本格的にAIが使われるようになった頃、“詐欺などのネット犯罪にも使われるようになる” と言われてきたが、日々その界隈をチェックしている私的には、「まだ人力だな」という感があった。ところが先日、ついに本格的にAIを駆使した “なりすまし” が登場した。
ターゲットは、あろうことか日本のトップ石破茂首相。出現場所は毎度おなじみFacebookで、「日テレNEWS24」の速報を模した動画にて、石破首相が国民に対し、自らの言葉で何かを訴えかけているのだ。しかし動画をよ〜く見ると、何かがおかしい。
・ところどころ日本語がおかしい
問題のFacebook広告には、「今すぐ給付金を申請しましょう!」「何百万人もが対象です! 国民のわずか3%しかこのことを知りません」と書いてあり、自動的に石破首相の演説動画が始まる。いちおう文字起こしをしておくと、
AI石破茂「こんにちは日本の皆さん。首相としての私の目標はすべての日本国民に水中の恩恵(?)を届けることです。財務大臣とともに、国民の利益を考えた税金配当法案を測定しました。ここで紹介するのがインミディアムファーストエックス……………………です!
30万円の投資で毎月最大、支配流じ万円(※?)の収入を得ることができ、自宅で経済的な自由を首(※?)に入れられます。すでに私、前人以上が(※?)、このプラットフォームで生活を向上させています。今すぐ登録し、新しい未来を手に入れましょう。皆さんの信頼に感謝します」
「水中の恩恵」だの「自由を首に入れられます」だの、何を言っているのか意味不明だが、とにかく「登録したら金が儲かるよ」と言っているもよう。
・約4万円と個人情報を狙った投資詐欺
で、動画のリンクから、その先に進んでみると、日本経済新聞のフリをしたデタラメ記事が表示される。
いろいろ書いてあるが、ものすごく簡潔に要約すると
「最初に3万7600円を投資すれば、あとはAIが自動に運用してくれて、何もせずとも1ヶ月後には26万9000円以上を稼ぐことができる」
といったもの。そして、まず求められるのは名前とメールアドレスだが、サイトの作りや投資詐欺の方法から察するに、十中八九「石破首相や高市早苗氏を使った〝なりすまし投資詐欺〟」と同じスキームかと思われる。
このまま進んでいったら、電話番号、免許やパスポートなどの個人情報、銀行口座にクレジットカード情報など、すべての個人情報を抜き取られた挙句、毎日のように電話がかかってくる……という流れであろう。
もちろん3万7600円を投資したところで、大儲けできるわけもない。そんなうまい話、あるわけがない。しかし、「あるかも」と思って騙されてしまう人がいるからこそ、このような詐欺が今だに無くならないのである。
・これはもはや日本への挑発である
今年に入ってから猛威を振るう……というか、完全に調子に乗っている感もある〝なりすまし投資詐欺〟のSNS広告。Facebookが最も荒れているが、Instagramにも同様の広告が出現し始めているので注意が必要。
この手の詐欺で、最も悪いのは詐欺師であることは間違いないが、法整備もせず放っておく政府にも問題があると私は思う。なにせ日本のトップ、石破茂首相がAI技術により、動いてしゃべって詐欺ろうとしているのである。
これはもはや挑発であるとも私は思うし、このAI石破茂動画により騙されてしまった、情報的な弱者である可哀想な人がいたとしたら、政府はどう対応するのであろうか。
法整備もできる立場なのに放っておき。自らの “なりすまし” を作られても、何ら注意喚起もせず。今後も新たな著名人が “なりすまし” の被害にあう可能性が高うえ、騙される人も確実に1人1人と増えていくのに、知らぬ存じずで放っておくのは、あまりにも無責任なのではないだろうか。
騙されないためには「知ること」が大切。すばやい情報共有ならびに、このような〝なりすまし投資詐欺〟の広告の取り締まりができる法整備がされることを切に願うばかりである。
参考リンク:NHK「なりすまし広告 前澤友作さんと堀江貴文さん 対応策必要と訴え」
執筆:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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▼こちらがAI石破茂フェイク動画。騙されないように要注意。