まったく良い時代になったものだ。いつ始まったとも知れない「レトロ喫茶」ブームのおかげで、昭和を象徴する喫茶店のプリンが気軽に食べられるようになった。「レトロプリン」というが、今のプリンの主流になっている。つまりレトロではなくなったとさえ言えるだろう。

つい最近もフラリと入った喫茶店で、実に美しいプリンにめぐり合うことができた。繰り返すが良い時代だ。美味いプリンがどこでも食える、それだけでも十分に良い時代になった証だ。

・レトロ喫茶ブーム

昭和レトロな喫茶店が流行り出したのは、2020年頃ではないかと思う。東京・中野の「不純喫茶ドープ」の誕生がブームを決定づけたと私(佐藤)は考えている。

令和の若者にとって「平成」でさえレトロとなる中で、昭和もまた彼らのエモ心をくすぐるらしい。実際、このお店はSNSで話題を呼び、たちまち注目を浴びた。以降、似たコンセプトのお店が増え、レトロ喫茶・純喫茶ブームが到来した。


ドープの成功は古くから営業を続ける喫茶店の再評価に貢献し、老舗チェーンにさえレトロの風を送り込んでいる。あの銀座ルノアールまでレトロプリンを販売するに至っている。老舗なのに2021年5月までプリンがなかったとは、逆に驚きだ。


今では大抵の喫茶店でレトロなプリンが食べられる。こうなると、もうレトロではない。いずれにしても、プリンを愛する私にとっては喜ばしいことである。レトロであろうがなかろうが、プリンはプリンなのだから


・おかわり自由

そんなある日、東京・練馬の東映アニメーションミュージアムを歩いていた時のことだ。


たまたま近くの喫茶店「ムサシノコーヒー」の看板が目に留まった。たしか姉妹店が田無にあったはず。行ったことはないのだが、ここにもお店があったのか。


入り口のメニュー看板を見ると、ホットコーヒー・アイスコーヒー・アイスティーが税別430円でおかわり自由! 今どき珍しい。おかわり半額でさえもありがたいのに、おかわりが自由だと!?


こりゃ、お邪魔するしかねえ。ってことでいざ入店。


・美しすぎるプリン

のちに調べたところ、お店は2022年12月22日にオープンしたようだ。私が訪ねたのが1月23日だからちょうど1カ月を迎えたことになる。

店内はカウンターもテーブルも椅子も全部真新しくてキレイだ。古き良き昭和を感じる喫茶店も良いけど、出来立てのお店も清々しくて良いもんだね。メニューを見ると、食事はパスタが中心。おつまみ系の食べ物もあるので、夕方以降は飲みの需要にも対応している。


そしてここにもプリン(税別450円)がある。レトロとは書かれていないけど、写真からレトロな雰囲気がうかがえる。


頂こうか、このお店の味を。いざ、プリン!


ホットコーヒー(税別430円)と一緒に注文すると、セットで200円引きになる。


ガラスの器にプリン、トップにホイップクリームとチェリー。お見事! 拍手喝采である。スタンディングオベーションで敬意を表したいくらいの正統派のプリンだ。


よく見て頂きたい。トップのカラメルソースが鏡のようになってホイップクリームが写り込んでいる。色・艶ともに完ぺきだ。


食べるのが惜しいほどの美しさ。このまま持ち帰りたいくらいだけど、そうはいかないので心を鬼にしてスプーンでひとすくい。改めてご覧あれ、カラメルソースが生地に浸透して、キレイなグラデーションを描いている


私の脳裏には幼少期に見た、鮮やかな夕焼けが蘇った。青空が次第に色を帯びて、真っ赤な太陽と交わる。このグラデーションは、自然の色彩に胸を打たれたあの日を呼び起すのである。


プリンの中は「す」がまったく立っていない。丁寧な裏ごしとしっかりとした温度管理によって、混じり気のない生地を作り上げている。どこをとっても素晴らしいプリンだ。味が良いことはいうまでもない。カラメルの苦味もちょうどいい。甘すぎず苦すぎない。


まったく良い時代だ。テレビを見ればろくでもないニュースが絶え間なく流れているけど、こうしてフラリと立ち寄ったお店で、450円で愉悦に浸れる素敵なプリンに出会えるのだから、良い時代なんだ。心の癒しはいつでも喫茶店にある


・今回訪問した店舗の情報

店名 ムサシノコーヒー 大泉学園店
住所 東京都練馬区東大泉2-7-26
時間 10:00~21:00
定休日 不定休

執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24