大阪人にとって豚まんと言えば「551HORAI 蓬莱」だ。551の店舗とかない田舎で育った私(中澤)だったが、両親が市内に行く度に買って来ていたため、飽きるほど食べたものと言って差し支えない。東京に上京してからはその味が懐かしくなることもある。
先日帰省した際、難波を歩いていると蓬莱発祥の店と書かれた看板が目に留まった。立ち止まって見たところ、確かに「豚まんの蓬莱本館」という看板がある。感慨深さを感じたので蓬莱本館レストランで食べてみることにした。
・始まりの店オーラ
1階がテイクアウトコーナーになっており、2階がレストランになっている蓬莱本館。てっきりお持ち帰り専門店からのスタートだと思っていたが中華食堂だったんだな。言われてみると、窮屈な階段には時代を感じる。
さらには、マクドナルドを挟んだ2軒隣に現代的な551蓬莱の巨大店舗があるため、コントラストで余計に始まりの店オーラが際立っていた。
・メニューが独自
551がここから始まったのか。階段の一段一段に重みを感じながら登ったところ、2階は広く席の配置もゆったりしている。メニュー自体は庶民的な価格帯だが、空間にはちょっとした品位が漂っているのが良い。席だけでなく、時間もゆったり感じられる。
「カレーまん(税込み220円)」とかあるのもさすが蓬莱本館だ。メニューが全然違う。だが、この雰囲気と一緒に味わうなら、やはり豚まんは外せない。ちなみに、豚まんは1個税込み250円であった。
・豚まんに見る微妙な違い
セイロで運ばれてくる豚まん。この時点で今まで食べまくってきた持ち帰りとは違うわけだが、手に持ってみると豚まんの下についている敷き紙が半透明で白い。まるでコンビニの肉まんに使われている敷き紙みたいだ。551の豚まんの敷き紙は黄土色で分厚いが、この微妙な違いは一体?
食べてみると、皮はふかふか。指がテカテカになる油っぽさがない。出来立てのセイロ提供だからだろうか。それで言うと、ニンニク臭と豚の臭みが融合したような独特の匂いもない。
まんの甘みや餡の味は大きく変わらないのだが、油っぽさと強烈な匂いがないと別モノに感じた。豚まんが生きている。
・衝撃の理由
味の違いこそ微妙ではあったものの、本来の味を感じられた気がした。さすが本館は違うぜ。満足して蓬莱本館を後にした私。だが、帰ってレポートを書こうと調べていたところ、蓬莱本館の公式サイトに衝撃の記述を発見した。えッ!?
「『蓬莱本館』の原点である『蓬莱食堂』が大阪難波に誕生したのは、終戦直後の1945年10月。(中略)その後、事業の拡大に伴い『蓬莱本館』『551蓬莱』『蓬莱別館』とそれぞれ独立」(蓬莱本館の公式サイトより引用)
サイト内のページ「蓬莱本館の歴史」によると、『551蓬莱』は蓬莱食堂の系譜ではあるものの、現在は別会社となっているようだ。要するに……
別モノに感じるというかマジで別モノでした。
大阪人だけど全然知らんかった。ちなみに、『551蓬莱』の公式サイトによると、運営会社である株式会社蓬莱が発足したのは1964年とのこと。なお、前述したマクドナルドを挟んだ2軒隣の現代的な551蓬莱が本店であるようだ。
・味に感じる歴史
とは言え、どちらの歴史にも書いてあるのは蓬莱食堂から始まったということ。蓬莱の豚まんが誕生したのは分裂前だし、その蓬莱食堂が蓬莱本館レストランなので「551がここから始まった」というのも間違いではない。
ただ、理想の味を追求するならマイナーチェンジもあるだろう。分裂後約70年、それぞれが理想を追求してきた道のりが、私が感じた豚まんの微妙な違いに現れているのだとしたら胸アツだ。
味で歴史を感じられる豚まんが食べられるのはここだけ。確かにあれは本来の味だったのかもしれない。蓬莱本館で食べる豚まんは思った以上に特別なものであった。
・今回紹介した店舗の情報
店名 蓬莱本館
住所 大阪府大阪市中央区難波3-6-1
営業時間 11:30~15:30(L.O.15:00)/ 17:30~21:00(L.O.20:30)
定休日 水曜日
参考リンク:蓬莱本館、551HORAI
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.