最近インターネット上で、NHKのアナウンサー有動由美子が話題を呼んでいる。というのも、彼女は非常に脇汗をかく体質らしく、人によっては「見てられない」と意見する人もいるようだ。そこで、編集部でも話をしてみたのだが、自称おっぱい上級者を自負するS氏は、

「脇汗っていいなあ、うん! うん!」

とにんまり。さらに、「女性の脇汗って、ときめけるんですよねえ、うん~」と、鼻息を荒くし始めたのである。すると、最若年のZ氏は、

「脇汗でときめけるなんて、理不尽ですよ!」

と、またしても噛み付いたのである。こうして白熱した議論が、またも展開されたのである。

そもそも脇汗とは何なのだろうか。読んで字のごとし、脇の汗である。実のところ、ただ汗をかいているという訳ではなく、「局所性多汗症」といわれる症状で、手術や薬で治療するケースもあるとのことだ。これをみてときめけるというS氏は、その思いについて熱く語った。普段よりもはるかに力が入っている。

・ 脇汗にときめけるS氏の主張

「僕はね、脇汗を思うときに、高校生のころを思い出すんだな、うん。まだ若くスマートだったときの自分と、そのときのクラブ活動で見た校庭の景色が忘れられない。女性の脇汗はね、うん、健康で健全な証拠ですよ。なんというか、生きてるんだな、がんばってるんだなって感じがするんだね。そこにときけめてしまう訳なんだな。

不潔という人もいるけど、そういう人は視野が狭い、心が狭いと言わざるを得ないんだな、うん。かわいそうとさえ、感じてしまうのですぞ」

やや興奮気味のS氏。日頃は使わないような言葉を使っているところを見ると、柔和な見た目に反して、熱い血潮のたぎりを感じているようだ。S氏の主張を聞いたZ氏は、こう反論した。

・ 脇汗無理めなZ氏の主張

「どんな記憶と脇汗が結びついているのか知りませんが、不潔ですよ。汗ですよ、汗。汗は汗、それ以上でもそれ以下でもない。良くかくのであれば、周りを不快にしないような、それ相応の工夫というものが必要でしょう。汗が不快であるばかりか、匂いがすることだってあるでしょうし。

とにかく不潔で不衛生、そのことに本人が気付いていないのなら、良いのですが、大抵の人は気づいています。しかるべき対処をしないのは、怠慢としか言いようがない。ときめける訳がないんですよ」

と、まくし立てる。なるほど、経験や思い出の違いが、脇汗の価値を左右しているようだ。本来であれば、ここで私(褌)がまとめに入るところだったのだが、S氏はZ氏の物言いが気に入らなかったようだ。

S氏 「君、前々から言おうと思ってたんだけど、僕の方が年上だよねえ。僕、君の年上だよねえ。僕の方が先輩だし、年上だよねえ。先輩がときめけと言ったら、君もときめけよ。ときめくべきでしょ。普通、うん」

歳の差にかこつけて、脇汗にときめけと仰る。Z氏も負けていない。

Z氏 「いや、歳関係ないでしょう、今。あなたの性癖について話してるんですけど。それを歳がどうこう言って、ときめけとは何ですか。大体ときめけって何ですか?」

Z氏の言う通り。ときめけってなんだ。しかし、このまま放っておいてもキリがないので、いつも通りまとめることに。

・ 脇汗討論まとめ 脇汗は来ている服に依存する

「わかった、わかったよ。俺が話そう。脇汗には2通りの受け止め方がある。まず1つは、単なる「汗」という見方だ。間違っている訳ではないのだが、なんというか、殺伐としてるよな。「太陽は東から昇る」くらい当たり前の話だ。不潔と言ったらそこでおしまい。

もう1つの見方は、脇汗は『その人の人生』といっては言いすぎか。いや、言いすぎじゃない。その人の息遣い、その人の眼差し、その人の足跡。それらと同じように「その人の脇汗」がある。生きている証、それが脇汗ではないだろうか。俺はそう思いたい」

S氏は勝ち誇ったようにZ氏を見たが、話はまだ終わっていない。

「ただし、ときめけるかどうかについては疑問が残る。というのも、脇汗のインパクトはそのときの服に依存する。したがって、

脇汗 = ときめける ではなく、
脇汗 + そのときの服 =ときめける

だからだ」

S氏はしばし黙った後に、小さく「なるほど」とつぶやいた。いつになく、悔しそうな表情を浮かべている。これは少々言い過ぎたかもしれない。

帰り際、私は、S氏に一言こう告げた。「悪かったな。お前のため思って言ったつもりだったんだが。実のところ、俺も脇汗はいける口なんだ。これからもよろしく頼むよ」。そういうとS氏は、静かに笑って「そう言ってくれると思ってましたよ、褌さんならわかってくれるって」。

そして、お互い顔を見合わせて無言の握手。仲間って素晴らしい。

(文=褌シメタロウ)
イラスト:ロケットニュース24