9月2日は「宝くじの日」である。ロケットニュース24では、過去にスクラッチくじを100万円分買うなど、宝くじ関連のいろんな記事を掲載している。

今回はちょっと趣向を変えて「宝くじ売り場のバイト」の話をさせていただこうと思う。何を隠そう、私はあの「中の人」をやっていたことがあるのだ。

1日中、あの狭い箱の中に入って宝くじを売るだけ……そう思っていた時期が私にもありました。

・20年前に時給1000円超えの高額バイト

私が宝くじ売り場のバイトをやっていたのは大学時代。2005年頃のことであった。当時、めちゃくちゃお金がなかったのでバイトを掛け持ち。

楽そうなバイトがないかと、大学の近くで配っていた「ペルソナプレス」という謎のバイト情報誌を見ていたところ、目に入ったのである。

余談だが、このペルソナプレスは大学生向けの一風変わった高額バイトの掲載が多くて面白かった。銀座の高級クラブのバイトとか、美術展の搬入バイト、夏休みの時期になると治験のバイトなんかを載せていたと思う。

当時のバイト代の平均時給が900円ほどのところ、その宝くじ売り場の時給はなんと1000円。ジャンボ宝くじの時期なら1050円、さらに22時以降は1200円。高額バイトの部類に入っていた。

あの箱の中でぼんやり座ってるだけで1000円ももらえるの!? とにかく楽そうなバイトを探していた自分には好都合であった。


・「当たる」で有名な超人気売り場

駅前にある小さなボックスでラジオを聴きながらやるバイト……だと思って面接に行ったところ、そこはブースが10個近くズラリと並ぶ超人気の宝くじ売り場であった。

新橋周辺にある宝くじ売り場を10個ほど管理しているという会社であった。

ベテランっぽい女性のパートさんと面接をして、制服を支給された。

「ジャンボの前に、比較的ラクな売り場で券の売り方とか教えるね」

と言われ、作業に入ったのだが……実はルールがめちゃめちゃ厳しく、覚えることが多かった。宝くじの販売をしているのは、みずほ銀行だからである。

銀行系なので、お金と宝くじ券の管理にめちゃめちゃ厳しい。くじの売り方も、同じような番号が重複しないようにしなくてはならない。お金がらみの職場なので、新人でもミスしたらめちゃめちゃ詰められた。

ナンバーズ、ロト、toto、地方くじの買い方に、当たりくじの管理や払い戻しの説明もあって、頭がこんがらがりそうになる。


・ヒマという地獄

最初はあまりお客さんが来ない小さな売り場に回されたのだが……。

その売場ではどんなにヒマでも本を読んだり携帯を見たりしてはいけなかった。ただ一人、時計の針をジッと見つめて過ごすのみ。

その宝くじ売り場を管理している一族が大変厳しく、息子が監視のために巡回している。「もし携帯を見たり、居眠りしたりしているのが見つかったら大変なことになるから気をつけて……」とパートの従業員の方に言われていた。

が、このヒマな状態というのもマジできつい。時間がまったく過ぎていかないのだ。本当にやることがなくて、手元にある「宝くじニュース」という紙ペラ1枚のチラシを穴があくほど読んだり、宝くじの裏面に書いてある注意書きや当選金の説明を読んでも、10分だって過ぎていない。

たまにお客さんが来ると嬉しくて、わざとゆっくり接客していたくらいである。



・阿鼻叫喚のジャンボ地獄

ある程度慣れてきたところで、ジャンボ宝くじの販売の時期になった。ニュースなどにも度々取り上げられる「当たりが出る」有名な売り場でのデビューと相成ったのであるが……。

それは地獄の始まりであった。死ぬほど忙しいのだ。

まず、大行列なので10個ほどあるブースはフル回転。ひとり何万枚単位で宝くじが渡される。トイレ休憩に立つヒマもないほど、何時間もぶっつづけで宝くじを売りまくる。完全に肉体労働であり、時給1050円の理由を身を以て感じた。

大安吉日や一粒万倍日ともなれば、すごい勢いで客をさばかねばならないので、手が千手觀音みたいになるほど忙しい。このバイトのとき以上に猫の手も借りたいと思ったことはない。

椅子に背もたれなどもなく長時間座りっぱなしのため、激しい肩こりと腰痛に悩まされることになった。この世に楽で稼げる仕事なんてなかったのだ。


・名物客や困った客

人気売り場なので10万円単位で宝くじを買っていく人も多く、1万円札がただの紙切れにしか見えなくなるほどの売上があった。

そういえば、ジャンボになるとなぜか毎回1000万円分予約で宝くじを買っていくお客さんがいて、ジュラルミンケースに詰めてあげていた記憶がある。ぶっちゃけ、100万円分買っていくお客さんもそこまで珍しくなかった。

ちなみに、ブースの中でも忙しいのは験担ぎで人が並ぶ1番ブースと7番ブース。ここは超ベテランしか回されなかった。

また、当時は細木数子ブームだったのだが、特番などで「この番号を買え」みたいなことを細木数子氏が言った翌日は最悪だった。

番号を細かく指定して1枚だけ買いたがるお客さんがやってくるのだが、宝くじの番号はある規則性をもって10枚1セットで組んでいるので、1枚だけ欠けると残りの9枚は1枚バラでしか売れなくなり、ハンパなくじ券が山のように出てくるのだ。

そもそも膨大な宝くじの中から指定の番号を探すのは一苦労で、列がぜんぜん捌けなくなる。「番号指定はムリです」といえば、長時間並んだのに!と怒られたりも……。



・景気を実感したバイト

ちょうど私が宝くじのバイトをしていた頃は、ITバブル 〜 リーマンショックの頃であった。

自分の生活で景気がいいという実感がまったくなかったが、ITバブルの頃は1万円出して年末ジャンボ宝くじを30枚(9000円分)買っていく人が多かった。さらに、お釣りの1000円でスクラッチとかロト6を買う人もいた。

新橋という土地柄もあって、やたらと先の尖った靴を履いたリクルートや電通の社員が「よっしゃ、宝くじ当たったら起業するぞ〜!」なんて叫ぶ姿をよく見た。

それがリーマンショックが起こってからは、年末ジャンボを20枚(6000円分)買っていく人が多くなったのが印象に残っている。如実に景気が分かる仕事だったのかもしれない。

あの頃より不景気になった今、宝くじは何枚買う人が多いのかなあと思う。

あ、そうそう、宝くじを買いに来る人は多いけど、換金に来る人はめちゃくちゃ少なかったです。みなさんも手元の宝くじ、チェックしてみてくださいね……。


執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.