雑誌『ウルトラジャンプ』で漫画を連載していた中国出身の美人漫画家・夏達さんの活躍にも見られるよう、中国において海外からの輸入一方だった中国のアニメ・漫画産業に変化の兆しが見られている。
国家レベルで漫画やアニメの産業化を図っているなか、昨年、上海郊外に行政が監修する「上海漫画&アニメミュージアム」が開館した。オープンして約1年、今や小学校の校外学習の人気スポットになっているそうだ。早速行ってみた。
ミュージアムは3階建てで、1階は中国アニメと外国アニメの歴史、お土産コーナー、2階では懐かしのプラバン作りなどの体験型ワークショップも楽しめ、3階は大人気の3Dシアターとなっている。チケットは30元(約400円)。意外や意外、ミュージアム構造はちゃんとしている。
中国アニメの歴史は奥が深い。日本ではあまり知られていないが、かつての中国ではセルアニメはもちろんのこと、水墨画や影絵など芸術性の高いオリジナルアニメが制作されていた。その頃の作品はパクリ大国として地位を確立してしまった昨今の作品よりも、クオリティが高いと言える。実に興味深い展示である。
外国アニメの展示エリアでは、スパイダーマン、バックスバニー、タンタン、鉄腕アトムらの等身大フィギュアが迎えてくれる。躍動感あふれるヒーロー達にはユニバーサル・スタジオ・ジャパンもビックリだろう。
スタッフの応対も感じがいい。なんせ笑顔で話かけてくれるのだ。日本の接客業ではごく当たり前のことだが、中国ではあまり見られない光景だ。スタッフも漫画やアニメが好きで、この仕事を楽しんでやっているようだ。来館の子ども達も大喜び。両手に駄菓子を握り締め、アニメやゲームの展示を食い入るように見つめている。それを見守るスタッフも何とも微笑ましい。
興味深い展示に、心温まる雰囲気。なかなかいいミュージアムだ。
と思いきや…やっぱり! である。
体験コーナーには、実際に乗ることができるネコバス。ジブリの森美術館を彷彿とさせるが、何かが変だ。行き先の表示がなく、顔が妙にシャープ、12本あるはずの足が4本しかない。よく見ると「ネコバス」でなく、「トトロバス」だった。……トトロバス……いや、これはどう見てもトトロではなくネコだ。
アトムもよく見るとその瞳には生気がない。その傍にはドラえもんともミニドラともつかない、縮尺がおかしいドラえもん。そして、見事に生え際が禿げ上がったミッキーマウス。いろいろな意味で心配になるが、ある意味では期待を裏切らない中国ならではのミュージアムと言えよう。
ツッコミどころも満載だが、展示物も内容もボリューム満点。興味のある人は是非!
(取材・文・写真=MoG381)
「上海漫画&アニメミュージアム」
【所在地】上海市張江路69号
【開館時間】10時~17時(毎週月曜休館)
【チケット】大人30元
【アクセス】地下鉄2号線「金科路駅」もしくは「張江ハイテクパーク駅」より、路線バス609路/ 東川線「団結停留所」で下車、徒歩1分。
▼これがチケットだ! 謎のゆるキャラつき
▼中国オリジナルアニメの歴史、西遊記の一場面「鉄扇公主」
▼アメコミヒーローズ!
▼日本アニメキャラもいるぞ
▼どことなく生気のない瞳…眉もなんだかチャイナマダム風だ
▼ミッキー(生え際後退中)がお見送り「またね、バイバイ!!」