毎年この時期になると、とても憂鬱な気分になる。なぜなら──。俺たちの「かつや」が、『秋の海鮮フライ定食』を発売するからだ。この際だからハッキリ言わせてもらう。マジで書くことがない……!

生粋の “かつや者” として、「かつや」の期間限定メニューはすべて記事化してきた私(あひるねこ)であるが、毎年秋に発売される海鮮フライ定食だけは本当にお手上げだ。あまりにも普通すぎてネタにしようがないのである。

そのため、去年は完全スルーを決め込んでしまった……のだが。

・迷惑な秋の風物詩

神をも恐れぬ驚異のわんぱくスピリットで、常にとんかつ専門店の限界を更新してきた俺たちの「かつや」。しかし、毎年恒例の海鮮フライ定食だけは例外としか言いようがない。


下の画像は2022年10月に発売された『秋の海鮮フライ定食』だ。よ~くご覧あれ。


そう、地球が吹っ飛ぶほどに普通である。これを食べて、何かオモロいことを書けと……? もはや営業妨害の領域。手を出したところで爆死の予感しかしないぞ。「かつや」は私に灰になれというのか。


──ところが2025年9月12日、性懲りもなくヤツが帰ってきてしまった。さあ、すべての私よ絶望せよ。期間限定『秋の海鮮フライ定食』、装いも新たに販売開始である……!


「かつや」曰く、今年は4種の揚げ物が一度に味わえるらしいが、そんなん知らん。「とんかつ和幸」でやれ。

見るからにフツー極まりないため、やはり今年もスルーでいいか……と思ったその時! 気になる文字を発見した。


秋の海鮮フライ……丼?

・定食以外もある

そう、定食(税込1089円)とは別に丼(税込979円)も用意されていたのだ! 何だろう……いい意味で嫌な予感がするな。というワケですぐさま注文。やって来たのがこちらである。


…………。


いつもの「かつや」やないか!

・まさかの通常営業

そこにあったのは、複数の揚げ物をただただブチ込んだだけの思考停止丼であった。定食のメニュー写真から漂う、お行儀のいい上品なとんかつ屋さん感などは皆無。とにかく野郎度がハンパではない。


なのにどうしてだろう……。地元に帰って来たかのような安心感で胸がいっぱいになるのは。そうそう、これだよ! この何の思想も感じない揚げ物のごった煮こそ、俺たちの「かつや」なんだよ!!

・戦力分析

メインは何と言ってもカキフライだ。デカいのが2個のっているので食べ応え満点。衣は厚めだが、「かつや」らしくサクサクなのであまり気にならないだろう。

しかも、横に添えられているのはマヨネーズである。そこはタルタルじゃねーんかい! 無骨すぎるだろ!!


ソースかと思いきや、かかっているのは牡蠣醤油を使用した甘辛い特製タレ。どうやら定食とは仕様が違うらしい。で、これがまた丼らしく、ご飯加速装置の役割を果たしまくっている。要はめちゃウマだ。



さらにその下にはエビフライと……


アジフライならぬ、さばフライの姿が。


さばは昨年12月、味噌カツとして覆面レスラー的なデビューを果たしているが、「お前さばだろ」と言われたのか、今回はマスクを外しての再登場である。


さばの味わいはそのままに、肉厚で食べ応えのあるフライだ。カキとエビの陰に隠れて申し訳なさそうにしているが、十分メインイベントを務められる実力の持ち主と感じた。もっと自信持っていいぞ!


が!!


最後の最後に意味不明なキャラが現れてしまう。カキフライ、エビフライ、さばフライと来て……まさかの鶏のから揚げである。いや海鮮じゃねェェェェェェエエエエ! 会場間違えてるだろコイツ!!


しかも……え?


から揚げ……なのか?


・謎のフォルム

私の丼がたまたま そうだっただけかもしれないが、こんな薄くて細長いから揚げは初めて見た気がする。イカフライにでも擬態しているつもりだろうか? 仮装大賞でやれ。


自分を海鮮だと思い込んでいる養鶏の登場に笑いを禁じ得ないが、一口食べてみると、普通にニンニクが効いた “ザ・から揚げ” な味わいでさらに笑うしかない。そこは譲らないのかよ。



・丼を選ぶ理由

これがもし定食だったら、ミックスカツ的なものとして軽く流していただろうが、丼だとそうはいかない。丼という限られたフィールドから立ち上る、むせ返るようなカオスを全身に浴び、そしてそのカオスに全力でツッコんでこそ「かつや」の限定メニューではないか。


私は勘違いをしていた。『秋の海鮮フライ定食』は、定食で頼んではいけなかったのだ。「かつや」の真髄はむしろ丼にこそあり、丼を注文することで初めて「かつや」の本質の一端に触れることができるのである。


もちろんどちらを選ぶかは自由だが、「かつや」とは何なのか? なぜ「かつや」だけがちょっと……いや、だいぶ頭悪く見えるのか? それが知りたければ丼を頼むといいだろう。答えは自ずと見えてくるはずだ。

参考リンク:かつや
執筆:エクストリームかつや者・あひるねこ
Photo:RocketNews24.

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