ナイキジャパンは14日、命名権(ネーミングライツ)を取得した東京都渋谷区立宮下公園の名称について、「宮下ナイキパーク」に変更はせず、現状の「渋谷区立宮下公園」の名前を今後も継続して使用すると発表した。

すっかり浸透した「味の素スタジアム(東京スタジアム)」や「渋谷C.C.Lemonホール(渋谷公会堂)」など、多額の使用料を払うのだから企業が命名権を行使するのは当然なのに、ナイキは年間1700万円も支払い、さらに宮下公園の改修費用を全額負担、ここまでしているのに命名権は行使しないのだという。これでは金をドブに捨てたようなものだ。一体どうしてこうなったのだろうか?

まず、この問題についておさらいしておこう。分かりやすく、くだけた書き方で時系列を整理すると、

1:いつの間にかホームレスの巣窟となっていた宮下公園。カップル・ファミリーなんて寄せ付けないムードが漂っていた。
2:麻薬の密売(受け取り所)としても使われたりで、ますますダーティーなカオスゾーンに。
3:設備も老朽化し、渋谷区は改修も計画していたが、財政難のため手がつけられなかった。
4:そんななか、公共施設の命名権(ネーミングライツ)販売が浸透し始める。渋谷区チャンス!
5:年間1700万円の命名権を取得したのはナイキジャパン。しかも10年契約なので渋谷区ウハウハ。こうして暗黒の宮下公園は、有料公園「宮下NIKEパーク」として生まれ変わることに。
6:さらに太っ腹のナイキは、エレベーター設置などの改修費用も全額負担! そして、もともと住み着いていたホームレスへも、小屋の移動を手伝ったり、シェルターへの入所を支援したりして全力フォロー。

……という感じ。ここまではよかった。ここまでは。ところが!

7:2010年4月ごろから、「みんなの宮下公園をナイキ公園化計画から守る会」などの市民団体らが「ホームレスの強制撤去はんたーい!」と抗議活動を始める。
8:さらに市民団体らは、ホームレス立ち退き後の公園を占領し、障害物を設置したり、「カフェ」と称してコーヒーをふるまうなど、なんだかよくわからない展開に。
9:そんな様子が、ネットの動画サイトやテレビのドキュメント番組などで取り上げられたりで、その他の市民団体らも「ナイキ公園」に反対し始め、デモ活動などをし始める。
10:ふと気づけば、なぜか渋谷区とナイキが悪者扱いされているという構図! しかも改修工事は延期!

……というわけだ。

この展開に怒り心頭の渋谷区は、公園を占拠している活動家たちを9月24日に行政代執行で排除。さらに公園の出入口を閉鎖。「もう誰にも邪魔はさせん。夢のナイキ公園、一刻も早く完成させましょう!」と、やっと動き出したところで、10月14日にナイキは急遽「名前は宮下公園のままでいきます……」と意気消沈の発表したのである。

それにしても一体なぜ10月14日に?

その理由は、市民団体「みんなの宮下公園をナイキ公園化計画から守る会」が10月15日に「ナイキ本社前抗議行動」を計画していたからではないか?と記者は推測する。同会のサイトによれば、「楽器や音の出るモノ、プラカード、コスプレなどで、それぞれの思いを表現しよう!」(引用)と書かれている。こんなことを本社の前でやられたら、たまったものではない。また、「ナイキは、宮下公園を奪うな!」(引用)とも書かれている。

別にナイキは宮下公園を奪おうとはしていないと思うのだが……。みなさんはどう思うだろうか?

(取材=GO