かつて回転寿司テロの爆心地となったスシロー。その時の傷はいまだに癒えておらず、現在もレーンに寿司は回っていない。我々は思い知った。客の良心にゆだねざるを得ない回転寿司というシステムの脆弱性を。
だが、この度テロとは別方向で衝撃の行動を取る外国人家族を目撃してしまった。マジかよ! 家族でやっちゃうの? それは先日、近所のスシローに行った時のこと……。
・外国人客多めの店
その日は外国人客がいっぱいいた。元々、外国人客が多めの店ではあるのだが、普段は空いてて素通りなのに対し、その日は待合スペースにも人があふれていた。観光客が増えているのかもしれない。コロナ禍も過去のものになりつつあるのを実感したことを覚えている。
とは言え、私は1人なので、カウンター席の受付をしたらほぼ待つことなく入れた。隣の席は、外国人女性。何やら席に鞄を置いて身なりを整えている。気にせず座ったところ英語で「ごめんね」と言われたので「気にしないでいいよ」と答えたらお茶を淹れてくれた。
・困ってる人がいれば助けたい
この店においては、私は困っている人がいればなるべく積極的に助けるようにしている。日本人ならスシローで分からないことってあまりないと思うが、外国人だと分からないこともあるのだろう。結構、注文とか皿をどうしたらいいのかとか困っている外国人がいるのだ。
英語はあまり得意ではないが、店員さんは忙しそうだし、隣の困ってる人に教えるくらいバチは当たらないだろう。なにより、週1度の癒しであるから、この店の平和を守りたいのだ。
・幸せそうな家族
そのため、結構周りを見ている。だから気づいたのかもしれない。食べ終わって帰る時、山のように皿数を積み上げている家族がいることに。
夫婦は共に総白髪で上品な感じだったのでちょっとビックリした。しかし、息子2人は食べ盛りくらいの年齢で「まあありえるか」という感じ。幸せオーラがにじみ出ている。
ちょうどお会計をしているそのテーブルを通り越して自動読み取りレジに並ぶ。スシローは会計が完全無人になっている店もあるけど、この店は店員さんが皿の集計をした後に出口付近の自動レジで支払うスタイル。2台ある自動レジはどちらも使用中で行列ができていた。
・衝撃の出来事
と言っても待ってたのは2組くらいなのですぐに私の順番が回ってくる。自動レジに店員さんからもらったバーコードを読み取らせる。先ほどの家族が追いついてきたのはその時。
そして、追い抜いていった。
レジをスルーして歩いていく家族。え? お支払いは……? あまりにも自然に和気あいあいと歩いていったため、レジをしている自分の方が変なようにさえ感じられる。だが、周りの人を見ると、私と同じような顔で家族の背中を見つめている。え? 食い逃げ……?
・声をかけようとしたら
いや、システムが分かってないだけなのかもしれない。店員さんがピッとした段階でお支払いが終わったと思ったんだろうか。詳しい事情が分からないのだが、とりあえず間違いないのは謎のチートで追い越されたこと。声をかけたいが、まず支払いを終わらせないと私が食い逃げになってしまう。
その間に家族は誰を待つそぶりもなく悠々と出て行った。支払いが終わり、すぐに後を追って店を出たところ、外国人のグループがそこら中にいてもうどのグループかよく分からなくなってしまった。
・理解不足の可能性
食い逃げだったのだろうか? 家族で? 正直、今思い返しても狐につままれたような気分なのだが、よく考えると、店員さんはバーコードを渡した後すぐに仕事に戻るため、バーコードさえなんとかすれば可能なのかもしれない。
その家族に悪気があったのかは分からない。シンプルにシステムを誤解した可能性も結構高いと思うからだ。ただ1つ言えることは、衝撃的すぎてその場の誰も動けなかったということ。思いもよらないことが起こると人ってフリーズするものである。
やろうと思ったことがないため、目からウロコだったこの事件。そういう出来事を目の当たりにしてから考えると、スシローの会計システムは回転レーン以上に客にゆだねられているのかもしれない。客を信じるスシロー。平和を願う1人としては今回の件が私の勘違いだったことを祈るばかりだ。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.