そんな考えではキミはホストになれない【実録】ナンバーワンホストが私に教えてくれたビジネスと人生の勝負論(4ページ目)※1ページ目はこちら

・ホストと私とボクシングと

彼らとの「その後」についても書いておこう。


地下格闘技チャンピオン、兼ホストクラブ支配人の「Y」は、ホストを引退した。総合格闘技に挑戦するという話だったが、まだ実現していない。だが、トレーニングは続けており、あいかわらずムキムキである。


どうしてムキムキだと知っているのかというと、ホスト引退後もやりとりが続いているからだ。当初、彼は営業のLINEをばしばし送ってきた。しかし私がこれ幸いとパンチやディフェンスのコツを質問すると、彼は律義に答え続けてくれた。そうこうするうちに、私を客にすることを諦めたのだろう。それでも連絡を取り続け、ボクシングを教えてくれる親切なお兄さんになった。ホスト引退後もビデオ通話などでレクチャーは続き、いまでは私の師匠になった。



ナンバーワンの「S」とは、何度か一緒にボクシングジムに通った。最初にジムに現れた彼は、「俺はボクシングを習ったことある」「毎日ジョギングしているので、体力には問題ないはず」と自信をにじませていた。


だが、プログラム開始5分で彼は立ち尽くすことになる。トレーニングの激しい動きについていけなかったのだ。白目をむいてぼうぜんとしつつ「正直、舐めてた……」と、ポツンとつぶやいた。


ホストは「男らしさ」が売りの商売である。なのに、痩せて年くったBBA(私)がヘラヘラとパンチを繰り出している横でついていけない自分がよほど悔しかったのだろう。「ホストは負けず嫌いだから」という言葉を残し、私そっちのけで1人でジムに通いだす。顧客を沼にはめるために始めたボクシングで、沼にはまるナンバーワン。


しばらくしてから、また一緒にジムに行こう、との誘いがあった。何度か通ったところで、一通りついていける自信がついたのだろう。だが、彼にとって不幸だったのは、選んだプログラムのインストラクターが、ジムで1番ホスピタリティのあるブラジルミックスの体力おばけだったことだ。


私と話しているSを見て友達だと判断したブラジルミックスは、「歓待しよう」と思ったらしい。ジムでの歓待とは「激しく追い込む」「限界まで煽(あお)る」のことである。陽気な南米スマイルで熱烈に歓待するブラジルミックスの前に、ナンバーワンは撃沈した。おかげで私は、ナンバーワンホストが汗だくではあはあする姿を無課金で堪能させてもらった。


その後、Sは自然とフェードアウトしていった。どこかの段階で私は顧客にならないと判断したのだろう。時間や金銭(ジムの会費など)面でそこそこの投資をしたはずだが、損切りの判断タイミングも鮮やかであった。


本稿を書くに当たり、彼が務める店舗のWebサイトを見たところ、1番目に写真が載っていた。ホスト規制法で順位や売り上げを表記できなくなったが、あいかわらずトップに君臨しているようだ。



最後に、本稿をお読みの女性読者の皆さんへ。ここまで書いてきて何だが、安易な気持ちでホストクラブに行かないでほしい。理由は、彼らにとってホストは「生業(なりわい)」であるからだ。冷やかしや面白半分で接近して、彼らの時間やお金を無駄に使わせてはいけない。


また、全ての人が私と同じような体験ができるとは限らない。私はたまたま時間や金銭に余裕のある「売れっ子」と接触できたので、持ち出しなしで(申し訳ない!)貴重な体験をさせてもらったが、最初にホストクラブに同行した友人2人(若くて可愛い)は、また違った「その後」になったことを、付け加えておきたい。


【完】


執筆:謎のプロライター
画像:Google「Gemini」


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