2019年に公開され世界的なムーブメントを巻き起こした映画『ジョーカー』。貧しいながらも心優しき主人公・アーサーが、絶望に次ぐ絶望を経て『ジョーカー』へと変貌する様は観るに堪えない息苦しさがあった。

その『ジョーカー』の再来と評判なのが、2025年12月19日に公開される映画『ボディビルダー』である。興味があって一足先に鑑賞させてもらったところ、ちょっと胸が苦しくて観ていられない作品であった……。

・あらすじ

何はともあれまずは映画『ボディビルダー』のあらすじをご覧いただきたい。


「アメリカの片田舎で病気の祖父を介護しながら暮らす青年キリアン・マドックス。

低収入で友人も恋人もおらず孤独な毎日を送っているが、彼には揺るぎない夢があった。それは一流ボディビルダーになり、その鍛え上げた肉体で雑誌の表紙を飾ること。

すべてを捧げ過酷なトレーニングと食事制限に打ち込むが、身体は悲鳴をあげ、社会の不条理と孤立が彼の精神を蝕んでいく。そしてある事件を機に、純粋な夢は狂気へと変貌する……」


キリアンを演じるのは「アントマン&ワスプ:クアントマニア」で征服者カーンを演じたジョナサン・メジャース。カーンは諸事情で降板となってしまったが、本作では怪演と呼ぶにふさわしい演技を披露している。


・観るに堪えない

さて『ボディビルダー』と『ジョーカー』との共通点は、主人公がいずれも孤独であること。そして主人公がある意味での “純粋さ” を持ち合わせていることだろう。

ボディビルダーとしてそれなりの成績を収めているキリアンは、それこそ全てを捧げてボディビルに打ち込んでいる。純粋さゆえ、ステロイド(筋肉増強剤)にまで手を出しながら──。

とはいえキリアン自体に悪気は無く、当然ながら悪意も無い。彼からすれば「成功への代償」を払っているに過ぎず、ただ必死に夢へと突き進んでいるだけなのである。


……だからこそ観ていられなかった。


今回は試写会ではなくインターネット配信で『ボディビルダー』を視聴させてもらったのだが、正直私は上映中に何度も一時停止ボタンを押していた。胸が苦しくて観ていられなかったからだ。



・狂気の果て

先述のようにキリアンはただただ純粋なだけ。……が、やはり孤独から来る “空気の読めなさ” が痛々しすぎる! 特に気になるあの娘とのデートシーンはキツすぎて観ていられなかった。

その他「風俗嬢との一夜」や「暴行犯とファミレスで再会」「憧れのボディビルダーとの初対面」などなど、悪意は無くとも空回りし続けるキリアン。やがて彼は狂気に支配されてしまうのであった──。

「ジョーカー」のアーサーに負けず劣らず、キリアンも悲しいほどに空回りし続ける。空回りの先に狂気があり、さらにその果てには……? 気になる方はぜひ劇場で “狂気の果て” を見届けて欲しい。

いずれにせよ映画『ボディビルダー』は、ジョーカーの再来と評判になるのも頷ける力作であった。何度も言うがキリアンに悪意は無い……けど落ち度は結構あるんだよなぁ。映画『ボディビルダー』は2025年12月19日に公開だ。

参考リンク:映画『ボディビルダー』公式サイト
執筆:P.K.サンジュン
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