
何者かに楽天市場のアカウントを乗っ取られた私(本誌記者)。調べてみると、乗っ取り野郎は私のアカウントで炊飯器とデジカメを購入していた。さらに、大阪某所へ発送するように住所と電話番号を改ざんしていたことまで判明した。
そのいきさつは、シリーズ『追跡ネット犯罪(1)』と『追跡ネット犯罪(2)』でご報告した通りであるが、次に私がやったことは、警視庁ならびに警察署への連絡・相談である。
・なぜ、最初に警視庁に相談したのか
本来ならば最寄りの警察署へ連絡するのが先であろう。だが、私はそれが嫌だった。実は過去にもネットがらみの詐欺被害にあったことがあり、地元の警察署へ相談したのだが、事務的に被害届を作るだけで、その後ほとんど何も対応してくれなかったのだ。
デタラメかもしれないが住所まで分かっていた。しかし当時担当してくれた刑事さんは「たぶん犯人は捕まらないでしょう」とまで言う始末。今ほどネットが浸透していなかった時代だったとはいえ、また、警察の事情もあるのだろうが、私は本当に悲しかった。結局その時は泣き寝入りだ。
・警視庁「あなたは被害者ではない」
それから数年たった今、私は警察署をすっとばして警視庁に連絡した。事情を説明し、ネット犯罪に詳しい部署につないでもらった。しかし、結果的に言われたのは以下のようなことである。
1.あなたは被害者ではない。
2.今回のケースでの被害者に該当するは、クレジットカード会社と楽天市場。
3.クレジットカード会社は金銭的な被害にあったといえる。
4.楽天市場は不正アクセスをされた被害にあったといえる。
5.あなたは被害者ではないし、現時点では被害届も作れませんが、情報提供者として地元の警察署へ相談しに行って下さい。その情報がないと、警察としても何も動けない。
6.あと、クレジットカード会社などには今回の件を連絡しておいたほうがいい。
――えッ? オレ被害者じゃないの? え……? なんでも、不正アクセスというケースでは、不正アクセスされたユーザーではなく、不正アクセスをされたサーバー側(会社側)しか被害届は出せないのだという。それが現状の法律なのであるという。そ、そうなのか……オレは被害者じゃないのか……。こんなにキモチワルイことになっているのに!
・警察署へ行く前に、いろいろ連絡
ともかく結局のところ、地元の警察署へ行かないと先に進めないとのことなので、クルマを飛ばして警察署へ向かうことを決意。だが、行く前にやることがある。まずはクレジットカード会社に連絡し、事情を説明。夜中の電話だったので、より踏み込んだ対応は後日ということになる。
次に、乗っ取り野郎が商品を購入した大手家電量販店へも、メールにて一報を入れる。「私が注文したものではないので、もしまだ発送していないのであればストップしてください」と。そして、楽天市場とのやりとりメールなどをプリントアウトして、警察署へ相談する資料を作成。すべての準備が整ったのは午前0時すぎ、2月12日(日)になっていた。
・地元の警察署「北朝鮮からのアクセスだと手出しができません」
自動車も少ない深夜の道路を私のクルマでひた走り、地元の警察署へ向かう。まずはどう見ても暴力団より強そうなマル暴の刑事が対応してくれたが、そのうちネット犯罪に詳しい担当の方がやってきた。言葉を選び、丁寧に説明してくれるネット犯罪担当の刑事さん。彼から言われたことは以下の9ポイントである。
1.被害者は私ではない。被害者はサーバー側のほう。私はあくまでも参考人。
2.現時点では不正アクセスの可能性が高いが、ちゃんと調べないとわからない。
3.発送先の住所は判明しているが、その人が関係者だとは限らない。本当にそこにいるのかどうかもわからない。
4.誰も住んでいない住所を指定して、商品受け取りのときだけ、そこに住んでいるフリをして受け取るパターンも現によくある。
5.配達業者が商品を届けるのを、ずーっと待機して張り込む……というのは現実的でない。そういうわけにもいかない。
6.よって、この住所に関しては、特に今スグに、何をするということはない。
7.不正アクセス時のIPアドレスが重要。もしそのIPアドレスが、発送先の住所あたりと関係していれば、発送先の住所も有効な情報ということになる。
8.楽天市場の「ログイン履歴ページ」から、ログイン時のIPアドレスがわかる。それを調べてプリントアウトして持ってきて欲しい。
9.もしも万が一、そのIPアドレスが日本と国交のない国……たとえば北朝鮮からのアクセスだったりしたら、国交がないので日本としても手出しはできない。その点はご了承ください。
・やっぱり何もできないのか。あの時みたいに、何もできないのか
発送先もわかっているのに、何もできないという無力感。その住所に住んでいる人が、確実に事件に関係しているとは限らないので、何もできないというやるせなさ。
完全なる素人考えだが、そのへんで盗難自転車のチェックをしているおまわりさんに、「こんなことがあったんですけどー。ちょっと話をお聞かせ下さい」と確認してもらうこともできないのか。もしかしたら、まったく関係ない人の住所が使われている可能性もありうる。「あなたの住所、勝手に使われてますよ」と注意することもできないのか。
現時点では、できないという。
やっぱり、なにもできないのだ。
・じゃあオレが行く。大阪のオレに会いに行く。
被害者ではないので、被害届を作ることもなく警察署を後にした私は、帰宅することなく、そのまま高速道路へ乗り込んだ。深夜の東名高速道路を、一路、西へ西へと爆走した。
大阪にいるらしき、私と同じ名前の人に会うために。
炊飯器とデジカメを、私の名前とクレジットカードで注文した、大阪の住所の「私」に会うために。ゴーゴーウェスト、ニンニキニキニキニンニキニキニキニンニキニキニキニンニンニン。
執筆:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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GO羽鳥






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