2025年12月16日から、なか卯がサーモン丼の販売を開始した。つまり現在の日本は松屋、すき家、なか卯から異なるサーモン丼が販売されている状態にある。

そこで気になるのが、三社のサーモンの違いだろう。松屋はレビューしたので、すき家となか卯のものも食べ、サーモンを比較してみることに。

・松屋

まずは松屋のサーモンを振り返ろう。とても脂が豊富で、公式HPにある “とろけるサーモン” の文句のとおりのものであると感じた。


食感と風味に脂の影響が強いため、好みが分かれるだろう。魚脂が好きな人は松屋最強となるかもしれないが、そうでない人にはヘヴィな領域にある。

ところで、脂が多いのはテイクアウトで不利に働く可能性が高いのではないかと、私は考えている

サーモンに限らず魚の油脂といえば、ドコサヘキサエン酸とエイコサペンタエン酸がとても持てはやされており、有名だと思う。これらは不飽和脂肪酸という。

炭素と炭素の間に二重結合を1つ以上持ち、その構造ゆえに光や熱などの影響から大気中の酸素との反応に繋がりやすい。自動酸化というが、端的に言うと傷みやすいのだ。

そして酸化すると、魚臭い臭気を発生させる。サーモンに限らず、脂のよく乗った魚肉が一瞬で傷む理由の一つである。

すでに食べた後だから判断できるが、松屋のサーモンは本当に脂ジュワジュワだった。テイクアウトに時間をかけたらすぐ生臭さが出てくる可能性を否定できない。

松屋をテイクアウトしなかったのは、最寄りの松屋まで30分もかかるからだ。ドア間の移動だけで30分は、なんやかんやで食べるまで1時間以上になりがちで、魚は傷み始めるリスクがある。

切り身のサイズ感は箸との対比で判断しよう。三社で唯一、炙られている点が大きな特徴だ。白っぽいのも加熱の影響だろうか。


・すき家

こちらが すき家のサーモン丼。並で950円。


切り身のサイズがよく揃っている。松屋と幅は同程度、少し短いが、厚みはあるように思う。


そのまま口に入れると、松屋と完全に異なるハリのある身。シュコシュコしている。さっぱり気味のサーモンだ

松屋と比べ身が締まり、脂が少ない。サラダに合いそう。松屋のサーモンは脂が醤油を弾いていたが、すき家はよく絡む。いいじゃないですか。

激しい好き嫌いが出にくそうな、一番多くの人に無難に受け入れられそうなサーモン。噛むと、内部からそれなりの脂を感じることができるのも上手い。いやしかし、驚くほど松屋と違うぞ。牛丼チェーン同士のサーモン丼がこんなに被らないことってあるんか。



・なか卯

イメージ的に、最もクオリティが高そうな印象のある なか卯。海鮮丼の経験値が他と比較にならない点が、そう思わせるのだろう。


切り身のサイズが興味深い。松屋・すき家はどちらも統一感があった。しかし なか卯はサイズが定まっていない。他の二社と比べ、圧倒的に大きい切り身と、圧倒的に小さい切り身がどちらも入っている。


だが、なか卯の平均的なサイズの切り身は、すき家の切り身と同じようなサイズになると思われる。なか卯は重さで管理しているのかもしれない。

また、なか卯のサーモンは “漬け” だ。公式HPには “なか卯特製のタレに漬け込んだ” とある。2種類の醤油に鰹と昆布出汁だそう。旨味の相乗効果を狙ってそうな調合。漬けっぽい色をしている。


そしてなか卯の平均的切り身を箸でつまんだ際のビジュアルは、松屋の切り身を箸で持ちあげた時と大差ない。サイズは三社とも似たようなものだと考えていいのではなかろうか。


つまりサイズは似たり寄ったりで、炙りの松屋、裸のすき家、漬けのなか卯というわけか。見事に三者三様だったな。

食べてみると、なか卯は松屋に匹敵するこってり&とろみタイプなもよう。しかし脂の味と臭いは、身の舌ざわりから想定されるオイリー感より軽減されているように思う。これは漬けの影響ではないか?

また先に すき家のものを食べた影響で経過時間的に不利なはずだが、全く生臭くない。この耐久力も漬けのおかげであろう。

ということで、好奇心から全制覇した三社のサーモン。経験が光っているなと感じたのは、なか卯だ

脂の乗ったサーモンのクオリティは繊細だ。しかし漬けにすれば、食べた時に客が生臭いと感じてしまう可能性を、確実に下げることができる。

店が想定する品質を提供できる可能性が一番高いスタイルを選択している。世間的な味の評価も、おおむね一般的な漬けサーモン相応のものになるのではなかろうか。



逆に感想にブレが出やすいのは、松屋ではないかなと思う。松屋は何でも濃厚でこってり感が強めだ。脂こってりトロトロ炙りサーモンは、顧客の需要にあってそう。

理想的な状態のものを、松屋ファンが店舗で食べた場合の味の評価は、おおむね高いのではないかと思う。しかし全国にはテイクアウト派もいるだろう。

その中には食べるまでに酸化を進行させてしまう人も出ると思われ、生臭いという感想が一定数発生すると私は予想する。

そして裸で勝負した すき家。ハリがあるさっぱりした切り身が個体差でなく、意図したものであれば、これも一つの正解だろう。最もピュアなサーモンらしいサーモンは、すき家だったと思う。

海鮮丼の類でどこまで差が出るものか疑問だったが、想定を超えた全く異なる仕上がりには驚かされた。同時期に同じような商品を出して、ちゃんと全部違う。うまいことできてます。

参考リンク:松屋すき家なか卯
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.

▼私は すき家の小袋入りきざみのりが好きだ。食べる直前まで海苔がドライであり続ける、最も好感度が高いスタイル。