出だしからぶっ放すが、2024年10月11日に公開される “ジョーカー2” こと『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は、紛れもなく傑作である。ただし鑑賞するには相当な覚悟が必要な作品だ。

公開に先駆けて開催されたマスコミ試写会で「ジョーカー2」を観た私は、丸々2日間本当の本当にツラかった。いわゆる「2度と観たくない傑作」とは『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』のような作品を指すのであろう。

・ネガティブな余韻

2019年に公開され、世界中で社会現象を巻き起こした前作「ジョーカー」から5年。ついに待望の続編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』が公開される。

本作に限らず「○○2」は失敗に終わるケースが少なくないが『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は前作に引き続き傑作の部類に入ると断言してしまおう。

ただし冒頭でもお伝えした通り、本作は「相当な覚悟が必要な作品」である。シンプルに言えば「ツラすぎて観るに堪えない作品」であり、清々しさとは真逆のネガティブな余韻が前作以上に続いた。順を追って説明したい。

・見てられない

まず前作「ジョーカー」を一言で表すなら「1人の男があらゆるものをむしり取られ、やがてジョーカーに変貌する話」である。主人公のアーサーはやや変わっているものの、確かな優しさを携えた男性であった。

アーサーの持つ善の心が少しずつ削り取られ、最終的に彼は「ジョーカー」に変貌を遂げる。つまり、あらゆるものをむしり取られた人間の慣れの果てが「ジョーカー」なのだ。だがしかし……。

「ジョーカー2」では、もうこれ以上失うものがないと思われていたアーサー(ジョーカー)から、さらに “何か” が奪われていく。鑑賞中「もうやめてあげて!」と何度叫びそうになったことか。本当にツラい。



・リー

そしてここでズバリ! 本作の鍵を握るのはレディ・ガガ演じる謎の女性「リー」である(ちなみに公式見解によるとリーはリー。ハーレイ・クインではないとのこと)。

アーサーが収監されている “ほぼ刑務所のような病院” に突如現れたリー。ジョーカーが5人を殺害した罪で裁判が開かれようとする中、リーの出現で物語は大きなうねりに巻き込まれていく。

これ以上はネタバレになるため、あえて申し上げないが『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は、アーサーとリー、そして「ジョーカー」が織りなすヒューマンドラマである。誰も予想しえない結末を、覚悟を持って見届けていただきたい。

・音楽

ちなみに1つだけ気になったことがあるとすれば、監督のトッド・フィリップスが「これはミュージカル映画ではないが、音楽が重要な要素である」と語っている通り、前作の比ではないほど音楽のシーンがメチャメチャ多い。

それこそまさにレディ・ガガがキャスティングされた理由なのだろうが、人によっては「音楽が過ぎる」と感じるかもしれない。逆に言えば前作よりも芸術性を高めた作品と言えるだろう。

真面目な話、試写会で「ジョーカー2」を観てから2日間、本当に気分が優れなかった。アクションや視覚的なグロさはほぼ皆無であるにもかかわらず、ストレートにメンタルをやられてしまったようだ。

人間の優しさ、醜さ、希望、絶望、憎悪。それらを全て奪われたとき、人はどうなってしまうのか? あまりにも過酷なアーサーの運命は「人が生きること」について考え直すきっかけになるかもしれない。



・怪演

傑作「ダークナイト」で故・ヒース・レジャーが演じたジョーカーは「史上最高のジョーカー」として現在でも語り継がれている。また、兄の故・リバー・フェニックスは、言うまでも無く伝説的ハリウッド俳優だ。

その2人を追い越したかはわからないが、確実に肩を並べたとは言える主演の「ホアキン・フェニックス」の怪演は、本作も凄まじいものがあった。決して前作「ジョーカー」に傷をつける作品ではない。

あまりのツラさゆえ、私がこの先『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』を再び鑑賞するかはわからない……あの余韻はヤバすぎる。ジョーカー2をご覧になる際は “相当な覚悟” を持って劇場に足を運んでいただきたい。

参考リンク:ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ
執筆:P.K.サンジュン
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