2024年3月11日、東日本大震災から13年を迎えた。毎年この日は、新宿アルタ前の大型ビジョンの前に来る。最初の4年までは政府主催の追悼式典の様子が中継され、多くの人が足を止め、その様子を見守っていた。
10年以上を経て、立ち止まり黙とうを捧げる人の姿もほとんど見かけなくなったが、それでも株式会社アルタは、この日の14時46分に哀悼の言葉を掲出し続けている。
・あの日を思い出して
「被災地の新たな再生を、強く願って 再生への新たな一歩を踏み出している被災地の皆さまのご健康をお祈り申し上げますとともに、三越伊勢丹グループとして、明るい未来のために力を合わせてまいります。 株式会社スタジオアルタ」
上の言葉は、式典中継のなくなった5年目(2016年)から、ずっとこの日のこの時間に約2分間流れ続けている。年に1度、今日のこの時間しか流れない言葉を、どれだけの人が目にしているだろうか?
多くの人が悼む気持ちもなく素通りできるほど、あの日の震災から時間が経ったということだろう。
残念ながら地震の脅威はなくならない。2016年には熊本で、2018年には北海道(胆振東部)で、そして今年能登半島でも大規模な地震が発生した。気象庁の「日本付近で発生した主な被害地震(平成8年以降)」(人的被害を伴った地震:令和5年まで)を見ると、この約30年間で、全国各地で人的被害を伴う地震が発生している。
「地震大国日本」と呼ばれる通りに、いつどこででも起こりうること。そう考えて備えるべきなのだろう。とはいえ、いつでもそんな気構えで生活するわけにはいかないから、せめて年に1度、今日のこの日に防災について考えたいものだ。
振り返れば、あの日のことを鮮明に覚えている。あの日、電車が止まって編集部から徒歩で帰った。道すがら立ち寄ったコンビニからは商品がなくなり、その後の数日間は自宅で余震に震えていた。
テレビから流れる被災地の惨状を知り、「もし今夜眠っている間に地震が起きたら……」、そう考えたら眠れなくなった。緊急地震速報を聞く度に、胸が張り裂けるほど高鳴り、どこか遠くへ逃げ出したくなった。そんな緊張感のある日常が続いたせいで、震災から1週間前後の記憶が欠落してしまっている。
被災していない私でさえも、思い出したくない経験だ。だが、なかったことにするわけにはいかない。むしろ私(佐藤)は積極的に思い出して、その経験を糧に、備えをしたい。いつ何時、誰にでも起こりうる。その心構えで防災の意識を持ちたい。
参考リンク:毎日新聞、気象庁「日本付近で発生した主な被害地震(平成8年以降)」
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
▼2024年3月11日、新宿アルタ前の様子
▼2012年3月11日、新宿アルタ前の様子