東京都東村山市の八国山緑地(‘となりのトトロ’の舞台になったと言われている場所)に隣接して、北山公園という自然公園がある。豊かな緑と湧水に溢れ、6月頃には約10万本の花菖蒲が咲くことでも知られている。その北山公園内に「しょうちゃん池」という小さな池があり、そこには在来種の小魚たちが棲息している。その小魚たちを狙って、カワセミ・アオサギ・カルガモなどの多くの野鳥が訪れることから、野鳥観察スポットとしても有名だ。私も、ちょっと時間ができるとフラリと訪れ、カワセミが水面めがけてダイブする姿をボーっと眺めるのが大好きだったりするのである。

ところがここ数年、そのしょうちゃん池では、行く度に外来種のミシシッピアカミミガメ(通称はミドリガメ)が数多く見られ、またやはり外来種のブラックバス(オオクチバス)などといった大型魚も棲息しているらしいという話を耳にしており、在来種の魚たちの将来を案じていたところなのであった。

そして先日、「東村山市役所 都市環境部 みどりと環境課」と「北川かっぱの会」という団体とが協力して、3月20日にその「しょうちゃん池」の“かいぼり”を行なうという情報を入手した。“かいぼり”とは、簡単に言ってしまえば「池の水を抜いて、底にあるゴミの清掃をしながら、在来種の魚は捕獲~保護しつつ、外来種を捕獲~駆除しましょう」ということだ。

「これは行かねばなるまい!」ということで、3月20日、長靴を履いて右手にカメラ、左手に手網を持参して行ってきたのである。午前9時半頃に到着すると、もう池の水は半分くらいまで抜かれており、既に数匹のブラックバスが捕獲されていた。小さな魚たちが徐々に減っていく水量に気付いて右往左往しているのが見える。参加者は30~40名前後。市の職員や「北川かっぱの会」会員の人を中心にボランティアで参加した人、またその子どもたちだ。程なく関係者の方からの挨拶~説明があり、皆で一斉に網を持って池の中に入ることになった。

普段見慣れている池の水を抜いて、その中の生態をうかがい知る機会など滅多にあるものではない。大人も子どもも皆、興味津々ですくった網の中を見入っている様子だ。私もボーっとしてはいられない。カメラを置いて手網に持ち替え、池の中に入る。それから約2時間、池の中の生態と対面するのであった。私的には、想像していた以上に小魚の数が多かった。トウヨシノボリ・オイカワ・ホトケドジョウ・ギンブナ・モツゴなど種類も豊富で、思っていた程に「喰い荒らされて」はいなかったようだ。

結局、私が滞在していた12時半くらいまでの間に、元々は琵琶湖水系にしかいなかった筈のワタカ(コイ科の魚)・ブラックバス・ミシシッピアカミミガメがそれぞれ数匹ずつ捕獲されていた。ミシシッピアカミミガメなどは、実際にはもっと沢山いたような気がするが、何よりブラックバスの数がそれ程多くなかったのは良かったのではないか。

とは言え、捕獲され土の上に放置されたブラックバスたちを見ていると心が痛む。前にも別の記事で書いたことだが、彼ら外来種の生き物たちは、彼らの意思で勝手に侵略してきた訳ではない。心ない(もしくは思慮の浅い)人間たちの身勝手によって放たれ、その場で生活せざるを得ない状況となり、必然的にその場の生態系を乱して問題となり、その成れの果てが「害魚」として扱われた上の駆除である。

勿論、だからといってこのような‘かいぼり’などの在来種を護る活動を否定する気は毛頭ない。ただ、駆除された外来種たちには責任がないということを、人間たちはもっと真剣に考えていくべきなのではないかと思う。更に言うのであれば、今回この‘かいぼり’に参加した人たちは、恐らく「環境問題」に対して人一倍考えている人たちであったと思うのだが、それよりも、それらブラックバスやミシシッピアカミミガメなどの外来種を、平然と国内の池や沼に放す浅はかな人間たちに、是非とも参加してもらいたいものである。そして自分の取った軽率な行為の代償として、ブラックバスを始めとする外来種の生き物たちが、どのような無残な最期を迎えることになってしまうのかを思い知るべきなのである。

(文/写真)
里山散策ライター:里中遊歩

捕獲されたカメの種類を確かめる人。ちなみにこのカメは外来種のミシシッピアカミミガメ

ミシシッピアカミミガメは、その名の通り耳の後ろが赤い。日本では「ミドリガメ」として知られているカメで、飼いきれなくなった人が川や池に放してしまうことで増えた。

コチラは捕獲されたブラックバス(オオクチバス)。彼らを日本の池や湖に放した人たちには、この哀れな最期の姿をしっかり目に焼きつけてもらいたい。

<宣伝でスミマセン>
私、里中遊歩は、来たる3月27日(土)、東京お台場の「東京カルチャーカルチャー」にて、トークイベント「東京・野生生物サミット」を行なうことが決定致しました。よろしければ、是非ともお越し下さいませ。

2010年3月27日(土)
Open 12:00 Start 13:00 End 15:30 (予定)
前売り券2000円 当日券2500円(飲食代別途必要・ビール¥590など)

【出演者】
『変なイキモノ探索隊』
隊長:里中遊歩(里山散策ライター)
副隊長:日高トモキチ(漫画家)
隊員:イトケン(サラリーマン)
特別ゲスト:今泉忠明(動物学者/動物科学研究所所長)

詳しくは↓以下のリンクからどうぞ!
http://tcc.nifty.com/cs/catalog/tcc_schedule/catalog_100212202815_1.htm