犯罪の被害に遭われた方の中には、犯人に痛みを身体で分かってもらいたいと思うこともあるだろう。
世界でもトップクラスの低犯罪率と凶悪犯罪の低さを誇るシンガポールには、ムチ打ちの刑が存在する。日本でもかつて笞刑(ちけい)・黥刑(げいけい)・烙印などが行われていたから、体刑は珍しいものではないかもしれないが、近代化の進んだシンガポールで未だに体刑が行われているのはちょっと意外な気もする。
では、どんなことをするとムチ打ちの刑が課せられるのだろうか?主に私物・公共物の破損、許可なく銃やナイフその他の攻撃用武器を所持する者、強盗や暴行を働いた者には、高額な罰金や禁固刑とともにムチ打ちが課せられることになっている。シンガポールのような多民族、多文化の共存する国家では、体刑は社会の安定と秩序を保つための抑止措置なのである。「ムチ打ちの刑が怖いから悪いことはできない」という話をシンガポール人から聞いたことがある。身体的苦痛を味わうムチ打ちは、もしかすると罰金や禁固刑よりも怖いものなのかもしれない。
ちなみにシンガポールでも日本同様、死刑が行われている。アムネスティー・インターナショナルが今年3月に発表した調査によると、シンガポールは2000年度には21人という、人口比に対してかなり多めの死刑を行っている。その後の死刑執行数は減っているとはいうものの、年間約7人が処刑されている。この人数は日本で年間に処刑される人数とほぼ変わらない。シンガポールが東京23区とほぼ同等の面積で、人口は東京都の半分にも満たないことを考えると、かなりの数だということが分かる。シンガポールは死刑に関しても容赦ない国なのである。
記者:鈴木香穂里