皆さん、お待ちどおさまでした! 本日(2024年4月12日)、ついに始まりましたよ!! 「何が」って? そりゃ決まってるでしょ。あの大人気任侠シリーズ『日本統一』の劇場版映画『氷室蓮司(ひむろれんじ)』の上映が始まったんだぞーーーッ!


私(佐藤)もう見て来た! 朝1番の上映回で見て来たぞ!! そこで、この作品の感想をネタバレなしでお伝えしたいと思う。


任侠と聞いて「古臭い」と思う方もいるでしょうが、是非見て頂きたい。低予算を感じさせるつくりではあるけど、内容はとても面白い。大げさに言えば、鑑賞の満足感はハリウッド作品にもひけを取らないかもしれないぞ


・物語

日本統一は、俳優の本宮泰風さんと山口祥行さんのダブル主演のオリジナルビデオシリーズである。横浜のチンピラだった氷室蓮司(本宮さん)と田村悠人(山口さん)が、街を追われて神戸に逃れ、そこから日本屈指の組織「侠和会」に入って成り上がっていくという物語だ。


これまでにシリーズは62作を数え、スピンオフの外伝や連続ドラマ。2022年に初の映画作『劇場版 山崎一門 ~ 日本統一 ~ 』を全国公開し、今作は映画2作目。シリーズ10周年記念の第1弾となっている。


今作の舞台は初の海外となる台湾。沖縄で起きた抗争の後に、氷室の息子である悠太が修学旅行中に何者かにさらわれる。「一人で来い」とのメッセージを受けて、氷室は単身台湾に乗り込む。


・今さら息子!?

息子の登場は実に久しぶり。というか、約60作のシリーズにおいて、前半では氷室の家庭の描写がよくあったのだが、30作目あたりから家族が一切登場しなくなり、「もしかしてなかったことになってる?」とさえ思われていた。


それが映画で突然息子の話になるとあって、ファンの間では「今さら?」という意見もあったりなかったり……。


これまで東京と神戸を中心に描かれていた作品である。記念作品といはいえ、台湾を舞台に日本ではほぼ無敵の氷室がどう立ちまわるのか? 私も大いに気になるところであった。



・海外でもいつもの感じ

実際に見た感想は、「いつも日本統一だった」だ。もちろん良い意味で。


私にとっての日本統一は、演技の実力差を楽しむもの。それも作品の魅力のひとつだと思っている。本宮さんや山口さんなど大物俳優さんの渋い演技を楽しめると同時に、ささやかな役の俳優さんのぎこちない演技を見るのも楽しい。


今回は最序盤、沖縄のシーンで沖縄にゆかりのある世界的に有名な元ボクサーの方が出ているのだが、この方の台詞のぎこちなさに和んだ。これこれ、日本統一はこうでないとね


それから抗争の銃撃戦は、正直に言えば他のアクション作品に比べれば、物足りなさは否めない。だが、そこが作品の中心ではない。だから、銃撃戦もいつも通りだ。


それでも物語が進むにつれて「この先、どうなる?」という程よい緊張感は続いていく。中盤から終盤にかけて、物語の核心がぼんやり見えてきたところで真相を覆し、さらにその先でもうひとひねり加えてくるあたりは、さすがの手腕。


10年以上も長きにわたって任侠モノでやっていられるのは、物語の作り込みの上手さがあるからこそなのだろう。しかも、今作は普段のシリーズ同様に、各シーンの出演者が少ない。それでも退屈しないのは、脚本の上手さもあるからだろう。



・ひそかな強パンチ

正直にいえば、これはファンタジーだ。「そんなわけないでしょ」とツッコミたくなる設定も多々あるけど、だからこそ通用する物語の着地を見た。非常にキレイにストーリーを結んでいる。


それから、さりげなくリアルな政治的背景や国際情勢、昨今の社会状況を織り込んでいたり、キツめの風刺を盛り込んだり


近頃、映画に限らずエンタメの世界は、過敏になりすぎて表現を控え目にしたり省いたりする向きが強い。ヤクザという設定を活かして、ひそかに強めのパンチを打ち込むところが心憎くもある。


そんなわけで、この作品はただの任侠映画ではない。任侠は興味ないと言わずに、ぜひ見て頂きたい。できれば、シリーズを見てからの方がより楽しめるぞ。初見でもきっと面白いはずだ。


参考リンク:映画『氷室蓮司』、日本統一
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24