タイの格闘技といえば“立ち技最強”としても名高いムエタイである。だが、3月17日が「ムエタイの日」であることを知る者は、あまり多くないだろう。そしてさらに、タイのアユタヤがムエタイと密接な関係を持っていることも……知る人ぞ知る豆知識である。

ということで今回は、2012年3月17日にアユタヤで開催された世界最大のムエタイの祭典「ワールド・ワイクルー・ムエタイ・セレモニー」の様子を大量の写真と共にお伝えしたい。ちなみに、この日のセレモニーに参加したのは、世界49カ国から集まった500人以上のムエタイ戦士である!

・なぜ3月17日なのか? なぜアユタヤなのか?
まず、なぜ3月17日がムエタイにとって大切な日なのかを説明するために、一人の伝説的ファイターをご紹介したい。男の名前は「ナイ・カノムトム」、200年以上も前に活躍したムエタイ選手である。彼のストーリーを簡潔に説明するならば、「ビルマ軍に捕らえられたが、ビルマ王の目前でビルマ人選手10人を片っ端からブチのめして釈放」という伝説を残す最強のムエタイ戦士である。

この伝説の一戦が行われた場所はタイのアユタヤ。時は今をさかのぼること238年前の1774年3月17日。そして、この一戦で使われた技こそがムエタイの起源とされており、ムエタイ独特の試合前の踊り「ワイクルー」が誕生したのもこの日であるという。

・ムエタイ独特の踊り「ワイクルー」の誕生秘話
なぜこの時にワイクルーが誕生したのか。その答えは、前代未聞の生死を賭けた10人相手の戦いの前に、ナイ・カノムトムが作戦を練る時間稼ぎをしていたからである。踊りながら地形をチェック。まるでレース前に歩いてコースをチェックするレーサーのように。さらに、どのような戦いをすれば良いのか踊りながら考えに考えたのだという。そして見事、10人の相手ををぶちのめしたのだ。

ちなみにワイクルーとは、「師(クルー)に合掌する(ワイ)」という意味である。つまり、ムエタイ戦士がクネクネと踊るのは、師や両親、そして国に感謝を捧げているのである。

・早朝から500人以上のムエタイ戦士がナイ・カノムトム像に参拝!
ムエタイの技、そしてワイクルーが誕生したアユタヤには、ムエタイの英雄ナイ・カノムトムの像がまつられている。つまりこの地は、ある意味ムエタイ発祥の地だ。ということで「ワールド・ワイクルー・ムエタイ・セレモニー」が開催された3月17日には、世界49カ国から集まった500人以上のムエタイ戦士が、数頭の象と共にパレードしつつナイ・カノムトム像の前に集合!

そしてアユタヤ県知事や、アユタヤ内にある複数の寺院の僧侶たちと共に、ムエタイの師であるナイ・カノムトムへ合掌。つまりは真の意味での「ワイクルー」である。その後、チビッコたちによる合同ワイクルー(踊り)や、チビッコムエタイ戦士によるデモンストレーションなども行われ、セレモニー午前の部は盛大に幕を閉じた。

・アユタヤ遺跡の目の前で500人以上のムエタイ戦士が優雅にディナー
時間をおいて夜の部では、世界中から集まった500人以上のムエタイ戦士に、アユタヤ県知事とタイ国政府観光庁総裁の両者からヘッドリング(モンコン)が授けられた。その後は参加者全員でワイクルーを行い、最後の最後はマハタート寺院前でディナーを食べながらセレモニー鑑賞。アユタヤの遺跡をバックに演じられたムエタイの歴史劇は、とても幻想的なものであった。

ちなみにこの「ワールド・ワイクルー・ムエタイ・セレモニー」は、ここ数年毎年開催されている。今年の参加者は昨年よりも多かったそうな。来年も開催される予定なので、参加したい人は公式サイトなどをチェックして頂きたい。ムエタイ通ならば、毎年3月はタイに注目だ!

参考リンク:ワールド・ワールド・ワイクルー・ムエタイ・セレモニー(英語)
Report:GO羽鳥

▼彼がナイ・カノムトムだ!

▼ここに来るものはみなワイクルーをする

▼世界各国から……

▼象に乗ったりしつつムエタイ戦士がやってきたー!

▼パレード状態だ!

▼象といえばアユタヤでもある

▼よく教育された秀才な象さんたち

▼僧侶たちも集合

▼洪水被害を受けたお寺には、アユタヤ県知事より義援金(各10万バーツ:約30万円)が渡された

▼セレモニー会場は満席!

▼日本人キックボクサーのa2ko(岡田敦子)選手も来ていたぞ!

▼アユタヤ県知事と元マーシャルアーツ日本キックボクシング連盟日本バンタム級チャンピオン鴇(とき)稔之さん!

「日本ムエタイ協会」の猪股敢児さんの姿も!

▼ナイ・カノムトムにワイクルーするアユタヤ県知事

▼ちびっこたちによる合同ワイクルーが始まった!

▼一糸乱れぬワイクルー。さすがはタイの子たちだ

▼少年たちによる演舞も!

▼いい顔してる!

▼迫真の演舞だ!

▼みな真剣な眼差しで見守る

▼ヒザ!

▼きれいな飛び蹴り!

▼夜はモンコンの授与式。手前はアユタヤ県知事

▼神聖なる儀式である

▼奥にいるのはタイ国政府観光庁総裁だ

▼次々と授与される

▼タイ国政府観光庁総裁

▼もう一枚パチリ

▼次々にやってくる世界中のムエタイ戦士

▼モンコン授与のあとは、師匠たちにワイクルー

▼この人数!

▼美しき光景

▼モンコンを授与されるa2ko(岡田敦子)選手

▼幻想的な儀式は……

▼この後もしばらく続いた。なんせ海外組だけでも500人以上、タイ人の参加者を入れたらそれ以上である

▼夜のセレモニー会場はこのような入り口

▼入り口にはもちろんナイ・カノムトム像が

▼タイ伝統工芸のデモンストレーションも! こちらは刀鍛冶だ

▼モンコン授与式のあとは合同ワイクルー

▼参加者はそれぞれ思い思いに記念撮影をしていた

▼最後は全員でディナー!

▼なんと遺跡の前でのディナーである

▼セレモニーも素晴らしかった。参加したい人は来年の3月あたりにアユタヤへGO!