『鯨骨ラーメン』というのが山口県の名物らしい……本当だろうか? 山口ネタについて以前わりと丹念に調査したことがあるが、「鯨骨ラーメン」なるワードに行き着いた記憶はない気がする。

ただし「クジラが名物」という情報には覚えがあるので、鯨骨ラーメンがあっても不思議じゃないかもしれない。調べたところ、鯨骨ラーメンは ““去年から”” 山口の名物になった、とのこと。


……去年から!?

・下関の人気店

山口名物・鯨骨ラーメンは『長州鯨骨らぁめん』が正式名称。本記事では鯨骨ラーメンと省略させていただく。

現在、山口県内では14の飲食店で鯨骨ラーメンが提供されているのだそう(2024年12月時点)。中でも一番最初に提供を始めた店が下関市内にあるとの情報をキャッチし、下関駅からバスに揺られる私。

『唐戸市場』周辺のバス停で下車。海を背にして少し歩くと……

鯨骨ラーメン元祖の店『下関鯨屋 日新丸』がある。去年からとはいえ、元祖であることに間違いはない。


・ランチが狙い目

開店と同時に入店し、この時点で客は私だけ。

軽快なジャズミュージックが流れるオシャレな店内。実はここへ来るバスのボディに日新丸の広告がプリントされていたため、巨大な居酒屋みたいのをイメージしていたのだが、意外にも小ぢんまりとした隠れ家的雰囲気であった。

ランチメニューは鯨骨ラーメンに加えてカレー、丼、定食など。全てに鯨が使用されている。

このとき下関では市をあげて『鯨生肉フェア』なる催しが開催されており、その関係でディナータイムは予約でほぼ満席と聞かされていた。そのため開店と同時に駆け込んだのだが……平日のランチタイムは予約の必要もなく狙い目だと思う。



・これが鯨骨ラーメン

こちらが日新丸の名物『長州鯨骨らぁめん』(990円)。

人生で鯨を食べた経験がほぼ無い私にとってはイメージも何もあったものじゃなかったが、強いて言えば「もっと匂いがキツイと思ってた」が第一印象。まずスープから。


!!!!これは!!!!


私の出身地である鳥取県中部では『牛骨ラーメン』という、その名のとおり牛の骨でスープをとったラーメンが名物なのだが、鯨骨ラーメンのスープは、その牛骨ラーメンによく似ている気がした。簡単に言うと甘みがあってクセのない優しい薄味。

鯨と牛。いかにも匂いがキツそうな2つの動物からとったスープに「クセがない」という不思議な類似がみられるとはオモロい。

クセがスゴかったのはチャーシュー的ポジに浮かんだ2種類の鯨肉である。黒っぽいのが「さえずり(舌)」で、歯ごたえがすさまじく燻製っぽい風味。赤いのは鯨ベーコン。「そういや鯨って海の生き物だった」と気付かされる磯の香り。

透明なゼラチンっぽいヤツは「おばいけ」といって、鯨のシッポ部分らしい。コリコリして楽しい。

豚骨ラーメン専用だと思っていた九州風の細ストレート麺。意外にもあっさりスープによく合う。ラーメンそのものに鯨の面影は感じられないので、鯨が苦手な人も、おそらく鯨だと気づかないままおいしく食べることができるのではないか。さえずりとベーコンには注意だけど!



・名物はつくれる!

鯨骨ラーメン元祖の日新丸であるが、現在のところ下関市内で鯨骨ラーメンを食べられるのはここだけ。つまり鯨骨ラーメンは下関限定ではなく「山口の名物」という位置付けだ。

お店の方にお話を聞いたところ、そもそも鯨骨ラーメンは山口県飲食業生活衛生同業組合という団体が開発したもので、それを試験的にメニュー化したのが日新丸さん。そこから1年を経て、提供する店が一気に拡大した……という流れらしい。

日新丸では鯨骨ラーメンのインスタント袋麺と、同じく名物『よしもとカレー』のレトルトが販売されている。後から気づいたことだが、市内の市場や土産店で買うことも可能。

ラーメンは、特にスープの再現度がかなり高いと感じた。「店へは行けないけど気分だけ味わいたい人」という人は駅の売店などを探してみるといいです。

『よしもとカレー』は深みがあるのに妙なクセがなく、レトルトとは思えない仕上がり。ただラーメンと同様、鯨肉のクセはスゴイので注意だ。


これまで名物というものに対して “自然発生的に誕生するもの” という認識でいたけれど、「作ろう」と思って作った名物も悪くない。むしろやる気が感じられて非常に好感が持てる。店によって特色があるようなので、山口へ行ったら「鯨骨ラーメンめぐり」とか楽しいんじゃないかな?


・今回ご紹介した店舗の詳細データ

店名 下関鯨屋 日新丸
住所 下関市中之町6-3 第2松栄ビル1階
時間 昼 11:00〜14:00(L.O. 13:30) / 夜 17:30〜22:00(L.O. 21:00)※ 日曜はランチ営業のみ
定休日 水曜日

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

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