いやぁ、これは本当に美味い。銘菓というものを、他人に紹介したいテンションになったのは生まれて初めてだ

出張の多い仕事だと、何らかの経緯で地方の銘菓を食べる機会が少なくない。どれも全てウマいのだが、それについて自発的に感想文を書いて他人に紹介するほどかというと、そこまでじゃないのがいつもの感じ。

そのラインをぶっちぎってきたのが、先日の福井取材で帰り際に頂いた、はや川の「羽二重くるみ」だ。これは特筆に値するお菓子っすわ。マジでステージが違う。

・銘菓

ネットのニュースで “そこまでじゃない” と書くと、 “不味い” と読みとられる感があるので断っておくが、そういうことじゃない。

例えば広島の「もみじ饅頭」だ。「もみじ饅頭」はいつ食っても美味い。貰っても嬉しいし、広島に行ったら自分でも往々にして買うし、東京に持ち帰って人にあげたりもする。

しかしそれは「もみじ饅頭」に、飛びぬけてスペシャルな何かがあるからではない。ぶっちゃけ、味は東京土産の「人形焼」と同じ。いや、それ以前にカステラ生地で餡子を包んだもの自体が、日本全国であまりにもコモンだろう

絶対に美味い組み合わせだが、似たようなものがどこにでもあり、もはや味わいに物珍しい点が無い。ゆえに今さら純粋な食レポの対象にしようとは思わないのだ。

在京のメディアでネタにするなら、メーカーごとの違いを細かく調べた記事とか、「もみじ饅頭」vs「人形焼」みたいな、味の違いを比較するていで広島民と都民それぞれのプライドとか愛郷心とかを刺激してPVを稼ごうみたいな意図を隠した記事とか、そういう小細工を企画段階で提示しないと厳しそう。

それでも東京から来た人間が広島で「もみじ饅頭」を買うのは、「もみじ饅頭」が無難にうまくて、広島土産としての全国的な認知を有しているからだ。

これは「もみじ饅頭」に限った話ではなく、銘菓というのは、だいたいがそういうものだろう


・スペシャル

ゆえに単体で語られるには、スペシャルな存在でなければならないのだ。そして先日初めて食った はや川の「羽二重くるみ」は、間違いなくスペシャルな存在だった。

これは先日の福井取材の帰りに、良ければどうぞとお土産で頂いたものだ。値段は……貰った土産の値段を調べるのは野暮じゃんね。皆さん自分で公式HPからチェックしてくれ。


さて、貰った時は、よくある求肥系の銘菓だと認識していた。なぜなら羽二重餅は福井の名物。その正体は甘い求肥なのだ。

こいつは名前的にクルミフレーバーだろう。そして今は、ちょっと小腹が空いてきた午前3時。なんとなく開封してしまったわけですよ。

おや? 思っていたのと違うぞ……。マジでただの羽二重餅だと思っていたのだが、「羽二重くるみ」には焼き色のついた外皮がある。そして漂うバターの香り。


横から見ると、餅と生地が層を成している。似たようなものは見たことが無い。


生地はパイのような感じの質感。しかし薄いので、サクッとまではいかず、サパッて感じ。そんな生地を噛むと内側から押し出されてくるのが、福井お得意の羽二重餅(もっちりした甘い求肥)。

これは上手いことやったものだ! 特にこの生地だ。薄さからは予測できないほどにバターが濃厚で、しっとりしている。公式HPを見るにシュー生地だそう。

羽二重餅内部に練り込まれたクルミも、食感と風味の両面でいい仕事をしている。これはガチに、唯一無二な銘菓だ。他の何とも全ての面で被らない。その上で、単に奇抜なのではなく、ちゃんと美味い。

これほどの銘菓に出会えることは、なかなかないと思う。もう福井土産は全部これで良いんじゃないか? 銘菓ってのは基本的にその土地の人間は食べないものだが、こいつに関しては福井民も食べてそう。そういうステージにあるクオリティ。

私は埼玉銘菓を1度も自腹で食べたことのない、そして食べる気になったこともない埼玉県民だが、福井民だったら「羽二重くるみ」は定期的に自分で買って食べるもの。

参考リンク:はや川
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.