最近渋谷駅周辺がうるさいと、SNSで話題になっている。なんでも「モスキート音」が鳴っていて、家族連れで出かけると子どもが不快感を示すとの投稿を見かけた。

モスキート音とはネズミなどの害獣対策として用いられるもので、17kHz(キロヘルツ)〜18kHz前後の高周波数の音を指す。蚊の羽音のようなキーンとする音であることからこの名で呼ばれており、一般的には若年層には聞こえるが中高年には聞こえないと言われている。

では、私(50代)には聞こえないはず。改めてその音をたしかめに行き、注意深く聞いてみたら、めちゃくちゃうるさいことに気づいた。前からこんなにうるさかったっけ? 渋谷って。

・モスキート音とは?

モスキート音については、東京駅に隣接する商業施設、JPタワーの地下の「KITTE」で確認したことがある。2014年に記事を執筆しており、その音がどんなものなのか、私(佐藤)は知っている。

聞いたことがないという人は、「リオネット補聴器」のサイトにアクセスすると良いだろう。年代別に聞き分けられる音のサンプルを提供しているので、聞き比べてみて頂きたい。

このサイトで確認すると、私は間違いなく50代の方までが聞こえるレベル(10000ヘルツ)までしか聞き取ることができない。


・モスキート音を調査

そもそも普段から渋谷は頻繁に利用しているので、そんな音がしていることにさえ気づかなかった。まあ、いつもはイヤホンで音楽を聞きながら移動しているので、聞こえないのもムリはないのだが。

さて、この日は銀座に用があり、帰りに銀座線で渋谷駅に降りた。意識的に高音を聞こうと耳を傾けると、ホームに降りたときから高音が聞こえる

とはいえ、そんな簡単に聞き取れるはずがないと思いつつも、やっぱり聞こえる気がするな。念のためスマホのレコーダー機能で音を録音しておいた。マイク等を持っていないので、録音状態はそれほど良いとは言えないけど、記録しておこう。

マークシティの方からJRのハチ公口の方に降りていくとさっきより音が大きくなった気がする


ハチ公前では全体的に音が鳴っている気がしてならない。気にしているからそう聞こえるのか、それとも本当に鳴っているのか、まだ確信が持てない

ここに来る前にあらかじめSNSの声を調べたところ、宮下パークの方と西武渋谷の方でモスキート音が聞こえるとの投稿を見かけた。

そこでさっそく宮下パークに来ると、たしかに聞こえてるな。ハチ公前は交差点ゆえに車の行き交う音、人の行き交う音がデカかったけど、ここは車が通らない。

雑音が少ないからはっきり聞こえる、キーンという高音。これは気のせいではなく鳴っている。絶え間なくずっとキーンと。


確認したところで、西武渋谷前まで行くと先ほどよりさらに音がデカい。集中し過ぎたせいなのか不快と感じるレベル。こんなに大きく高音が鳴ってたっけな? 気にならなかったのが不思議だ。意識するとちょっと耐えられないくらい


もう音が耳について離れなくなっている。もしかして、センター街で鳴ってない場所はないのか? どこまで行ったら聞こえなくなるのか、確かめてみることにした。

宇田川町交番前は聞こえる


ハンズ前を少し過ぎたところで一旦途切れた気がしたけど、Abema Towersの前でまた聞こえてきた


そこからさらに井の頭通りを進み、NHK放送センター前もまだ聞こえるな。


代々木体育館の出入り口付近もまだ聞こえている


このまま原宿まで続くかと思ったら、ふと聞こえなくなった。この辺で途切れないな。宣伝トラックが何台も止まっているこの辺りが、音の境なのかも。


どこからどこまでの範囲で音が鳴っているのかはわからないけど、とにかく音を避けたら原宿の手前まで来ることになってしまった。原宿は原宿で聞こえるのかもしれないけど、今回はここまででモスキート音調査を終了した。


・解析してわかったこと

聞いたのは気のせいだったか? それとも本当にモスキート音が鳴っていたのか? 確信が持てなかったゆえに途中何カ所かで録音しておいたわけだが、その音を生成AI「Gemini Pro」に聞かせてみたところ、銀座線渋谷駅ホーム・宮下パーク前・西武渋谷前のそれぞれでモスキート音と思われる音が出ているという解析結果だった。それぞれ「17086Hz」「17097Hz」「17915Hz」としている。

周波数帯と音量の関係をグラフに描かせてみると、たしかに17~18kHzに反応があり、さらに高い周波数の反応も確認できる。



とりわけ数値がすごかったのが西武渋谷前だ。20kHzの帯域が飛び抜けて高い。やはりあの界隈が異様にうるさかったのは気のせいではなかった。


Geminiの解析結果の裏付けをとるために、解析のできるオーディオ編集ソフト「Audacity」でも、音の周波数成分を視覚化する「スペクトログラム解析」をしたところ、さらに興味深いことがわかった。解析結果の画像を見比べてみよう。各画像に記した矢印はモスキート音の17kHzの帯域を示している。

銀座線ホームでは17kHzの音がうっすら出ており、真横に薄い帯を形成している。周囲の音に比べればごく小さく、意識しないと聞き取れないレベルであることがわかる。


続いて宮下パーク前は、15kHzと20kHzの間に薄い2本の線が真横に走っている。これは同じ高さの音が絶え間なく鳴り続けていることを示している。先ほどの銀座線ホームよりも、モスキート音をよりハッキリと聞き取ることができるだろう。


そして最後に西武渋谷前は、20kHzの帯域に真横にハッキリとした太い線が出現した。先ほどの2カ所とは比べ物にならないほど大きな音が鳴っていたことがわかる。

これは、西武渋谷の2つの建物の間を、音が反響し増幅して音が大きくなっている可能性がある。そのため他の場所よりも高音が大きくなってしまうのだろう。

SNS上の渋谷でモスキート音が聞こえるという意見は、間違いではなさそうだ。私のような中高年でも聞き分けられるとなると、若い人、ましてや子どもにはさらに大きく聞こえることも考えられる。

子どもを連れて周辺を歩く際、お子さんが不快感を示したら、中高年には聞き取りづらい音が聞こえていると理解してあげてほしい

余談だが、私がこの音を聞き分けられることをGeminiに伝えたら「佐藤さんの耳は若いです」と言われてちょっと嬉しかったぞ。


参考リンク:リオネット補聴器
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
Screenshot:GoogleMaps、Audacity