かつて江戸に存在していた3大刑場のひとつ、小塚原処刑場。跡地は安宿街で有名な南千住駅の近くに位置していて、現在は回向院(えこういん)というお寺が建っている。
吉田松陰を始めとする幕末志士たちのお墓がある由緒正しきお寺だ。以前参拝した際、境内墓地の隣にビジネスホテルを発見。
少々気になったので調べてみると、宿泊料金が1泊3500円と格安。偉人たちが眠るすぐ隣で宿泊できるのも興味深い。さっそく予約したので館内をレポートしてみようと思う。
・雰囲気抜群のビジネスホテル
JR南千住駅から徒歩約3分、ビジネスホテル「福千(ふくせん)」へとやってきた。外観はちょい大きめの住宅といった感じ。素朴な佇まいが印象的。ちなみに、向かって右隣には回向院の境内墓地があるぞ。
ロビーは結構レトロな雰囲気が漂っていた。靴箱は銭湯によくある木製タイプ。壁には表彰状などが飾ってあり、どことなく昭和の面影を感じる。玄関でスリッパに履き替えたらチェックイン。
同フロアには古い公衆電話・電子レンジ・自販機・心ばかりのミニ漫画コーナーが完備。
そして奥にはシャワールーム(2部屋)やトイレ、ウォーターサーバーなどなど。ここに共同風呂もあるらしいのだが、都合により現在は利用不可とのこと。
・2階に上がってみると…
最上階2階の客室へ向かう途中、試しに階段の窓を開けてみたら……
目の前には荘厳な墓地。歴史に残る著名人たちと同じ夜を過ごせるなんてゾクゾクする。
2階はドア(客室)の数がハンパなくて意外と広い。まるで迷路のように入り組んだ廊下が続いている。
奥には洗面所・トイレが完備。ウォーターサーバーもあったのだが、故障中で利用することはできなかった。
予約した部屋の向かいには、鎖で封じられた非常階段。下まで一直線に伸びた長い階段が見える。ダンジョンへの入り口みたいなムードが漂っていて興奮した。
・間取りが気になる部屋
自室のドアを開けてみると細長い通路が出現。アパート部屋で例えるならば、トイレ・バス・キッチンがありそうなスペースだが、そういった設備は見当たらなかった。なかなか珍しい間取りである。
部屋は洋室でベッドやテレビ、エアコンなどが備わっていた。室内の大きさは通路を含めると約4畳半。
ベッドはマットレスが分厚くて快適な寝心地だ。枕は……ぺったんこでちょい微妙。
折りたたみ式テーブルの上には、タオル2枚・浴衣・ドライヤーがセットされていた。浴衣は温泉旅館で着るようなタイプ。久々に着用してみたら気分が上がった。着替えたついでにシャワーを浴びに行って今夜は就寝。
・何かが、来る
ベッドで疲れた身体を休めていると……部屋が小刻みにカタカタと揺れ始めてきた。次第に地響きのような轟音が近づいてくる。ガタン・ゴトン、ガタン・ゴトン──
揺れと音の正体は電車。部屋の窓からは、先ほど利用してきた鉄道(JR常磐線)が見える。このホテルは線路沿いにあるため、電車の走行音・振動をモロに受けてしまうようだ。
午前0時半ごろまで約10分おきに走行する電車。なかなか往来が激しくて上手く寝つけなかった。
終電後は驚くほど静かな夜に様変わり。隣の部屋の生活音やイビキもほぼ聞こえず、無事に眠ることができた。
部屋は広めで居心地がよかったし、ちょっぴりスリリングな夜を過ごせて大満足。駅から徒歩約3分で1泊3500円、というコスパ面もポイントだ。機会があればぜひ泊まってみてほしい。
・今回ご紹介した施設の詳細データ
名称 ビジネスホテル 福千
住所 東京都荒川区南千住5-33-19
執筆:古沢崇道
Photo:RocketNews24.
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