突然だが、皆さんは自主制作映画って観たことがあるだろうか? 私(中澤)は観たことがなかった。いわゆる大手が絡んでない純然たる意味での自主作品ってなかなか触れる機会がないものだと思う。
そんな自主制作映画を初めて観てみようと思ったのは、ある夜、下北沢の喫煙所で出会ったインド人がキッカケだった。
・喫煙所で突然声をかけられる
「中澤さんですか?」と声をかけられて顔を上げると、そこには日本人女性と外国人男性の2人組がいた。声をかけてきたのは女性の方で、ロケットニュース24を毎日チェックしているという。
記者の中でも目立つタイプではないと思うので、街中で私の顔が分かるというのはガチだ。ちなみに、隣の外国人男性はインド人らしい。一風変わったオーラのある2人組だが、下北沢だと珍しくもないかと思った。カレー屋多いしな。
・ゼロからの出発
と思いきや、彼はインド料理屋の店員ではなく映画監督なのだそうな。映画監督ってこんなポロッといるもんなの!? とビビっていると、あわてて注釈をつけ加える彼女。映画監督と言っても、初めて監督した自主制作映画が公開されたばかりなのだという。
なんでも作り始めたのはコロナ禍の真っ最中とのこと。「何かできることはないか」と考えた時に、彼がボリウッドで働いた経験があってカメラや脚本ができたため、映画を撮ろうと思い立ったらしい。
最初は何も分からない中2人から始めてこの度やっとシモキタエキマエシネマ『K2』で公開になったという。おいおい、それこそミニシアター系の映画になりそうな話じゃないか。
・謎のタイトル
そこでチラシをもらってみたところ、小さいチラシに大きく『復讐のワサビ』と書かれていた。ワサビが人間を食べるB級ホラーだろうか。いや、ボリウッド出身だし踊るのかな?
ボリウッド出身のインド人監督が日本で作った自主制作映画ってどんな内容か気になった。そこで日を改めて、シモキタエキマエシネマ『K2』に行ってみた。
・サブカル感
『K2』は駅前どころか下北沢駅の小田急線南西口の目の前にあった。開発で常軌を逸してオシャレになったストリートの2階にある。入ってみるとバーとかが併設されてるんだけど、特に区切られていないサロン的雰囲気がオシャレすぎて空気を吸っただけで死にそうだ。
しかし、奥にある映画館の入り口の雰囲気はライブハウスっぽくてバンドマンとしては安心するばかり。シアターの説明映像にミートザホープスのクックヨシザワさんが出てることにも下北沢を感じずにはいられない。
で、肝心の映画はどうだったかと言うと、まず観終わった後の私の表情がこちらです。
・そうはならんやろのスーパーノヴァ
踊るものでもなければ、もちろんワサビが人を襲って復讐するB級ホラーでもない。むしろ、暗めのセンチメントを感じさせるとても日本っぽい質感の映画だ。
主人公はイジメにトラウマを持つ女性で親は毒親。ミニシアター系ブームを知っている人には馴染みの雰囲気だと思う。『リリイ・シュシュのすべて』とか『乱暴と待機』を思い出した。だが、馴染みがあったのは雰囲気だけだったかもしれない。
そんな流れの中に、ちょいちょい「そうはならんやろ」という部分が混じってくるのだ。そして、その「そうはならんやろ」が中盤以降に大爆発する。もはやスーパーノヴァと言っても過言ではない。それくらいの衝撃が私にはあった。
そこからはもうハチャメチャ。物語が終わった時、こう言うより他なかった。「うそぉ~ん」と。
・衝動
正直広くオススメできる内容ではない。ただ、辻褄を気にしていたら絶対にできないようなそのぶっ飛び方には「思いつく限りやりたいことを詰め込みました」という初期衝動を感じずにはいられなかった。ちなみに、映画は2時間くらいある。
結果、めちゃくちゃ次回作が気になったのであった。映画ってこれくらいハチャメチャな方が良いのかもしれんなあ。
そんな監督の名前はへマント・シンさん。『K2』での放映は1日1回で2月29日までだが、3月16日からは大阪の『シアターセブン』で放映され、名古屋の『シネマスコーレ』でも放映の予定があるっぽい。気になって行ってみようという人は考えるのではない。感じるのだ。衝動を。
参考リンク:復讐のワサビ
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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