それは突然だった。私が何気なく先日の読売新聞を読んでいたところ……アーーーーッ!!!! 先日の記事でご紹介した「みどりアクション」が広告になっとるやないかーーーーッ!!!!

「みどりアクション」を超要約すると “いま我が国の医療費は年間48兆円に達し、医療保険制度が危機的状況(きいろ信号)になっている。このままいくと破綻(あか信号)も全然射程圏内なので、状況を打破するには国民1人ひとりの意識改革が必須である” といった感じだ。

健保連(けんぽれん / 健康保険組合連合会)がここまで本気で「みどりアクション」を広めようとしていたとは知らなかった。思わず感心したのだが、果たして健保連のお偉いさんはどうなのだろう? まさか部下に丸投げしているのではあるまいな……!?

・乗り込んでみた

ってことで、港区赤坂にある健保連本部にやってきた。

「天は人の上に人を造らず」と福沢諭吉先生は説いたけれど、とはいえ一般的にみて “健保連の偉い人” と私とでは社会的立場に大きな差がある。ナメられてはいけないので、キリッとした顔を作ったまま電車で来た。よぉ〜し、やるぞ!


たのもーう!



スンゴイ緊張感のある応接室!!!!!!


現段階で少なくともナメられてはいなさそうなことが判明し、気をよくしつつもキリッとした顔をキープする私。考えてみれば健保連は全国で約2800万人が加入する健康保険組合の連合組織だ。そりゃ人を職業や見た目で判断するワケないよね!

「あの会長席っぽい椅子に座ったら怒られるだろうか?」そんなことを考えながらマッタリしていると……


副会長「どうも初めまして。今日はよろしくお願いします」



「よろしくお願いしまァァァアアアア!!!!!」


・副会長、語る

おっと! ナメられまいとするあまり、逆にへりくだりすぎてしまった。今回お話を聞かせてくださるのは健保連の米川副会長。本記事は医療保険制度に全く詳しくない私が、あえて予習ナシで副会長に色々教えてもらおうという内容である。気を取り直していこう!


──「みどりアクション」を大々的に発信しておられる理由についてですが、やはり医療費の増え方が未だかつてなくヤバい! ってことなんでしょうか?(キリッ)

副会長「そうですね……ヤバいと思います。現在、国民医療費の総額は年間48兆円。しかも4割近くが後期高齢者の医療費です。これはどちらも過去最大の数値なんですよ」

──フムゥ、ゆゆしき事態ですな……!

副会長「さらに問題なのは、これが今後さらに増えていくだろう、ってこと。経済がそのぶん成長していれば別に困らないんですけども、この30年間ずっと経済成長が低迷した日本において、国民医療費ばかりが上がり続けるとなると、国民の負担は大きくなる一方です」

──日本人は気軽に病院にかかる人も多いですもんね。

副会長「とはいえ、フリーアクセスで病院を受診できるというのが、日本の医療保険制度の1番いいところですのでね。なので医療費を極端に下げようというより、せめて穏やかな伸びにとどまるよう、国民全員で考えて、協力していきましょう……というのが、今回『みどりアクション』の広告を出させていただいた狙いです」

──なるほどぉ……!


医療保険分野の大御所でありながら、超初歩的な質問にわかりやすく回答してくださる米川副会長。出会って5分足らずではあるが、「いい人だな」と感じている自分がいる。やっぱ巨大団体の上層部ともなると、これくらい懐が広い感じに仕上がるのかなぁ。


・現役世代の負担デカすぎ? 問題

なお健保連の活動をざっくりまとめると……


・全国の健保組合の声を取りまとめて、国へ制度の課題等を提言する
・健保組合の運営・業務の支援(研修会、相談対応)、財政状況の調査
・医療費等の分析、医療保険制度の調査研究
・予防・健康づくり、医療DXなどの取り組みについて、健保組合を後方支援
・共同事業(高額な医療費が発生した健保組合に補助する高額医療交付金交付事業など、健保組合間の助け合い事業)
・広報活動(広告、SNS、提言の発信など)
・加入者が制度を理解できるよう、分かりやすい情報提供



※出典:健康保険組合連合会

といった具合に、各健保組合ではできない制度全体の改善を進めることが、健保連の役割なのである。ちなみに『健保組合』は要するに “企業で働く従業員とその家族が加入する保険(大企業や中堅・中小企業)” のことで、主に自営業の人が加入するのが『国民健康保険』。さらに75歳以上の人が加入するのが『後期高齢者医療制度』となる。

医療保険制度ってややこしくて私もマジよく分かってないんだけど、さすがにコレは知っておこう!


──後期高齢者の大部分は医療費の自己負担1割、国民健康保険の加入者には高齢の方も多く含まれる……となると、会社勤めの人がその不足分を補填しているワケですか。

副会長「各制度がそれぞれ負担している部分もありますよ。ただ健康保険組合の保険料の4割は、高齢者への支援金に充てられていますね。これ、健保組合加入者にもご存知ない方が意外と多くて、我々ももっと大きな声でお伝えしなければと思っているところなんです」

──と、いうことはですよ。会社勤めの人がやや損をしているといいますか、他の制度を支えるために負担している割合が大きいですよね。この不公平感って、どうにかなりません?



副会長「そう感じられる方もおられるとは思います。ただ誰の身にも、怪我やご病気で高額医療が必要になる場面が起こり得ますでしょう? これは健保組合の特徴なんですが、付加給付のある健保組合では自己負担額が軽減されます。

生活習慣病の健診やがん検診、女性向けの検診、人間ドックなど、手厚いサポートが用意されている点は、健保組合加入者だけのメリットといえます。健保組合は “自分が困った時のために、普段から助け合おう” という共同事業ですから……あまり恩恵を受けてこなかったと感じる方にとっても、いざという時の心強い備えだと思いますよ」

──わかりみが深い。


・大好き! セルフメディケーション

世界有数の手厚さで知られる日本の医療保険制度の仕組みが少し分かったところで、私の大好きな「セルフメディケーション」についてもお話を伺っておこう。先ほど “日本人は気軽に病院にかかる人も多い” な件について触れたが、セルフメディケーションとは、自分自身の健康に責任を持ち、 “軽い不調は自分でケアする” という行動を指すワード。

個人的に、もし国民全員がセルフメディケーションを心がければ、医療費増大問題は秒で解決すると思っている。副会長! 私、軽いカゼとか筋肉痛程度なら市販薬で治してマス!


副会長「それは非常に良い心がけだと思います。もちろん無理やり病院を我慢する必要はないですが、『ちょっと早めに寝たら治る』『常備薬で足りる』など、だんだん分かってきますからね。自分の体の状態を知るのも、立派なセルフメディケーションですよ。この間なんて温泉へ行った知人が『これもセルフメディケーションだ』とか言い出しましてねぇ」

──ああ、たしかに!!!

副会長「広い意味でいうと散歩したり、お酒を控えたり、禁煙したり、自分の健康を維持するための行動全般がセルフメディケーションといえるんじゃないでしょうか。自分の健康をコントロールすることって、慣れると結構楽しいものですよ」

──日光を浴びて気分が良くなることで仕事が早く片付くとか、色々と相乗効果がありそうですね! 



──あと市販薬について、ぶっちゃけ「病院で処方してもらうほうが安い」みたいな話も耳にするじゃないですか? でも医療保険制度の財政を思えば、市販薬買おうよって話で……そういう人に対しては、どう伝えれば納得してもらえるでしょうか?

副会長「それはもう『日本の素晴らしい医療保険制度を後ろの世代につないであげましょうよ』ということだと思います。たしかに処方箋をもらったほうがコストが下がる場合もあるかもしれません。しかし一時的に損か得かという話は、あまり建設的ではないと思うんですよ」

──アメリカとかでは日本のような国民皆保険制度(全国民が医療保険制度に加入)がないので、ちょっと病院へ行っただけですごい金額請求されると聞きますね。

副会長「そうです。そこへきて日本は3割で頭打ち。本当に優しい制度なんです。この制度を自分の子供や後輩のために残すためのセルフメディケーション。誰にも褒めてもらえないかもしれないけども、自分なりに『いいことしたな』と思えるんじゃないですか

──ホンマそのとおりです。みんなが自発的にそうできる世の中になれば素敵!


・読者が少しビビる話

危機的状況にあると言わざるをえない日本の医療保険制度だが、この状況を打破するには、もはや個人の心がけとみんなの団結力が必要不可欠なのだ。米川副会長の澄んだ目を見つめながら、私は心からそう思った。

さて。いい感じに話がまとまったところであるが、「このまま状況が悪化し続け、医療保険制度が成り立たなくなったらどうなるのか?」という、できれば来てほしくない未来についてもお話を伺っておかねばならない。


──現行の医療保険制度が破綻しそうになったら、私たちどうなっちゃいます?

副会長「うん。そうなると保険料率を上げる必要がありますよね。現状は、健保組合によって違いますが、平均するとお給料の中の9.3%(2025年度予算時)が保険料。それを企業と折半するケースが多いです」

──結構高額ですね。

副会長「それが制度を維持するために12%、さらには15%……と上がっていく未来が考えられます。これは税金に近いようなものなので、例えばお給料が上がっていなかったとしても、保険料が下がれば手取りは増える。その逆もありますよ、ということですね。

我々としましては、企業や会社員の保険料負担だけを増やすのではなく、税金でもう少し負担してほしい、という思いはあります。例えば、人によっては『保険料を上げるより消費税を上げてよ』という意見もあります」

──たしかに消費税って全員が平等に払うものだから、そのほうが不公平感が減る気がします。セルフメディケーションだって実践する人はするけど、しない人もいるわけじゃないですか?

副会長「ただねぇ……税による負担のあり方については様々な議論があるから難しいところですよ。まぁ何にせよ、このままいくと何かしらの負担が増えることは間違いありません。

企業の皆さんにとっても、保険料はできるだけ上がらないことが望ましいので、最近は『健康経営』といって、従業員に体の不調が出ないように職場環境を整えたりだとか、労働環境を良くすることに取り組んでらっしゃるところが増えてきています」

──職場を良くすることもセルフメディケーションなワケですね。


・副会長からみんなにお願いだよ!

ナメられてはいけないと息巻いていたのが嘘のように、「明日から未来のために頑張ろう」という清々しい気持ちで私は取材を終えた。我が国の未来に不安がないといえば大嘘になるけれど、ビビっていたって始まらない。読者のみんな、各自できることから始めよう、今すぐに!

最後に今回お世話になった米川副会長に一言いただいて本記事を締めたいと思う。健保組合に加入している人もそうでない人も心して聞くように。


副会長「色々お話させていただきましたが、決して『次の世代のために病院へ行くな』ということを申し上げているわけではありません。国民1人ひとりが『次の世代のために健康であろう』と心がけることで、未来の日本も健康になると思っています。

あ、それから! 『マイナ保険証』に切り替えていただくことは医療機関の大幅な負担減につながり、皆さんの健康管理にも非常に有益です。また、マイナ保険証は厳重な安全対策が講じられていますので、ぜひ皆さんマイナ保険証をご活用ください

──つまりマイナ保険証に切り替えることもセルフメディケーションですか?

副会長「はい、そういうことにしときましょうか」

──今日はありがとうございました!


私がこうして記事を書き、セルフメディケーションに関する情報を読者にお届けしていることもまた、一種のセルフメディケーションなのかもしれない…………以上、健保連本部からお伝えしました。

参考リンク:「きいろをみどりへ」特設ページ
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

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