日本と思えない。壮大すぎる光景に、私(中澤)はそう感じずにはいられなかった。広がる水平線。爆発する波しぶきすら青い。世界の果てみたいな海岸だ。
この海岸の名前は「犬の門蓋(いんのじょうふた)」。ってこの絶景のどこらへんに犬要素があるんだ?
・どこ?
「犬の門蓋」があるのは、鹿児島の離島である徳之島。離島と言うと近いイメージがあるかもしれないが、徳之島は鹿児島から南西約500kmにある絶海の孤島である。つまり、この海は東シナ海のど真ん中なわけだからどこか日本離れした雰囲気もさもありなんなのだ。
・現場
切り立った崖にはロープとか手すりみたいな親切なものはなく、遮るものもない東シナ海の海風が直撃するため風もめちゃくちゃ強い。
また、辺り一帯には「めがね岩」と言われる眼鏡型に削れた岩を筆頭に奇岩が広がっている。これらは隆起サンゴ礁が長年にわたる浸食によりできたものなのだそうな。
その奇怪にエグれた岩の形も、岬の波打ち際に行けば納得である。そう、ここは波打ち際ギリギリまで行けるようになっているのだが、「そりゃ奇岩にもなるわ」みたいな波が絶えず岸壁にぶち当たっては爆発しているのだ。
・荒々しさと美しさの共存
島に来る時のフェリー15時間で、この時期のこの海のヤバさを完全に分からされてしまった私。島にまでこんな威力の波が届いているならそりゃあれだけ揺れるはずだ。波の爆発っぷりがディカバリーチャンネルみたいになっている。近づきすぎたらマジで波にさらわれそうだ。
しかし、感動したのはその波しぶきすら青いこと。巻き込まれたら一瞬で死ねるほどの荒々しさにもかかわらず、息を呑むくらい美しい。世界の果てを感じたのはそういう部分かもしれない。
・名前の由来
その地球の脈動すら感じる壮大さは絶海の孤島ならではの光景である。ただ、細部を見ても「犬」は一切感じなかった。この場所が「犬の門蓋」という名前なのはなぜなのか?
実は入口の看板にその名前の由来が書かれていた。サラッと説明文に紛れ込んでいるため、着いた時は読み飛ばしてしまったんだけど、よく読むと「犬の門蓋」の由来はある伝承からついているらしい。看板のその部分を以下に抜粋すると……
「昔大飢饉のおり犬が群れをなし人畜に危害を及ぼしたので、これを捕まえ海中に投げ捨てたことからついたと伝えられている」
──つまり、ここは野犬の処刑場だったわけだ。確かに、あの海は犬かきでは戻ってこられないだろう。時代や背景的に当然のこととは言え、今の時代からリアルに考えるとちょっと恐ろしい由来は日本っぽい。
というわけで、古の日本のちょっと怖い民間伝承が好きな私としては1粒で2度美味しいスポットだったと言える。その壮大さと日本的伝承の共存に徳之島独特の風土を感じたのであった。
・今回紹介した店舗の情報
店名 犬の門蓋(いんのじょうふた)
住所 鹿児島県大島郡天城町兼久
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼駐車場もあるぞ
▼展望台に上ってみた
▼メガネ岩が有名らしい
▼波打ち際ギリギリまで行けるので逆に注意が必要だ
▼壮大すぎる景色
▼観音菩薩像も立ってる
▼近くの道も良い感じだった