ピザでも寿司でもラーメンでも、そして「そば」でも!……出前というものは素晴らしい。なんといっても電話一本。常連になれば「○○ですが、いつものやつ」だけで、「いつものやつ」が届くのである。ホカホカアツアツの汁物を、なんと玄関まで持ってきてくれるのである。考えれば考えるほど素晴らしいシステムだ。
ということで今回は、経験3年以上のそば屋の出前ライダー氏に「お、この人は通だな」と思わせる、そば出前の頼み方を聞いてみた。
「出前というものは、やはりどうしても麺が伸びます。ウチのお店では、お客さんの家までの距離を計算して麺のゆで具合を調整していましたが、道路状況などにより、予定通りに届かないこともあります。よって、時間が経ってもそこまで変化しないメニューを狙って注文してくる人は『このお客さん、やるな』と思いますね」
出前ライダー氏によると、「変化しにくいメニュー」の代表格は、ずばりトロミのある「あんかけ系」であるという。また、そばよりもうどんのほうが変化しにくい。よって、「あんかけうどん」や「カレーうどん」などを注文してくるお客さんには「……通だな」と思うことがあるという。
「もっとも時間に影響されるのが、『たぬきそば』なのかも知れません。たぬきの天かすは、時間が経つとフニャフニャになります。そばも、必ず伸びてくる。運が悪いとフニャフニャのたぬきそばになることも。そうならないように最短距離で運びますが、たぬきそばは強敵ですね」
となると、伸びにくい「冷やし系」のメニューはどうだろうか。もりそば、ざるそば、天せいろなどは出前に適してる?
「冷やし系の麺は伸びにくいですが、固まります。水で戻せばほぐれますが、基本的には固まります。もし冷やし系を頼むであれば、最初から汁が入っている『冷やしたぬき』や『冷やしきつね』などを頼むとイイ感じかも知れません」
それでは、そば屋の丼物はどうなのでしょうか? 天丼、カツ丼、親子丼に、玉丼、牛丼、むじな丼なんてのもありますが?
「揚げたての天丼も、出前となるとフニャっちゃいます。ということで王道はカツ丼だと思います。ウチの店では、届け先の距離も計算して卵のかたさを調節していました。お客さんがフタを開けたその瞬間に、『最高のカツ丼』になるようにしていたのですよ」
ちなみに、出前ライダー氏のお店では、お客さんが電話してから3~5分後に届け終えることも多々あったという。もちろんカツは揚げたてである。果たしてそんな芸当が可能なのであろうか?
「とりあえず場所は近場ですよね。で、例えば私が電話をとります。注文を確認するときに、『カツ丼2丁ですね!』と大きな声で返事します。それを旦那さんが聞くと同時にカツを揚げ始めます。
と同時に、女将さんは丼汁とタマネギを温め始めます。私はお盆やお新香のセット。カツが揚がると同時に、サクサクと包丁を入れ、カツ丼鍋に投入。同時に卵も投入。少し温め、カツ丼完成で、フタしてラップかけてカブの出前機にセット。
あとは私が走るだけです。奇跡的に信号がすべて青で走りきれれば、3~5分到着も可能です。お客さんは『注文ミスしたカツ丼を回してるんじゃないの?』と疑ったりもしますが、正真正銘の出来たてカツ丼なのです」
驚くべきチームプレイを経て届けられていた出来たてのカツ丼。もしもあなたが出前をして「どう考えても出来たて!」と思うカツ丼に出会ったら、どのように作られていたのかも想像して食べてみると、よりおいしくいただけるはずである。
執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.