2023年8月31日、池袋駅東口の様子はいつもと大きく異なっていた。
そごう・西武の売却をめぐり、労働組合がストライキを実施し、西武池袋本店の全館で営業中止したのだ。デパートのストは60年ぶりということで、ニュースなどでも大きく報じられている。
自分の身近なところでストライキが実施される……というのはひょっとしたら初めてかもしれない。しかも池袋の象徴ともいえる西武池袋本店でだ。いったいどんな様子になっているのか、スト当日に池袋へと行ってみた。
・外資に売却
今回のストの要因は、親会社のセブン&アイ・ホールディングスが、そごう・西武をアメリカの投資ファンドに売却する方針を固めたこと。
さらに、売却先の「フォートレス・インベストメント・グループ」は、家電量販店のヨドバシカメラが出店する計画を示しているというのだ。
そごう・西武の労働組合は「雇用維持」と「事業継続」のためにじゅうぶんな話し合いができていないということで、経営側にストを予告していた。それでも経営陣の方針に変化がなかったということで、スト決行に至ったという。
池袋駅に着くと……当然だが西武池袋本店の入口には全部シャッターが閉まっている。そしてスト決行による休館のお知らせが貼ってあった。貼り紙の写真を撮っていく人が後を絶たない。
・地上に出ると…
スト当日は池袋西武本店の営業とりやめということで、誰もいない静かな様子を想像していたのだが、地上に出ると何やら騒がしい。
東口の正面玄関のあたりで、そごう・西武の労働組合の方たちがビラを配り、今回のストの件について演説していた。
「西武池袋本店を守ろう! 池袋の地に百貨店を残そう! これからもお客様と共に……」と書かれた横断幕を手に持っている。
そして、それを囲む聴衆と多数の報道陣が集まっている。写真を撮っていたら、新聞社の方に声をかけられ私も街頭インタビューを受けそうになった。
・意外な場所も休み
池袋東口はまるで駅を囲む防波堤のように、西武池袋本店のビルが果てしなく続いている。
東口のアインズトルペや無印良品や三省堂書店池袋本店が入っている場所も、実は池袋西武の一部なので休館。
そしてその隣にあるパーキングも営業中止。
この一帯がまったく営業していないとずいぶん寂しい印象を受ける。
そもそも親会社が外資に変わったら、この東口の風景も変わってしまうのかもしれないのか。
ちなみに、西武池袋本店と無印良品の間にあるスタバは営業中。
不思議に思ってよく見たら、このスタバが入っている細長いビルは飛び地になっていた。このビルは西武じゃないのか! 思わぬところで、どうでもいい発見をしてしまった。
・あれ、パルコってどうだっけ…
そういえば池袋のパルコと西武ってつながってたよな〜。西武とパルコって同じセゾングループじゃなかったっけ? と思ってパルコの方の様子を見に行ったら、パルコはしっかり営業中だった。
たしかに、もともと西武もパルコもセゾングループだったのだが、西武・そごうが2009年にセブン&アイグループの傘下に、パルコは2012年からJ.フロント リテイリング(大丸・松坂屋系列)の100%子会社になっていた。
つまり、今のパルコは西武・そごうとは完全に別会社だから、今回のストは関係ないのだ。
多分、西武が2009年にセブン&アイの傘下になった後もいろいろあって大変だったんだろう。それから10年ちょっとで今度は外資に売却。それで今回のストに至ったのかもしれない。
・いっぽう東武は…
さて、西武池袋本店がストによって営業をとりやめているが……そのころ池袋西口の東武百貨店の様子はどうだったかというと。
西武が営業してないせいか、平日の昼とは思えないほど人がいた。特に地下食料品売り場の人手はかなりのもの。土日かと思うほど賑わっていた……。
今回のスト、東武からすると棚からぼたもちだったのかもしれない。
・変わる池袋
コロナ禍から、テナントの撤退が相次いでいる池袋東口。サンシャイン通りのセガも閉店し、ランドマーク的な存在だった東急ハンズも撤退。
そこに来て、今度は西武池袋にヨドバシが入る……となると、全然違う街並みになってしまいそうだ。
以前、山手線で2駅隣の巣鴨に住んでいたので、池袋はよく買い物に来ていた。
個人的には東口にはもうビックカメラがあるし、ヤマダ電機もあるから、ヨドバシはいらないんだよなあ。
売り場面積日本一を誇る、西武池袋本店がなるべく今のままで残ってほしい。
再開発でガンガン街並が変わっていく渋谷なんかより、よっぽど変化を迎えているのは池袋なのかもしれない。