女子プロレスラー・ダンプ松本の半生を描いたNetflixシリーズ『極悪女王』が大いに話題を呼んでいる。ドラマは「極悪同盟」率いるダンプのヒールっぷりが見どころの1つだが、芸能コタツ記事界隈にもヒールが存在する。というかその存在が際立ちつつある。


同業者として申し訳ないが、今回はあえて名指しで書かせていただきたい。というのも、あまりにも悪意あるタイトルの記事が目につくのだ。


「コタツ記事」とは、現場に足を運んで取材や取材対象者にインタビューすることなく、芸能人のテレビ・ラジオ発言、SNS投稿を基に作成される記事のことで、何かと嫌われる対象で、もともとがヒールのような存在だ。


そんな中にあって、芸能コタツ記事関係者の間でも『週刊女性PRIME』、WEB版『女性自身』、『smartFLASH』が「ヤバい」「やりすぎではないか」という話がされている。

例えば……以下の『週刊女性PRIME』の記事タイトルを見てもらいたい。


「前のほうが全然よかった」有村架純の姉・藍里、顔も髪型も “妹寄せ” 近影に嘆きの声


「この人、いったい何してんの」福原愛の “上海蟹の食べ方動画” は誰のため?シュールすぎる迷走感


「前のほうが全然よかった」「この人、いったい何してんの」というSNSユーザーの “当たりの強い” コメントを引用して有村藍里さんと福原愛さんの近影や近況を伝えるという記事だ。


あくまでもSNSユーザーの声を引用した体裁を取ってはいるが、「顔も髪型も “妹寄せ”」や「迷走感」といった具合に編集部・記者・ライターあたりの言いたいこと、書きたいであろうネガティブなワードが含まれているのだ。


同メディアの記事にはこんなものもあった。


木村拓哉の自撮りショットに賛否「マッチングアプリのおじさんのアイコン見てる気分」「ダメなSNSの使い方」 “何やっても炎上” はスターの宿命か


以前も指摘したが、「マッチングアプリのおじさんのアイコン見てる気分」というのはSNSユーザーの声の引用だが、これでは匿名のネット掲示板の悪口と同じだ。


芸能記事を書くうえで批判や皮肉を含んだ視点は重要だが、あまりにもいきすぎるのはよろしくない。不倫などのスキャンダルを報じられた芸能人に対してであっても、敬意を払わずに記事にすると読むに堪えないものになってしまいかねない。



続いて、WEB版『女性自身』の記事を見ていこう。


夏ドラマ【演技が下手だと思う旧ジャニ俳優】ランキング! 3位二宮和也、2位渡辺翔太を抑えた1位は?


『24時間テレビ』で「感動しなかった」マラソンランナーランキング! ヒロミ、佐々木健介を抑えた1位は?


上記はいわゆる「ランキング記事」と言われるもの。週刊誌では「芸能人CMギャラランキング」「ドラマ高額ギャラランキング」といったコンテンツが一定の人気を得てきた。


WEB版『女性自身』は、それをWEB上でもやっているのだが「演技が下手だと思う旧ジャニ俳優」「『24時間テレビ』で “感動しなかった”」とそのランキング内容はあまりにもネガティブ。


もちろん、上記の記事と対を成す、


夏ドラマ【演技が光る旧ジャニ俳優】ランキング!3位松村北斗、2位目黒蓮の若手実力派を抑えた1位は?


『24時間テレビ』で「感動した」マラソンランナーランキング!水卜麻美、萩本欽一を抑えた1位は?


というポジティブなランキング記事も出しているのだが、WEB上で目につくのはやはりネガティブな記事ではなかろうか。



ちなみに『週刊女性PRIME』も


《テレビから消えてほしいバラドルランキング》“フワちゃんの親友”を抑えて1位になったのは?


といったネガティブなランキング記事を配信している。


特に女性週刊誌ではランキング記事が長らく人気を博してきたが、雑誌は読みたい人だけが読むメディアだった。しかし、WEBニュースはそうではない。見たくなくても自然と目に入ってきてしまう。結果、ネガティブなランキング記事は悪い意味で注目を集め、ネットユーザーから批判がたびたび寄せられている。


そして今、芸能コタツ記事関係者の間で最も荒ぶっていて「大丈夫か?」と心配の声さえ上がっているのが写真週刊誌『FLASH』のWEBメディア『smartFLASH』だ。同メディアが最近配信した記事のタイトルを見てみると……


「マイケルジャクソン化」高梨沙羅 最新写真に「アプデ凄まじい」違和感が殺到


「ブランチのときは酷かった」山本舞香『アナザースカイ』新MC就任に懸念続出…小松菜奈への “仏頂面” に猛批判の過去


う~む……。深夜のバラエティ番組でもコンプラ違反やルッキズムがどうこう言われる時代にコレである。


「マイケルジャクソン化」や「ブランチのときは酷かった」は、やはりSNSユーザーの声ではあるのだが、それにしたってあまりにも対象の有名人・芸能人を下げているのではないか。


上記のWEBメディアが、なぜこれほどまでにある意味で攻めた記事を出せるのか。出しているのか。


まず、『週刊女性PRIME』は『Yahoo!ニュース』のコメント欄、いわゆる「ヤフコメ」が閉鎖されたことが大きいだろう。


2022年6月、『週刊女性PRIME』『NEWSポストセブン』『東スポWeb』が提供する一部の記事において、『Yahoo!ニュース』のコメント欄が突如として閉鎖された。


Yahoo!は「契約上のことなのでお答えできない」と閉鎖の理由を明らかにしなかったが、コメント欄を巡っては、WEB上での口論から相手を呼び出して暴行を加える事件などが起きたこともあり、誹謗中傷の抑止のために一部メディアのコメント欄が閉鎖されたと見られている。


現状、『Yahoo!ニュース』に配信される『週刊女性PRIME』の芸能記事にはユーザーのコメントがつかない。つまり、どんなに煽情的な記事を出しても、『Yahoo!ニュース』内においては波風が立たないのだ。


『週刊女性PRIME』はコメント欄が閉鎖されたことを逆手にとって、攻めた記事を連発しているのではないか、と芸能コタツ記事関係者の間では話されている。



では、WEB版『女性自身』と『smartFLASH』はどうだろうか。両メディアのコメント欄は閉鎖されていない──が、共通点がある。いずれも光文社のWEBメディアだということだ。


雑誌の『女性自身』と『FLASH』はそれぞれスクープを報じたり、面白い連載やインタビューがあったりと読んでいてなかなかに楽しい。ただ、WEBで出す記事はどうにもとげとげしい。


こういった記事を連発するようになったのはWEB版『女性自身』と『smartFLASH』がそれぞれ、「月〇本以上の芸能記事を『Yahoo!ニュース』に配信する」という方針に転換してからで、その数は120本以上とも言われている。


120本もの芸能記事を、同じ版元が運営するWEB版『女性自身』と『smartFLASH』がそれぞれ『Yahoo!ニュース』に配信するというのは並大抵のことではない。


自サイトだけで配信するニュースならまだしも、『Yahoo!ニュース』の基準を満たし、それでいて引きのあるネタ、読者に伝えるべきネタが毎日のように都合よく転がっているものではない。


その結果、SNSユーザーの強い言葉を引用した読者の目を引きやすい煽情的なタイトルの記事が量産されるようになったのではないか、と見る芸能コタツ記事関係者は少なくない。


そして今、『週刊女性PRIME』、WEB版『女性自身』、『smartFLASH』の記事は『Yahoo!ニュース』ユーザーやX(旧ツイッター)ユーザーから、以前にも増して反発を招いてしまっており、芸能コタツ記事界の “最恐ヒール” 的な存在になりつつある。


あまりにも煽情的な記事タイトルが散見され、関係者からも「『Yahoo!ニュース』から追放されてしまうのではないか」と危惧する声が上がっているほどだ。


もちろん、上述のメディアの記事がこれだけ物議を醸すのは、そもそも大きな影響力を持っていて注目度が高いからでもあるだろう。


それだけに『Yahoo!ニュース』から追放されることなく、一緒にネットニュース界を盛り上げていきたい、下火にさせたくないと考えている同業者も少なくないとは思うのだが──極悪同盟とクラッシュギャルズのライバル関係が女子プロ界を盛り上げたように。


執筆:田中ケッチャム
イラスト:いらすとや