こんなに長く追い続けることになるとは思っていなかった。何の話かと言えば、ウェブ限定の「パイの実」の話である。「余計に何の話かわからなくなった」と言われそうなので、順を追って説明しよう。

筆者とウェブ限定の「パイの実」の付き合いは、6年前の2019年、「パイの実」からチョコを抜いた特別仕様の「大きなパイのみ」がロッテの通販サイトに登場したことに端を発する。

下って2024年には、「パイのみ」にコンソメ味やタコ焼き味などの味付けパウダーが付属した「シャカシャカパイのみ」がオンラインで発売され、筆者はこれらの商品を記事に取り上げてきた。

そしてこのたび2025年11月11日、新たなウェブ限定の「パイの実」が姿を現した。その名も「おおきなパイの実<コーンポタージュ>」である。


公式サイトによれば、コーンポタージュ風味のチョコが詰まった同商品は、「食事」と「間食」がボーダーレス化しつつある昨今の食シーンに対応した「新しいパイの実」だという。

そもそも上で書いたように、ウェブ限定の「パイの実」の歴史は、「単なる甘いチョコ菓子からの脱却」の歴史でもある。始めは完全にチョコを切り捨てていたが、「食事」系のパウダーの導入を経て、今回ついにコーンポタージュ風味のチョコを引っさげてきた。

この何とも独特な激動ぶりは、ウェブ限定の「パイの実」ならではである。これだからウェブ限定の「パイの実」を追うのはやめられない。今どれだけの共感を得られているか全く定かでないが、ともあれ筆者は「おおきなパイの実<コーンポタージュ>」を購入することにした。

歴史を踏まえずとも、通常とは別機軸の「パイの実」というだけで希少価値はある。それが証拠に、「おおきなパイの実<コーンポタージュ>」は過去のウェブ限定の「パイの実」と同じく、発売から早々に売り切れていた。

筆者は何とか入手が叶ったので実物を開封したところ、中には個包装のパッケージが6個ほど入っていた。ちなみに価格は税込907円だった。

再び公式サイトを引用すると、本商品は通常の「パイの実」の約3倍の重量と、約2倍の128層のパイ生地を有しているとのことである。

実際、パッケージを剥いて出てきたパイは大ぶりで、横に並べてみた通常のパイの実との差は歴然であった。果たして食べ心地の違いはいかなるものか。


確かめるべく口に含むと、まず感じたのは軽やかで豊かな生地の歯触りだ。「確かに64層増えているな」と断言することはできないものの、通常のパイの実より明らかに食感が重層的である。柔らかく小気味良く生地が崩れ、歯が深く沈んだのちにチョコと出会う。

そしてそのチョコもまた、宣伝文句と何ら違わぬ仕上がりであった。コーンポタージュらしい旨味とコクを口内に振りまきつつ、一方でチョコの甘味も抜かりなく備えている。揺らめくような味覚のグラデーションとともに、舌の上でしっとりと溶けていく。

これほど「食事」とも「間食」ともつかぬものを食べたのは初めてである。絶妙にどちらでもあるし、巧妙にどちらでもない。どうやったらこの恐るべき正確さで「食事」と「間食」のあいだを狙い澄まして撃ち抜くことができるのかと感心するほかなかった。

おそらく、いや当然ながら、一朝一夕で成り立つ技術ではあるまい。人々が安穏と暮らしているあいだ、ロッテは試行錯誤という名の弾丸を「食事」と「間食」のあいだ目がけて延々打ち続けていたわけである。世界はあまりに広い。

「新しいパイの実」と銘打ったのにも、もはや異論はない。この程良いボリュームとハイレベルな食べ心地をもってすれば、「食事」を軽く快く済ませることも、「軽食」を存分に堪能することも容易だろう。


惜しむらくは、そんな「新しいパイの実」がいつ人々の食シーンに実地投入されるかについては、まだ何とも言えないという点である。いずれその機会がやってきた際には、ぜひとも多くの方々にロッテの新境地を体験してもらいたい。

あるいはこの先、さらなる進化を拝めることもあるかもしれない。ここまで追い続けてきた筆者としては、すでに覚悟は決まっている。紡がれゆくウェブ限定の「パイの実」の歴史が、いかなる結実を迎えるのか、しかと見届ける所存である。

参考リンク:ロッテ ニュースリリース
執筆:西本大紀
Photo:RocketNews24.