南イタリアの車窓に飛び込んでくる乾いた土地に無造作に生えたサボテン(fico d’india)は、手のひら強の大きなしゃもじ型で、「こっちにおいで」と歓迎してくれているようでなんとも愛らしい。9月から初冬にかけてこのしゃもじ型の葉の上には黄~赤色の、直訳すると「インドのイチヂク」といわれるエキゾチックな実がなる。
興味をそそられ味わってみたい人は、青果店の店頭や青空市、野菜を売るトラックのおじさんから買うこともできるし、もちろん道端に生えているのをもぎ取っても構わない。ただし、サボテンだけあって実にも小さいトゲが無数についているので注意が必要だ。軍手をつけてナイフで切り込みをいれると簡単に皮がむける。小豆大の種がびっしり詰まっているところは日本のアケビを連想させ、素朴なやさしい甘さを味わえる。いちいち種を出すとキリがないので正しい食べ方は丸呑みする。しかし、たくさん食べるのは禁物で、1日に1個までと言われている。(たくさん食べるとトイレで苦労する)
さらに、この実でジャムも作ることができるのだ。実を煮詰めて種を濾(こ)し、濃厚なソース状にする。いたって作り方はシンプルだ。そして、これをシチリア特産菓子『カンノーロ』の羊のリコッタチーズのクリームに混ぜ合わせると、これが美味しく、さらに色鮮やかなピンク色を目でも楽しむことができる。南イタリアに旅行に行った際は、一度サボテンの実を味わってはいかがだろうか。
記者:Jyunko Maruyama