先日、スペインで80代の女性が教会の壁画を勝手に修復し、描かれていたキリスト像が全く別モノになってしまうという事件が起きた。ロケットニュース24でもお伝えしたが、この事件は「史上最悪の修復劇」と呼ばれ世界中で話題となった。

もちろん元の壁画に戻すことで話が進められていたが、事態は思わぬ方向に進展しそうだ。修復後の壁画が人気沸騰、「元に戻さないで!」と2万人近くの嘆願書が集まっているというのである。

渦中の壁画は、スペインのボルハ市の教会の壁に描かれた「Ecce Homo(この人を見よ)」という絵だ。この壁画は描かれてから100年が経ち劣化が進んでいた。それを気にかけていた80代の女性が「私がやらなくちゃ!」と立ち上がり修復知識もないのに勝手に修復。仕上がった壁画のキリスト像は毛むくじゃらのサルのようになってしまった。地元では一時、苦情が殺到。もちろん市は原状回復へ動き出した。

しかし、この壁画が報道され話題になると、週末には壁画を一目見ようと教会には数千人が押し寄せたそうだ。さらに現地ではグッズ販売など壁画フィーバーへの便乗商売も始まっていると伝えられている。

さらに、ネット上では「壁画を元に戻さないで!」と、署名活動が始まり8月27日現在、嘆願書には1万9000人以上の署名が集まっている。

支持者たちは

「これはキリストの復活だ!」
「彼女はアーティストだと思う」
「彼女が元の壁画に与えたダメージは大きい。でも彼女の無償の愛に感動した」
「技術的には未熟だが、ユニークさと個性は本物だ」
「私はオリジナルの壁画よりはるかに素晴らしいと思う」
「誰もキリストが人間でなければならないとは言っていない」
「この“善意の修復”はすでにこの壁画の歴史の一部だ」

と熱のこもったコメントをしている。署名運動はこの嘆願書だけにとどまらずFacebookなどでも広がりを見せている。

史上最大の悲劇と思われた修復劇がこんなに支持されるとは誰が思っただろう。しかも地元に思わぬ経済効果をもたらしているようだ。しかし、いくら善意とはいえ文化財を傷つけたことには変わりない。修復すべきかせざるべきか……教会や地元政府にとってさらに頭を悩ます問題となりそうだ。 

参照元:change.org (スペイン語)、Gawker (英語)

▼すでに2万人近い署名が集まっている、まさかこんな展開になるとは……

▼繊細な装飾の教会と壁画の組み合わせはシュールすぎ、新しい芸術ととらえる人も多い