子供の頃から、照り焼きバーガーが好きである。小学生くらいの時分に、家族との旅行中に「ご当地のグルメを食べよう」という空気になった際、「マクドナルドのてりやきバーガーが食べたい」と泣きわめき、家族を閉口させたことがある。
それほどに愛していながら、しかしそういえば、モスバーガーの「テリヤキバーガー」は食べたことがない。そんなことを考えた筆者が同ブランドの公式サイトを覗いたところ、今更ながら驚愕の事実に行き当たった。なんと照り焼きバーガーは、モスバーガー発祥らしい。
寡聞(かぶん)にして知らなかった。確かに言われてみれば、突然何もないところから照り焼きバーガーが湧き出すはずもなく、誰かが考案しなければ生まれはしないのだ。そしてその「誰か」とは、モスバーガーだったのだ。
1973年、「テリヤキバーガー」は創業2年目にして世に送り出されたとのこと。さらに読み進めると、当初はあまり人々に受け入れられなかったが、柔軟な女子高生たちによる口コミが広がるとともに人気が出たと書いてあった。いつの世も女子高生はパワフルである。
色々と感銘を受けた筆者は、モスの「テリヤキバーガー」を初実食することにした。価格は430円。マクドナルドの「てりやき」が370円(地域差有り)であることを鑑みれば、やや高めではあるものの、大きな差はないといったところか。
ともあれ、問題は味である。包み紙を開けたなら、ソースまみれのバーガーがお目見えした。商品画像の整った出で立ちとはだいぶ趣が異なるが、照り焼き好きとしては「むしろこうでなくては」という高ぶりを覚える。秩序が常に賛美されるとは限らない。
誘われるようにかぶりつくと、まず豊かな食感がこちらをもてなした。ふんわりとしたバンズ、みずみずしいレタスのシャキシャキ感、崩れるように柔らかなパティ。とはいえこれらは、他のモスの商品と共通する部分でもある。
特筆すべきは、やはりテリヤキソースだ。どうしても筆者の経験上マクドナルドとの比較になってしまうが、モスの「テリヤキ」はマクドナルドのそれよりも和のテイストが強く出ているように感じる。
醤油と味噌がベースになっているというそのソースは、きめ細かでいて奥深いコクに富んでいる。濃厚ながら飽きが来ない。人気のきっかけは女子高生だったというが、そこから幅広い層に馴染んでいったのにも頷ける。老若男女に支持されるクオリティだとわかる。
なんというか、いかにもモスらしい、緻密なデザイン性とホスピタリティを内包した商品である。仮にどこの商品か明かされずに出されたとしても、一口食べればモスのものだとすぐにわかると思う。
究極的に良い意味で、モス以上でもモス以下でもない。同時に、歴史に裏打ちされた確かな自信が商品からにじみ出ている。
もし皆さんの中にもモスの「テリヤキバーガー」を食べたことのない方がいたら、ぜひ今すぐにトライしてみてほしい。人々が抱く「モスなら美味しいハンバーガーを食べられる」という期待を、この商品もまたしっかりと受け止めてくれる。
筆者としては、大人になってから初実食を迎えたのは、ある意味正解だったと感じている。子供の頃に食べていたら、「昼はマクドナルドの、夜はモスバーガーの照り焼きバーガーが食べたい」と泣きわめく、そんなモンスターチャイルドが出来上がっていたに違いない。
参考リンク:モスバーガー 公式サイト
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.