銀座木村家といえば「あんぱん」が有名だ。その昔、明治天皇にあんぱんを献上し、それにちなんで4月4日を「あんぱんの日」と記念日登録している。そんな木村家の本店が東京・銀座にあり、2階の喫茶にあまり知られていない美味しいメニューが存在する。

それは木村家のあんこを使った「あんこパイ」だ。銀座の一等地にありながら、驚くほど安いのにとても美味しい。魅惑のスイーツといっても過言ではないだろう。

・150年の歴史

木村家の「酒種あんぱん」の誕生は1874年にまでさかのぼる。その当時、パン作りに欠かせないイーストがなかったために、酒種酵母であんぱんを作ったことがその始まりなのだとか。誕生から来年で150年、いまだに看板商品のひとつとして人気を博している。


余談だが、16~17年前のこと、私(佐藤)はこの近くの高級フレンチで働いていたことがある。お店で使うパンがここのシャンピニオン(きのこ形のパン)だった。夕刻に取りに行くのが私の仕事のひとつで、ここに来る度にあの当時のことを思い出す。できればシャンピニオンを買って帰りたいと思ったが、当時特別注文の品だったのでショーケースに並んでいない。あのパンはもう食えないのか、残念……。


・この地で破格のランチ

話を戻そう。ここは1階がベーカリー、2階が喫茶、3階が洋食グリル、4階がフレンチビストロになっている。3階の自家製パン食べ放題をいつか利用したいと思いながら、いまだに利用したことがない。


さて、今回紹介するのは2階の喫茶だ。パン屋の喫茶店なのでパンを使ったメニューが充実している。たとえば週替わりのランチセット(平日限定30食)は、ポークパストラミと野菜のサンドイッチだ。


サンドイッチにサラダ・デザート・コーヒー or 紅茶がついて税込1100円。この場所は国内でも屈指の地価を誇る銀座の一等地である。そんな場所でランチがこの値段は破格といっていい。サラダ・デザート・コーヒー付きなら、これより高い店は銀座でなくてもいくらでもあるだろう。そう考えるとかなり良心的な値段設定だ。


期間限定メニューは「鰆西京焼きサンド」(税込1500円)である。さすが日本のベーカリーの先駆け、和の食材を上手くサンドイッチに取り入れている。


デザートメニューにも和の要素を積極的に取り込んでいる。あんぱんは言うまでもなく、「あんこパイ 生クリーム添え」(コーヒー or 紅茶付き税込1050円)も、和と洋の良いところを上手く融合していると言えるだろう。



・魅惑のあんこパイ

こちらがあんこパイとコーヒーのセットである。


皿に鎮座するキレイな三角形。茶色のパイに振りかけられたシュガーパウダーは粉雪のようだ。


パイの中には粒あんがギッシリと詰まっている。パイとパイの間の黒い物体は、見るからに重量感があるのだが……。


しかし、食べると重くない。パイ生地はサックリと軽く、粒あんは意外にもあっさりとした口当たり、甘さも控え目だ。少し大げさにたとえるなら最中(もなか)のような軽やかさがある。


生クリームを添えると、口当たりはよりマイルドに。あんこと生クリームの相性の良さを発見した人は天才だな。この2つの食い合わせは、今や日本のスイーツの鉄板。第一発見者は表彰されても良いレベルだと思うな、うん。


ちなみにあんこの中には求肥(ぎゅうひ)が隠れている。不意に出てくるモニョとした歯ざわりは小さなサプライズ。遊び心を感じる演出である。


銀座には数多くのお店があり、ハイブランドが立ち並んでいる。その中にあって、ここ木村家は安くて良いものを出すお店のひとつだ。フラリと入るのは気が引けるかもしれないけど、銀座を訪ねる際には、一度利用してみて頂きたい。美味しいあんこパイが待ってるぞ。


・今回訪問した店舗の情報

店名 銀座木村家 銀座本店
住所 東京都中央区銀座4-5-7
時間 10:00~20:00(2F喫茶L.O.19:00)
定休日 大晦日・元日

参考リンク:銀座木村家
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24