この季節の定番ドリンクと言えば、キンキンに冷えた生ビール……と言いたいところだが、多くの家庭では麦茶だろう。

毎日のように飲んでいるのに、どうやって作られているのかは意外と知らない。

そこで調べてみると、東京都内で麦茶を製造している工場はわずか2社しかないことが分かった。

今回は、そのうちの1社である小川産業さんにお願いしたところ、快く工場見学を受け入れていただけた。

まさか、あれがポップコーンの味がするとは……。

・工場見学の楽しみ方は準備から始まる

私は工場見学へ行く前、できるだけその製品を観察するようにしている。製造工程を知る前に味わっておくと、現場で見るポイントが増えるからだ。

今回も事前に同社の麦茶を購入。

カルディで見つけたので、「小川の麦茶 つぶまる®(税抜460円)」という煮出し用の商品を試してみることにした。

出来上がった麦茶は透明感のあるきれいな色合い。香ばしさの中にほんのり甘みがあり、後味はすっきりしている。濃いめに抽出すると、どこかアイスコーヒーのような風味も感じられた。

ますます、工場見学が楽しみになってきたぞ。



・ここにも、あの波が

さて、やってきたのは東京都江戸川区。最寄り駅は葛西駅で、千葉県との境も近いエリアだ。

工場に入ると、まず見せてもらったのが原料となる大麦である。

小川産業では、基本的に国産大麦を使用しており、現在は茨城県、栃木県、富山県産を中心に仕入れているそうだ。しかし、国産大麦の希少性は年々上がっているという。生産者の減少に加え、価格も上昇傾向。

最近の値上げラッシュを見るたびに「またか……」と思っていたが、こうした現場の話を聞くと事情も少し見えてくる。

なお、使用するのは1種類ではなく、2種類の大麦をブレンド。それぞれの特徴を生かしながら味を作り上げているそうだ。


・下町の工場ならではの美味しさのこだわり

続いて焙煎工程へ。

小川産業では2回に分けて焙煎を行っている。ここで興味深かったのが、小川産業が現在でも直火焙煎にこだわっていることだ。

一般的に大手メーカーでは、一度に大量の大麦を処理できる熱風焙煎(窯に熱風を送り込む方式)を採用しているケースが多いらしい。

一方、直火焙煎は手間がかかるものの、火力や空気の流れを細かく調整しやすい。焙煎中に発生する煙による苦味を抑えながら、大麦本来の自然な香りを引き出せるのだという。


まずは約250度で1分間。巨大な機械の中で大麦が回転しながら加熱されていく。



原理は石焼き芋とほぼ同じだという。砂と一緒に加熱することで、石窯から発生する遠赤外線が効率よく循環し、大麦の芯までムラなく熱を伝えられるそうだ。


窯から出てきた大麦は、まだ薄い茶色だが、すでに香ばしい香りが漂っている。


特別に試食させてもらうと……


ポッ、ポッ、ポップコーンみたい!


サクッとした食感で、味がポップコーンにかなり似ている。ビール工場で麦芽を試食したこともあるが、それとは全く違う。

このままおつまみとして出されても十分成立する味わいだ。



続いて2回目の焙煎。

今度は約180度で1分間加熱する。出てきた大麦は先ほどよりもさらに濃い茶色になっていた。

これだけ高温で焙煎していると、当然工場内は暑い。室温は外気温より10度ほど高いそうで、立っているだけでもじんわり汗がにじむ。

その熱気と香ばしい香り、そして昔ながらの下町工場らしい雰囲気も相まって、まるで夏そのものの中にいるような気分だった。


なんか急にポエムっぽくなってしまった……


ここで、焙煎前、1回目焙煎後、2回目焙煎後の大麦を並べて見せてもらった。比べてみると違いは一目瞭然。色だけでなく、焙煎後の大麦はふっくらと膨らんでいる。


ちなみに、焙煎には重油を使用しているそうだ。

近年はホルムズ海峡情勢などの影響でエネルギー価格が変動しているが、その影響は麦茶工場にも及んでいる。麦茶工場に来たつもりが、原料価格の高騰や国際情勢の影響を実感することになった。


・人と機械の融合

焙煎された大麦は包装工程へと進み、機械によって1分間に約50個というペースで製品化されていく。

次から次へと流れていく様子は、見ていて飽きないなぁ。



訪問時、生産していた製品は三角タイプ。担当者によると、四角いパックよりも中で麦が動きやすく、お湯の中でしっかり対流するため、効率よく抽出できるのだという。

その後の袋詰めや箱入れは、手作業で行われているとのこと。


・今年の麦茶はより一層美味しい

今回の工場見学で麦茶ができるまでの流れはよく分かった。

ただ、それ以上に印象に残ったのは、国産大麦の確保や燃料価格の上昇など、老舗麦茶工場もさまざまな課題に向き合っていることだった。普段は何気なく飲んでいる麦茶だが、今年の夏は少しだけ見方が変わりそうである。

なお、焙煎途中の大麦がポップコーンみたいにおいしかったことも、しばらく忘れられそうにない。

参考リンク:小川産業
執筆:夏野ふとん
Photo:RocketNews24.

▼工場では少しだけお得に製品も販売されている

▼案内してくださった小川産業の小川桂輔さん

▼麦茶ができるまで