そんな考えではキミはホストになれない【実録】ナンバーワンホストが私に教えてくれたビジネスと人生の勝負論(2ページ目)※1ページ目はこちら

・元実業団の体育会系ホスト 支配人「Y」

1人目のホスト「Y」は、老舗有名店で「支配人」を務める男であった。地下格闘技のチャンピオンでもある彼は、初回の席でボクシングのフォームを、熱心、かつ的確に教えてくれたことで印象に残っていた。


甘いマスク、仕立ての良いスーツの上からでも分かるマッチョな身体、子どものころから人気者でやってきた人だけが醸し出すとびっきりピカピカの雰囲気をまとう彼は、個人の成果で勝負する「パフォーマンス型」であると思われた。


その読みは「当たり」だった。バッティングセンターでガンガン打つ姿を見せつける、肉弾戦を提案する(いわゆる「枕営業」というやつだ)、愛犬を召喚する、などの手法で次々とアピールし、私(顧客候補)を自分のファンに育てようとした。


店舗NO.2である支配人にまで上り詰めた男である。この戦術はいままで一定の効果があったのだろう。だが、肉体派である彼は、必殺技「枕」を断られたことにより、ペースを乱していく。


ここからは、私のターンだ。取材スキルをフル活用して、彼をさぐっていく。生い立ち、原体験、ホスト転職へのきっかけ、そのときに思っていたことと現実とのギャップ、ホストとしての歩み、トラブル、そのときにどう乗り越え何を学んだのか、仕事で大切にしていること、志──さながらキャリアインタビューである。



興味深かったのは、パフォーマンス型だと思われた彼が、実はマネジメントラインも担っていたことである。当時はどこのホストクラブでも、ホストに肩書が付いていた。代表、社長、部長、課長などの肩書はわれわれの世界のそれとは異なる。あくまでも売り上げの順位であり、実在する部や課があるわけではない。


彼の「支配人」という肩書もそれと同じようなものだろうと思った。しかも、そのお店には支配人が3人もいるという。「3人がかりで何を支配するのか?」と問うた私への彼の答えによると、どうやら「ピープルマネジメント」が支配人の主な役割であるようだった。


複数人のメンバーを配下に持ち、全員への「おはようLINE」から始まる勤怠管理、売り上げが伸び悩むメンバーのモチベーション管理、新人の教育、定着促進などを担っている。支配人になるためには、売り上げ以外に、チーム運営へのコミット、他者からの推薦が必要とのことだ。


新人が定着しないことが目下の悩み。「ホストは新人時代が一番つらいからね。そのつらい時期を乗り越えられるよう、チーム全体でサポートするんだ」とYは語った。


一匹狼スタイルのホストもいるが、Yはそれには共感しない。あくまでもチーム全体での勝利を目指す。実業団の選手でもあった彼は、体育会系らしいチーミングを行っていた。


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執筆:謎のプロライター
画像:Google「Gemini」