神奈川県川崎市にある人気温泉施設のひとつ・縄文天然温泉「志楽(しらく)の湯」。都会にいながらも、山奥の秘湯に浸かっている気分が味わえると評判らしい。

どうやらここは簡易宿所を併設していて泊まることもできる様子。宿泊料金は天然温泉に入り放題で1泊5850円(個室)と格安である。

場所はJR川崎駅から2駅先・駅徒歩約6分でアクセス良好。駅近で風流な温泉を楽しみながら安く泊まれるなんて最高じゃないか。さっそく予約したので現地へ向かってみよう。


・趣深い宿舎にチェックイン

まず筆者がやってきたところは、施設の最寄駅であるJR矢向駅だ。東京駅や新宿駅からは約30〜40分(乗り換え1回)で着く。

駅前は飲食店やスーパー、ドラッグストアなどが軒を連ねていて結構賑やか。

ここから少し歩くと景色は閑静な住宅街に様変わり。マジで温泉・宿泊施設があるのかと心配になってきた。


駅から歩くこと約6分、目の前に突如 “” が出現。奥には建物の玄関灯がボンヤリと光って見える。

この森の中にある施設が今夜泊まる「川崎生涯研修センター」。ホラーゲーム『バイオハザード』に出てくる洋館のような佇まい。

敷地内に足を踏み入れると森が……揺れる。カラスがバサバサと木から飛び立ち、小動物がガサガサと茂みに隠れていった。夜は玄関に辿り着くまでが若干ハード。


最初は、同じ敷地内にある温泉施設・志楽の湯へ向かえばいいのか迷ったが、チェックインの手続きは川崎生涯研修センターで済ませるのが正解らしい。さっそく入館してみよう。


ロビーは絵画や芸術作品がたくさん飾ってあって落ち着いた佇まい。なんだかホッとする。

宿泊料金は楽天トラベルを利用して1泊5850円。なお、公式サイトからも同額で予約可能だ。どちらで予約しても支払い方法は現地決済・現金のみ

備え付けのスリッパに履き替えたら館内を探索してみよう。


ロビーで食堂と思われる大きな部屋を発見。中はガランとしていて誰もいない。時刻は22時半を過ぎているし、いまごろ宿泊客は温泉に浸かっているか部屋でのんびりとしていることだろう。


室内にはウォーターサーバー・お茶セットが完備。小学生の頃、林間学校で泊まった施設に雰囲気が似ていて懐かしさを覚えた。

そういえば、温泉に入れる時間は23時半までとスタッフさんが言っていたはず……。そろそろ身支度を整えて温泉に行かねば。



・マイルームへ

食堂を出て道なりに進んでいくと、温泉施設へ続く道・客室へ続く道に分かれた。別館・志楽の湯へ行くには長い渡り廊下を進む必要がある。とりあえずマイルームを確認しにいこう。


廊下にはインパクトのある絵画がずらーっと飾られている。さっきのロビーでも目立っていたし、館内全体が美術館っぽくてステキ。お風呂上がりにでもゆっくりと見て回ろうか。


部屋の前に着くとドアはすでに開け放たれていた。部屋の大きさは3畳ほど(トイレ別)でなかなかに狭い。ただ、一般的な簡易宿所と比べて設備が充実しているように思う。


ベッドはモコモコと厚みがあってしっかりとしたデザインだし、作業デスクや椅子なども備わっていてビジネスホテルみたいな室内だ。これはテンションが上がる。

ありがたいことに浴衣とタオル2枚セットが用意されていた。歯ブラシはないためフロントで購入するか持参したほうがいいだろう。それではパパッと着替えて温泉にレッツゴー。



・志楽の湯へ

夜の渡り廊下はハッキリ言って怖い。森の虫たちが廊下にたむろしているし、歩き始めれば茂みがガサガサと揺れる

掲載写真だと結構明るく見えるかもしれないが、実際はライトがあっても暗くてビビってしまった。


そしてここにも絵画がたくさん……。ベンチに犬のぬいぐるみも飾ってあったり、なかなかカオスな雰囲気が漂っているぞ。


L字型の渡り廊下を抜けると、志楽の湯に到着。スリッパ置き場があったので、大浴場はすぐ先かと思ったが……


だだっ広い休憩室に出た。縄文時代を彷彿とさせる内装がオシャレ。縄文モチーフのオブジェなどがアチコチに設置されていてまるで博物館のようだ。

宿舎のほうにも言えるが、アートに対するこだわりがマジでハンパない。非日常感を味わうことができてワクワクしてくる。


サクッと鑑賞しつつ道なりに進んでいくと……


あれ、行き止まり? 左を見ても右を見ても障子だらけ。通路や案内図が全然見当たらない……。ガランとした大広間には筆者以外誰もいないようで困った。


さて、どうしたものかと考えていたら、向かって右の障子近くにカワウソらしきぬいぐるみが置いてあるのを発見。なんだか気になる、もしや隠し扉か? 試しに障子を開けてみたら……


再び渡り廊下が出現。道順がわかりにくかったけど、とりあえず先に進めてよかった。

こっちの渡り廊下は短めだ。床板がギシギシと軋(きし)んでちょっと心地いい。だんだんと温泉に近づいてきた感じがする。


渡った先は館のメインフロア。軽食コーナーや売店、休憩スペースなどがあって賑やか。温泉はもうすぐそこだと思っていたら……


またまた渡り廊下が姿を現す。宿舎を出てから3度目だぞ。敷地内に一体何カ所あるのだろう。

しかし、今回のヤツは造りがしっかりとしていて立派。廊下幅が広くて歩きやすいし、中庭も覗けて実に風流である。



・露天風呂に感動

ようやく大浴場に辿り着いた。利用時間が残り少ないため長くは浸かれないのだが、はるばるやってきたので存分に楽しもうじゃないか。

脱衣所のロッカーは100円玉を投入するとロックされるタイプ。あらかじめ小銭は準備しておいたほうがいい。なお、100円玉は返ってくるから安心してくれ。


浴室は想像以上に広くて開放的。一歩足を踏み入れると床の質感が独特で驚いた。真っ平ではなく波を打つように高低差がある

館のテーマ「縄文」にちなんで、本物の縄を使って工夫したらしい。足ツボ効果があるようで歩くと結構気持ちいいぞ。

そして目の前にはズラリと並んだ洗い場。ひとり当たりのスペースが広くて使いやすい。

奥では大きな樽風呂を発見。温度が高めですぐに体はポッカポカ。木のぬくもりが感じられて最高だ。

すぐ隣にはサウナルーム・勾玉(まがたま)の形をした水風呂が完備。高温ドライサウナとキンキンに冷えた水風呂の組み合わせは爽快だった。


さらに奥ではこれまたデカい天然温泉が待ち構えていた。浴槽に巨大な木の柱がドーンとそびえ立っていてインパクト大。

湯加減は熱すぎずちょうどいい塩梅だ。じんわりと温まってかなり落ち着く……。

開放感のある窓からは最も入りたかった露天風呂が見える。そろそろ味わいにいくとしよう。


木々に囲まれた露天風呂は雰囲気が最高すぎる。秘湯にやってきた感がマジでハンパない。ここは本当に川崎の住宅街なのかと錯覚を起こすレベル。

コポコポと湧き出る温泉の音・シーンとした屋外の静けさが実に心地いい。そして空気がおいしくて感動した。

ゴツゴツの岩風呂は迫力があってカッコイイ。底は凸凹としていて高低差がある。若干歩きにくいが、それもまた一興。

お湯はサラサラで肌触りが抜群にいいぞ。どうやら「化石海水」という海水に近い天然温泉が湧き出ているとのこと。なんだか肌がスベスベになってきた気もする。

湯加減もバッチリでずっと浸かっていたい気分……。めちゃくちゃリラックスできて疲れがぶっ飛んだ


営業終了時間ギリギリまで満喫したら宿舎に戻って今夜は就寝。温泉でポカポカに温まったあとはグッスリと眠ることができた。



・朝の露天風呂も最高

翌朝も別館・志楽の湯に行って露天風呂を堪能。

宿泊者は営業開始前の午前8時から朝風呂(露天風呂・洗い場のみ)を利用できる。チェックアウト(午前11時)前に入浴チャンスがあるのは嬉しい限り。

都心から約30〜40分で秘湯気分が楽しめるとは正直驚いた。日帰り利用もできるがコスパのいい宿泊プランがおすすめ。宿泊者限定のモーニング露天風呂は人が少なくて最高だぞ。

みなさんも機会があれば1度訪れてみてはいかがだろうか。


・今回ご紹介した施設の詳細データ

名称 縄文天然温泉 志楽の湯 / 川崎生涯研修センター
住所 神奈川県川崎市幸区塚越4-314-1

参考リンク:楽天トラベル
執筆:古沢崇道
Photo:RocketNews24.