私は飲食チェーン店が大好きである。カウンター越しに大将と会話……的な人情味には欠けるかもしれないが、システマチックに放っておいてくれる方が気楽でいい。過剰なサービスは必要ない、ただ無難であって欲しい。

そういう意味で飲食チェーン店は「上質な居心地の良さ」を感じない一方で、妙な居心地の悪さとも無縁なハズ。だがしかし、つい先日私が訪れた店は “地獄の空気” に支配されていたのである。

・誰もが知るお店

先に断っておくと、その飲食店の名前は公表しない。誰もが知る飲食チェーン店であり、メインはお一人様専用のお店とだけお伝えしておこう。

さて、私がその店に立ち寄ったのは土曜の13時頃。かなり大きな駅から出てすぐのところにその店を発見した私は「まあここでいいか」とあまり深く考えずに入店した。

ランチタイムだからか30くらいはありそうな座席はほぼ満席で、私は運良く1つだけ空いていた席にすべり込んだ。適当に注文を済ませたところで、ようやく私は異様な店の雰囲気に気付いたのである。

・登場人物

で、ここで当日お店にいたスタッフ5名を説明しておきたい。


キッチン男性A ※50代くらいの日本人男性。おそらく店長クラス
・キッチン男性B ※20代くらいの外国人男性。
・ホール女性C ※60~70代くらいの日本人女性。レジも兼任。
・ホール女性D ※40代くらいの外国人女性。顔立ちは中東系。
ホール女性E ※20代くらいの外国人女性。顔立ちはアジア系。


・オーダーミス

どうやらキッチンはフル回転のようで、次々とカウンター越しに出来上がった料理が積まれていく。……が、その料理をホールのお客さんに届けるたびに「注文したのと違う」というやり取りが発生していたのだ。

注文を取っていたのは女性Eで、おそらく日本語のスキルがさほど高くないのだろう。私が確認できただけで料理を届けに行っては持ち帰ること4連続。そのたびに料理がキッチンに吸い込まれては作り直しになっていた。

どういうわけか、ベテラン風の女性Dはヘルプに回らず、淡々と自分の持ち場をこなすだけ。ご高齢の女性Cもレジで手一杯なのかサポートに回る様子がない。要するに全員がキャパオーバーなのだ。

その間、お店にはドンドン人が入って来るが回転は極めて悪い。それはそう、注文した料理が来ていないのだから。幸いにも私はメニュー表を見せて注文したためストレートに料理が来たが、店は静かに大混乱を巻き起こしていた。

・大丈夫なのか?

率直に私はこう思った。「社会問題の縮図だな」と──。人手不足が叫ばれて久しく、昔と比べて高齢者が働くことも珍しいことではなくなった。加えてリーズナブルな店に足を運びがちな私のような庶民たち。

「そりゃ電子パネル注文が主流になるわけだ」とも思ったが、それはいい。混乱の直接的な原因は女性Eだが、彼女を責める気には全くならなかった。なにせ彼女の日本語スキルで良しとしたのは、雇い主である日本人店長なのである。

またこの地獄の空気の中で、唯一救われたのは店長が少しも焦っても無ければ怒った素振りも見せなかったこと。私がオーダーミス4連発をかまされたら同じ対応ができる自信はない。

私が料理を食べ終え会計を済ませようとしたところ、次は会計が大渋滞。持ち帰りの4人組とかち合った関係で「会計5分待ち」込みで、こんなにオペレーションが悪い有名飲食チェーン店は初めてだったと断言できる。

とはいえ、上記の話は全てリアルであり実際に現場で起きていたこと。ただランチを済ませるつもりが、結果的に「なんか……未来は大丈夫?」と思わずにいられない土曜の昼下がりであった。

執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.