突然だが、皆さんは立ち食いそばの歴史をご存知だろうか? 東京を歩くと探すまでもない立ち食いそば。元々は江戸の街角にあった屋台そばが起こりと言われている。だから、分布が東京に偏っているのかもしれない。

全国的に立ち食いそば屋を探してきた私(中澤)の実感としては、東京に続くのは神奈川だけど、その神奈川でさえ駅そばではない街の立ち食いそばとなると結構珍しい存在だ。そんな中、千葉県蘇我のロードサイドに常連客を集める立ち食いそば屋がある

・蘇我とは

蘇我と言ってもピンと来ない人も多いかもしれない。東京湾の右岸、千葉市と市原市の間にあるのが蘇我だ。地図で見ると、海沿いに広がるプレイスポット・ハーバーシティ蘇我がシンボリックである。

と、こう言うと、盛り場のようにも聞こえるが、行ってみると最寄り駅の京成千葉寺駅前はビビるくらいなんにもなかった。田舎ではないけど、どこかひなびている。殺風景とはこのことだ。

町を歩いてみると、実際の印象は、前述のハーバーシティ蘇我よりも町を南北に貫く道の存在感が強い。海沿いを走る国道と並行に住宅街を真っすぐな道が貫いている。蘇我とは道と見つけたり。そんな末広街道のロードサイドに、今回の目的地である『味元』が佇んでいた。


・ブルージーな外観

色褪せた「立喰いそば・うどん」の看板には、まさしく、ここに佇んできたという説得力を感じた。軒の上に設置されたネオンなんて、カバーが割れてるとかのレベルじゃなく丸ごと無くなっている。ブルージーだ。

日に焼けたような暖簾をくぐると目の前にカウンターがある。店の中はほぼ厨房で、壁に沿ってカウンター席が続くまごうことなき立ち食いそば屋だ。

メニューには、そば、うどん、カレーライス、おにぎり、牛丼などが並ぶ。このラインナップに牛丼(並税込750円)が入ってくるのは立ち食いそば屋としては珍しいけど、さらに個人的にこの店の色を感じるのが裏メニュー的に注文できる「牛&カレー(税込850円)」だ

・気楽な贅沢

カレーに牛丼のアタマがプラスされたこのメニュー。始まりはお客さんの要望だったようで、現在は裏の人気メニューとなっているそうだ。煮詰められたとろとろのカレーとしらたき入りの牛丼のアタマのコンビネーションが染み入るような味。

店主の長谷川さんによると、対応できそうな簡単なものなら、基本要望には応えていくスタイルらしい。例えば「玉子トッピングで卵黄だけにしてください」とかも対応してくれるらしいのでやってみてもらった。くぅ~、家でやる贅沢みたいなことしてくれるじゃないの


・店主の聞いた「味の元」

券売機じゃなく口頭注文だからこそのスタイルはコミュニケーションを大切にしているのが伝わってくる。長谷川さんによると、話すことを目的に来店するお客さんもいるのだとか。確かに、私がいる間も世間話がてら注文するお客さんが何人もいた。その雰囲気にはどこか温かみを感じずにはいられない。

長谷川さん「元は、私もこのお店を客として利用してたんですね。24時間営業で、千葉市からの帰り道に明かりがともっているので、この辺りの人には当時から結構有名なお店だったと思います。夜遊びした帰りに寄ったりする人も多かったでしょうね。

その安心感は大切にしたくて。私は結婚もしてないし子供もいないので、この店に集まる人が家族みたいなものなので」

──おっかさ~ん! 牛&カレーの味が持つ懐かしさもさることながら、店自体が持つ温かみに説明がついたような気がした長谷川さんの話。ちなみに、ネオンのカバーは4年くらい前の台風で飛んでいったらしい

ウマイ・早い・安いとはまた違う、されど味のある立ち食いそば屋がそこにあった。これぞブルース。ごちそうさまでした!

・今回紹介した店舗の情報

店名 味元 末広店
住所 千葉県千葉市中央区末広4-24-1
営業時間 24時間営業
定休日 無休

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼食材は基本的に千葉県産

▼味のあるお店でした