アジアの裏路地にひろがる深淵を検証すべく、世界を旅して15年。

先週「バンコク・マニアの塔の最上階にあるもの」でご紹介した、バンコクのコピゲー戦国ゾーン・サパーレック(サパーンレック)。そのすぐ脇にそびえるマニアタワー「ピロムプラザ」の地下に降りた私は、過去のトラウマを扱う謎のショップと遭遇。度肝を抜かれたのでありました。

立って半畳、寝て一畳ほどしかないその店の、薄汚れたガラスケースに陳列されていたもの……。小汚い大量のファミコンソフトだった! 四倍ズームでざっと眺めただけでも「キャプテン翼」「魂斗羅」「スケバン刑事2」「マイク・タイソンのパンチアウト」など、古今東西の伝説がひしめいている。

さらに目を凝らせば、ガラスケースの天井部分にPCエンジン用の各種ソフトが貼りつけてあったり、ケースの角にはゲーム界の伝説「アタリ・ビデオコンピュータシステム」が飾られていたり……。参考までに、こちらのアタリはアナログのアンテナ出力(RF)のみなので、地デジテレビしかないご家庭は買っても置物にしかならない。8台持ってた私が言うんだから間違いない。

そもそもオリジナルの流通がほとんどない国で、わざわざ中古ソフトを売る意味はあるのか? 日本も五年から六年ほど前、それまで粗大ゴミ価格で取引されていたビンテージPC・ゲームマシンや、80年~90年代に発行されたゲーム・パソコン古雑誌の値段が突然、五倍、十倍に跳ね上がった時期があった。これらに骨董価値が生まれ、コレクション対象となったわけだが、タイも「そういう時代」に突入したということか? もちろん、タイ人にも筋金入りのゲームマニアは大勢いる。

遊ぶカネに困ったらヤフオクで中古の「燃えプロ」を二束三文で五千本仕入れ、タイに運んで一千万バーツで転売。連日豪遊……一人の日本人として、そんな時代が来ることを願わずにはいられない。ウッヒッヒッ。果たして買い取りしてくれるのか、買取価格は?

鼻息ヒーハー状態で一時間ほど待ってみたものの、ついに店員は現れず、店はひっそり静まり返ったまま。実はこれ、店でも売り物でもなく、このショーケース、この店全体がひとつの「アート」即ち作品なのではないか――と勘ぐってみたりもしたけど、そんなわけないわな。暑いしそろそろ帰るか……。
(取材・文・写真=クーロン黒沢

▼バンコクのオタクたちの憩いの場に。

▼海を渡り、はるばるバンコクにたどり着いた日本の中古ファミカセ。

▼『キングコング2』に『ジッピーレース』……な、懐かしい!

▼PCエンジン・CDロムロムのシステムカードなんて誰が買うんだろ……

▼ゲーム界の伝説「アタリ・ビデオコンピュータシステム」。合掌。