの雰囲気。特に殺気立った雰囲気ではない。デモ会場以外の北京は、いつもどおりの北京であり、いつもどおりの中国人。筆者が日本人だと分かっていても、親切に、優しく接してくれる人が大勢いたことは事実である。危惧されていた「18日に北京で未曾有の大暴動も」は、なかったのだ。

(写真、文=GO
動画:ロケットニュース24

北京市朝阳区日坛路7号