秋も深まり、気温も下がり、聞こえてくるのが祭ばやし。子どもたちワクワクのお祭りシーズン到来である。と同時に、ウハウハするのが様々な屋台でモノを売る、通称「テキ屋さん」の存在だ。袖の隙間からチラリと「絵」が見えたりする頭がパンチなお方もいたりするが、至って普通のオッチャン・オバちゃんたちが店を出していることも数多い。しかし、なんとなくみんな眼光鋭めで、ちょっと話しかけにくいムードが漂っている。いずれにせよ、なんとなく怖い雰囲気だが、今回は都内某所のお祭りで、わたあめ(綿菓子)屋台を出す店主(70歳)に話を聞いてみた。
もうかってますか?
「オッ!アンちゃん、飲んでるかい? 今年はすごくいい感じ。今んトコ今日だけで売上30万チョイ。記録的ペースよ、ウン!」
時刻は夕方6時過ぎ。わたあめ屋のオッチャンは、酒臭い息を漂わせながら上機嫌でこう証言した。すでにベロンベロンである。
それにしても……わたあめだけで30万! 10時すぎに店を出し、約8時間で30万である。さらにわたあめといったら、原材料はザラメ(砂糖)と割りばしのみ。なんというぼろ儲け状態!
「わたあめ一本300円、袋入りだと500円だよ~」
と畳みかけるオッチャン。袋というのは、ポケモンやあらアンパンマンやらプリキュアやら仮面ライダーなどがプリントされている(だけの)白い袋だ。そんな袋が200円。大人であれば間違いなく買わないであろうオプションだが、子どもは迷うことなく「袋入り」だ。
さて、ここで落ち着いて「30万円問題」について整理してみよう。
記者が取材した時、わたあめ屋さんには10人程度の行列ができていた。お祭りの入り口(1番目)に位置していたということもあり、その行列は絶えることがなかった。そして、1人あたりにかかる対応時間は長くても約1分。フルで客が回転したら、1時間で60人。もし仮に全員が「袋入り」を買っていったとしたら……500×60=3万円。これが8時間になると24万円。さらにオッチャンの「記録的ペース発言」を計算に入れると……30万円という数字に疑いの余地はなさそうだ!
「俺は、ここ(の神社)では、わたあめ一筋ね。何年やってるか忘れたけど、もう俺、70歳になるんだぜ」
酒を飲み飲み、タバコをスパスパ。とても70には見えないほどエネルギッシュ。
「ウチのオッカア(妻)は、あそこで焼きそば売ってるよ。69歳。うまいぜ~」
オッチャンの奥さんも、とても69歳には見えない若々しさ。おそらく売上も2~30万円はいくだろう。そんなチャキチャキの奥さんまで紹介してくれたオッチャンの上機嫌に甘える意味で、「わたあめ、大盛りで!」とリクエストしてみると、
「ここは大田区じゃないけど、大盛り(大森)にしといたぜ」
と、年季の入ったテキ屋ギャグまで披露してくれた。きっと大田区だったら「ここは蒲田じゃないけど~」となるのだろう。
たった1日のお祭りで、夫婦の稼ぎは推定50万。もし仮に、毎週どこかのお祭りに遠征していたとしたら月収200万。週末だけ働いて、年収2000万オーバーの超セレブという計算に! もしかすると、「わたあめ御殿」に住んでいるかもしれないオッチャン夫婦。
まさしく真の勝ち組ではないだろうか。
(写真、文=GO)