家電量販店に3Dテレビの体験コーナーができたり、ソニーのPlayStation3が3D立体視ゲーム対応になったりと、一般家庭にも着実に3D化の大きな波が押し寄せている。我々の身近なハイテク機器といえば、携帯電話を思い浮かべる人が圧倒的に多いだろう。実は、携帯電話で3Dムービーを撮影できる時代がすぐそこまで迫ってきていると言ったら、信じてもらえるだろうか。

3D映像は、右眼用と左眼用の映像を2台のカメラで同時に撮影し、1つの映像に合成する。このため、3Dカメラは2台のカメラ間の色調整や位置ずれ補正などの画像処理を行う周辺回路が必要となり、小型・軽量化や開発の短縮が求められていた。そんな3D事情に明るい兆しが見えてきた。

シャープは2010年5月12日、業界で初めてハイビジョンの3D画像が撮影できるモバイル機器向け3Dカメラモジュールを開発したと発表した。7月にサンプル出荷を行い、本年中に量産を開始する。

シャープが今回発表した3Dカメラモジュールは、左右2つのカメラが出力する映像に対して、色や明るさを調整する「カラーシンクロ処理」、映像信号のタイミングを同期化する「タイミングシンクロ処理」、位置ずれを調整する「光軸調整処理」の機能を搭載したものだ。

イメージセンサーから信号を迅速に読み取る高速読出技術により、高画質なハイビジョンモードによる3D映像の撮影が可能だ。さらに、カメラモジュールの開発で当社が長年培ってきた高密度実装技術によってコンパクトな形状を実現しており、携帯電話やスマートフォン、デジタルカメラなどモバイル機器への搭載が期待される。

シャープは、中小型3D液晶ディスプレイ、大型3D液晶ディスプレイなどの表示技術にくわえ、入力デバイスである3Dカメラモジュール技術により、新たな3D市場を創出していく構えだ。携帯電話の端末メーカーであるだけに、3Dカメラモジュールを搭載した携帯電話の登場は大いに期待が持てる。携帯電話でもハイビジョンの3Dムービーが撮影できる時代も、そう遠い未来の話ではなさそうだ。